開示された「自殺統計原票」集計用データの1枚。職業や原因などがスミ塗りされている。
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昨年秋から報道が始まった大学生の「就活自殺」。2007年に13人だったが昨年には41人に増加、最近では昨年の20歳から29歳の就活自殺が141人だったことも話題になった。より詳しく分析するため、警察庁に自殺統計原票データの開示を請求したところ、分かったのは集計の方法までで、「独自規定」をタテに、分析に必要な情報の開示は全て拒否。データは民間に提供されず、国民は自殺対策のために自由な分析ができない状態にあることが分かった。就活自殺の多様な分析報道がなく、対策も提言も出てこないのはそのためだ。国民は、政府がやりたい分析とその結果しか知ることができず、これは情報公開法の趣旨にも反する警察の暴走といえる。就活自殺を促進したいともとれる、警察庁の独自規定を使った嫌がらせ開示の実態を報告する。(開示文書はPDFダウンロード可)
【Digest】
◇職業も原因もスミ塗り 個人特定のおそれ理由に
◇09年「小学生x女x1」を自ら公表 警察庁
◇大量データも「紙で出す」 不開示部分あれば
◇同じ内容でも料金20倍 紙で出されると
◇自由な分析ができない
昨年秋から報道が始まった大学生の「就活自殺」。2007年に13人だったものが、08年22人、09年23人、10年46人、11年41人と推移し、11年については20歳から29歳で141人だったことも話題になった。この自殺者数は、警察庁が毎年まとめている「自殺の概要資料」にある「大学生x就職失敗」という職業と原因のクロス集計の結果だ。「就活自殺」として報道されるときはこの人数が使われいる。
「就職失敗」を原因とする自殺者数の推移
暦年 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 |
大学生 | 13 | 22 | 23 | 46 | 41 |
20-29歳 | 60 | 86 | 122 | 153 | 141 |
自殺原因の分類の仕方は警察庁の「自殺統計原票」と呼ばれる文書に出ている。この文書には53種類の原因があらかじめ記載されており、警察は遺書など原因や動機を裏付ける資料をもとに、自殺者1人につき3個まで原因をつけることができる。「就職失敗」というのも53種類のなかの1つ。
ポイントは自殺者1人につき3つまで原因をつけられる点だ。
大学生の自殺原因のうち、「その他進路に関する悩み」という原因は「就職失敗」よりも多く、07年53件、08年58件、09年60件、10年73件、11年83件と推移している。「就職失敗」の2倍ほどある。
大学生の特定原因による自殺者数の推移
暦年 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 |
就職失敗 | 13 | 22 | 23 | 46 | 41 |
進路悩み | 53 | 58 | 60 | 73 | 83 |
「進路悩み」は「その他進路に関する悩み」のこと。 |
では、大学生が自殺するほどの「その他進路に関する悩み」とはどんな悩みなのか。就職活動関係が多いのではないかと思うが、警察庁は「わからない」という。
そうすると、自殺者1人につき3つまで原因をつけられるのだから、「就職失敗」と「その他進路に関する悩み」の両方が付いているケースがどれだけあるかによって、就職活動に関係した自殺者数の見方も変わってくる。
「就職失敗」と「その他進路に関する悩み」の重なりが多ければ、就活自殺者数は「就職失敗」に近いことになるが、重なり具合が小さければ、「就職失敗」に「その他進路に関する悩み」の人数が加わることになる。
この重なり具合を検証するため、警察庁に「自殺統計原票」を開示請求した。
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自殺統計原票のひな形。53種類の原因から3つを選択できる。 |
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◇職業も原因もスミ塗り 個人特定のおそれ理由に
請求したのは、警察が作成した「自殺統計原票」を統計処理のために打ち込んだ集計用データ(07年から11年の5年分)のほか、集計用データの取扱いや外部提供に関する規定、「自殺統計原票」の様式や記入方法に関する文書。
もっとも重要なのは、集計用データのうち、職業x原因のクロス集計に使われた部分だ。ともにコードを入力する方式で、データには、大学生は職業コードが64、就活失敗は原因コード34、その他進路に関する悩みは72という数字が入っている.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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「自殺統計原票」集計用データの開示決定通知書。 |
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「平成21年中における自殺の概要資料」には小学生の自殺「1」が公表されている。 |
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国交省が開示した「鉄道事故等整理表」の一部。不開示箇所は●で置き換えられ、エクセルデータで開示された。 |
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開示に必要な手数料。5年分を1枚にまとめた。各年1枚はすでに開示されているため、各年に1枚(10円)を加えた枚数が実際の枚数になる。 |
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