就活自殺遺族に聞く-2 父の後悔とアドバイス「私の失敗が佑介を死なせた」「休ませる心構え必要」
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就活自殺遺族、青木昭さん。09年7月、一人息子の佑介さんを失った。筆者撮影。 |
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今からほぼ3年前。関西学院大学4年生だった青木佑介さん(21)が関西アーバン銀行に内定辞退を伝えたのは、2009年6月15日のことだ。地元IT企業の内定はすでに辞退していたから、3つあった内定は、その時点で、入社を決めたインテリア小売大手「ニトリ」1つになった。
父・昭さんによれば、はじめての内定は5月26日、IT企業からだった。6月に入って銀行とニトリの内定を続けてゲット。数日間、悩んだ末とはいえ、最初の内定から3週間足らずでニトリに決めたのは、「辞退が遅くなると会社に迷惑をかけてしまう」と佑介さんが急いだ結果だった。
7月に入ってしばらくすると、佑介さんはニトリの内定を持ちながら就職活動を再開。数社の選考を受けていたさなかの7月23日夕方、自宅マンションのリビングで首を吊って自殺した。1週間前の7月16日夜、佑介さんはミクシーの日記に「なんであの内定蹴ってもーたんや」と書いていた。
今回は、前回の報告と同じ出来事について、父・昭さんが何を考え、どのような対応をしてきたのか報告する。
【前回報告】 就活自殺遺族に聞く-1 ニトリ、地元銀、IT企業…内定3つで「なぜ死ななければならないのか」 |
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自殺する数日前の佑介さん。自宅リビングで昭さん撮影。![]() |
◇「まさか死ぬとは思わなかった」
「いっぱいサインが出ていたのに、まさか死ぬとは思わなかった」というのが、昭さんが何度も口にした言葉だった。
就職活動で疲弊した佑介さんは、「しんどい」「死にたい」と何度も言っていた。言うだけにとどまらず、早朝、まだ寝ている昭さんのベッドに乗ってきて、「苦しくて眠れない、苦しくて死にたい」と言いながら「身体を抱いてちょうだい、頭を撫でてちょうだい」と甘えてきたことが2〜3回あったという。21歳の男子大学生が見せる甘え方ではない。
夕方、昭さんがイスに座ってテレビを見ていると、帰宅した佑介さんがイスの背もたれと昭さん間に割り込むように座ってきたことも数回あった。
自殺する1週間ほど前には首吊りの未遂があった。柱時計を掛けていた自宅リビングのフックが伸びていたのは、ヒモに体重を掛けたからだ。「本当に死ぬ気ではなく試しに死にかけた」のだと昭さんは思った。「フックが伸びたから未遂で済んだが、伸びていなければこのときに死んでいたと、あとで人から聞いて分かった」と言う。
「どうしたんだ、そんなことをしちゃダメだ、親より早く死んではダメだ」と佑介さんを諭すと、佑介さんは台所に行き、流しに置いてあった包丁を取って腹に突き立てる格好をした。「本気でやるつもりだったら本気だと受け取ったでしょう。だが真似事をしたと思った。それほど深刻に考えなかった」。
自殺当日の午後6時少し前、死亡推定時刻などからすると決行1時間以内のことと思われるが、「お父さんすぐ帰って来て」と佑介さんが泣き声で電話してきた。「できるだけ早く帰る」と返事をしたものの、「死ぬとは思っていなかったから、電話を切ってしまった」という。
このとき昭さんは、前年秋に脳梗塞で倒れた妻(佑介さんの母)の世話をするため病院にいた。「妻にご飯を食べさせたり歯を磨いたり、顔を拭いて化粧水を塗ってやったり言葉の練習をしたりして、それから電車で帰った」。夜8時過ぎに帰宅すると、佑介さんがTシャツに半ズボン姿で自殺していた。
「いっぱいサインが出ていたのに、まさか死ぬとは思わなかった。死んで初めて、ああ、そんなに苦しんでいたのか、早く気付いてやって、ゆっくり休ませてやればよかったと思った。振り返ると、私がものすごく追いつめていたなと思う」
インタビューのなかで昭さんは、自分の失敗を冷静かつ分析的に語ってくれた。サインがたくさん出ていても「まさか死ぬとは思わなかった」ということが実際にあり得るのだと、注意を呼びかける。
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佑介さんが就職活動中に使っていたカバン。筆者撮影。![]() |
◇決定的なミス 銀行の内定辞退「いいよ」と答えた
「あみだくじって引く時は結果が見えないですよね。当たり前ですけど。でも、誰が当たって誰が外れたかを見るときは、逆にたどって行きますよね。自死という結果から逆にたどっていくと、途中が全部、裏目裏目でつながっていて、どこかで裏目が切れていれば自死は免れていたと思う」
「裏目の選択かどうかは結果を見ないと分からない。自分が選択するんじゃなくて、外部の状況がその選択しか残さないということもありますよね、その結果として自死に至ることもありますよね」
では、あみだくじを開いたまま、佑介さんが辿ってきた線を見るとどうなっているか。スタート地点は6月14日、銀行に内定辞退を伝えるか伝えないかの選択だった。佑介さんに相談されて「伝えていいよ」と昭さんが答えたことが、最初の選択を誤らせてしまった
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佑介さんの遺品1。昭さん撮影。
佑介さんの遺品2。ドラえもんグッズを集めていた。昭さん撮影。
自殺後の佑介さん。昭さん撮影。
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これ、母親が具合悪くなってるんだな。父親も看病で余裕ないよなぁ。数年後の我が子のときにはどうなんだろうかと思うと、いたたまれない気持ちになる。
『苦しくて眠れない、苦しくて死にたい」と言いながら「身体を抱いてちょうだい、頭を撫でてちょうだい」と甘えてきたことが2〜3回あったという』
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読者コメント
超一流と言われる大学を出たが、最後まで内定が出ずに零細スーパーに行った同級生もいた。そんな話を冗談だと取り合わない親。彼らの常識は現代の非常識、耳を貸すな。自分を信じてやるしかないさ。うっかりアテにするから絶望するんだ。
親の責任では断じて無い。例え親子であっても肉体は別のものです。親であっても息子さんの心を何もかもわかり得るはずがない。ご自分を責める必要はありません。年間約3万人もの自殺者。ここに書き込みをされておられる方々もいつご自分が当事者やそのご遺族と同じ立場に立たないとも限らない世の中です。お父様の勇気に心から敬意を払います。お身体を大切に。
人間は神ではない。息子さんに良かれと思いされたことです。ご自分を責めてはいけません。息子さんは精神薬を飲んでいませんでしたか?これらには自殺を助長するような極めて重大な副作用があります。その副作用は一時問題となったタミフルと酷似しています。もしそうであったら精神医療被害連絡会に連絡してください。
>まさか死ぬとは思わなかった
要は、家庭内イジメと同じ。
息子が精神的苦痛を感じているのを理解してないのだから」
話がずれてしまったが、
求人を増やせばこういう問題がなくなるのだろうか?
