B 不良企業予備軍
(仕事2.5、生活2.7、対価3.2)
【一連托生勤続40年型】
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営業区域内で発生した東日本大震災の影響で、未だに常磐線の一部区域などで運転再開の目処が立っていないJR東日本。東北地方の観光需要低迷などもあり、運輸収入は上半期で前年度比550億円減(▲6.5%)となった。それでもボーナスは、夏2.6カ月、冬2.78カ月と微減にとどまった。昨年(2010年度)は夏2.7カ月、冬3.02カ月だった。(昨年度ボーナス資料・新人事制度資料等は、末尾よりPDFダウンロード可)
【Digest】
◇大震災でもボーナス安定
◇なんと55歳以上の賃金をアップ
◇「あいつはポテだから」
◇社員は乗車券が全部タダ
◇「安定してるから」はダメ
◇縦割り組織
◇エルダ―社員が天下り先に出向する
◇組合業務で休みを潰される
◇有休は全消化
◇駅はハードワーク
◇プロフェッショナル職は転勤なし
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2011年度下期ボーナスとその背景を伝える号外 |
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◇大震災でもボーナス安定
これほどの地震に見舞われても年5~6カ月分を安定的に支給できるのは、ひとえに地域独占の事業体だからである。今後も、よほどの大死亡事故が連発しない限り、東電問題で議論されているような送発電分離、つまり、EUで進められてきたような、線路などインフラ部門と列車運行部門の「上下分離」によって「上」への新規参入を促す市場開放・競争政策導入の議論には、発展しそうにない。
2012年度は復旧に伴う投資額も膨らみ、業績はさらに厳しくなる見通しだが、中長期的には競合他社がいないという決定的な強みによって、かなり安泰だ。公務員志向・安定志向が強まっている学生もそのあたりは分かるようで、2012年卒を対象としたマイナビの調査結果によれば(有効回答数は2万2408件)、「就職人気企業ランキング100(文系男子)」で堂々の1位となった。
◇なんと55歳以上の賃金をアップ
社員の目下の関心事は、2012年4月から導入される新しい「人事・賃金制度」である。そもそも昨年4月からの導入予定だったが、大震災によってまる1年、延期となっていたものだ。
その中身は、「飛び級試験」や「在級年数短縮制度(指定する4科目を修了すると1年短縮など)」の導入など、遅まきながら成果主義の体系が一部取り入れられる一方、55才以上の基本給を現行の80%から100%へと引き上げて生涯賃金をアップさせる(下図参照)、といった独占企業ならではの年功序列色を維持・強化した修正も含まれ、いわば“弱いムチとおいしいアメ”のセットになっている。
こうした好条件の変更にも、対するJR労組の反応は、といえば、歌舞伎のごとく決まりきったものだった。
「55歳以上にも定期昇給させよ」「入社後27年目まで自動昇格させよ」「65歳定年制を実現せよ」といった無理筋な組合案を作成して会社側に提案するという“伝統芸能”が披露された(下記参照)。
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組合案のポイント。高い組合費に応じた仕事をする必要性もある |
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とはいえこれは、制度変更に対する組合の脊髄反応にすぎず、実現するはずもないポーズであることは労使ともに分かっての演技といえる。
「人事・賃金制度の見直しで職場に過度な競争を持ち込めば、仲間同士がいがみ合い、信頼する仲間はライバルへと変わりチームワークとは程遠い職場が作られてしまいます」――これは、JR東労組が昨年9月に職場討議資料で述べている反対理由だ。(ダウンロード資料参照)
こうした、ライバルが職場にいること自体を悪と考える発想は、反成果主義陣営の常套句とされてきた。「アイツと競おう、というライバル意識がウチの現場には全然なくて、“ぬるま湯”なんです。これは国鉄時代からずっとつながってる意識でしょう.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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キャリアパスと報酬水準(プロフェッショナル採用) |
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プロフェッショナル採用中堅社員の給与明細(上)、夏ボーナス(中)、冬ボーナス(下) |
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中堅規模駅の現場組織 |
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