それは違うと私は思う。求人が増えても、安倍や海江田万里が、こういう本元を理解していなければ、
結局就職失敗→自殺は、後数年は減らない。
では、どうすれば良いのか本筋から離れるが
今回の選挙、皆さんが一人一人考えて考えて、きちんと手元にある一票を有効に活用してください
加齢的な部分もあるし、なかなか現況を取り込めないのは仕方がないかもしれない。
派遣スタッフの仕組みだって、実際解ってる両親は多くないと思う。
#派遣会社に登録さえすれば仕事もらえると思ってる親がやたら多いし
話ずれるが、最近の派遣窓口さんは、「何件も派遣やられてるからおわかりですよね」と
説明省いてくれたりする。凄いありがたかったりする。
どこの家もそうなのかもしれないけど、
金の卵といわれた団塊世代な親たち VS 氷河期・超氷河期・超々氷河期な子供たち
#変な言い方をすれば、
#売り手市場だった団塊世代 対 とてつもなく買い手市場な30代以下
という構図が見て取れる放送だったので、私はこの放送は興味があった。
うちの両親(特に父親)は、全く関心なさげだったが
>自分のことでいっぱいいっぱいだった
これは、私の母親も同じ事をいってたなぁ。
まあ、私はこんなんで死んでたまるかと思ってるので、自殺はしないけどね。
自殺するくらいなら小中高の虐めで自殺してる・・・
最も中高のイジメは母親知らないけどね。
#中学校で担任の先生と掛け合ってなくなったろって会話じゃない会話してたな。
>まさか死ぬとは思わなかった。
これが親の本音。神髄。本気で子のことを理解しようとはしていない。
テレビ上は、良い親を演じてるけど、中に入ったら解らないのがこういうタイプ。
>自分が佑介を死なせた
厳しい言い方をすれば、
その通り。あなたが祐介さんを死なせたの。
それを意識して残り少ない余命を生きて欲しいね。
結局、自分たちのプライドが邪魔して何も出来てないのだから
本当にお気の毒で、ご両親にかける言葉が見つかりません。苦しくて苦しくて死んだ方がましだと思いつめて亡くなったご本人や、今とても辛い思いをされているご家族を無神経に批判する人の気持ちがわかりません。
お父様はご自分をあまり責めないでいただきたいです。人間誰しも万能でなく、予見できることとできないことがあるのですから。
こういう状況でも「打たれ弱い」とあっさり言ってのける日本の世間がすごい遅れっぷりだね。まあ足の引っ張り合いが日常だろうから仕方ないか。アメリカとかのほうがNo.1になるためなら仕事での連帯にこだわらない雰囲気があるし、就活もけっこう一本釣りで決まるし、この方は「日本型就職」の1犠牲者と断言できる。
彼らを批判するのは簡単。この事件からそれぞれがどうすればよかったかを考えることが大切。
息子さんを亡くされて本当に苦しい思いをされているのですね。もう、お父さんには、自分を責めないで欲しいと思います。お父さんが死なせたと考えているのは思い違いかもしれません。もしかしたら、就活とは別のところに自殺の原因があったのかもしれません。もう自分を責めないでください。亡くなった息子さんのためにも。
なにをそんなに追い詰められていたのか本人しか知る由もないですが、どんなに苦しくても自殺してはいけない、生きなければならない理由を教える人がいたらと思う。まーそういう役目は新興宗教くらいなものですが。。打たれ強くなれない資質の人は別の道を模索するべき。
むごい言い方ですが、根源は過保護・過干渉の子育てにあったかもしれませんね。内定辞退の判断を親に求めるのはおかしいし、いいよ、と言ったのを後悔しているお父さんの感覚もズレれてますね。要するに、息子さんは心理的に自立できていなかったのだから入社しても持たなかったでしょう。
ご冥福をお祈ります。ただ仮に関西アーバン銀行に入っていたとしてもなと思う。なぜなら銀行や信金の営業は厳しく、かなりキツイ労働環境であるので何か虚しい。社会人になればある
程度実感できるのだが、就活程度で自殺しないで欲しい。仕事上ではもっと辛い時もあるのだから。打たれ強くなれと皆には言いたい。
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