警察庁が就活自殺の分析を妨害、集計データ開示で嫌がらせ 「自殺統計原票」の情報公開請求
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開示された「自殺統計原票」集計用データの1枚。職業や原因などがスミ塗りされている。 |
昨年秋から報道が始まった大学生の「就活自殺」。2007年に13人だったものが、08年22人、09年23人、10年46人、11年41人と推移し、11年については20歳から29歳で141人だったことも話題になった。この自殺者数は、警察庁が毎年まとめている「自殺の概要資料」にある「大学生x就職失敗」という職業と原因のクロス集計の結果だ。「就活自殺」として報道されるときはこの人数が使われいる。
暦年 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 |
大学生 | 13 | 22 | 23 | 46 | 41 |
20-29歳 | 60 | 86 | 122 | 153 | 141 |
自殺原因の分類の仕方は警察庁の「自殺統計原票」と呼ばれる文書に出ている。この文書には53種類の原因があらかじめ記載されており、警察は遺書など原因や動機を裏付ける資料をもとに、自殺者1人につき3個まで原因をつけることができる。「就職失敗」というのも53種類のなかの1つ。
ポイントは自殺者1人につき3つまで原因をつけられる点だ。
大学生の自殺原因のうち、「その他進路に関する悩み」という原因は「就職失敗」よりも多く、07年53件、08年58件、09年60件、10年73件、11年83件と推移している。「就職失敗」の2倍ほどある。
暦年 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 |
就職失敗 | 13 | 22 | 23 | 46 | 41 |
進路悩み | 53 | 58 | 60 | 73 | 83 |
「進路悩み」は「その他進路に関する悩み」のこと。 |
では、大学生が自殺するほどの「その他進路に関する悩み」とはどんな悩みなのか。就職活動関係が多いのではないかと思うが、警察庁は「わからない」という。
そうすると、自殺者1人につき3つまで原因をつけられるのだから、「就職失敗」と「その他進路に関する悩み」の両方が付いているケースがどれだけあるかによって、就職活動に関係した自殺者数の見方も変わってくる。
「就職失敗」と「その他進路に関する悩み」の重なりが多ければ、就活自殺者数は「就職失敗」に近いことになるが、重なり具合が小さければ、「就職失敗」に「その他進路に関する悩み」の人数が加わることになる。
この重なり具合を検証するため、警察庁に「自殺統計原票」を開示請求した。
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自殺統計原票のひな形。53種類の原因から3つを選択できる。![]() |
◇職業も原因もスミ塗り 個人特定のおそれ理由に 請求したのは、警察が作成した「自殺統計原票」を統計処理のために打ち込んだ集計用データ(07年から11年の5年分)のほか、集計用データの取扱いや外部提供に関する規定、「自殺統計原票」の様式や記入方法に関する文書。
もっとも重要なのは、集計用データのうち、職業x原因のクロス集計に使われた部分だ。ともにコードを入力する方式で、データには、大学生は職業コードが64、就活失敗は原因コード34、その他進路に関する悩みは72という数字が入っている
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「自殺統計原票」集計用データの開示決定通知書。
「平成21年中における自殺の概要資料」には小学生の自殺「1」が公表されている。
国交省が開示した「鉄道事故等整理表」の一部。不開示箇所は●で置き換えられ、エクセルデータで開示された。
開示に必要な手数料。5年分を1枚にまとめた。各年1枚はすでに開示されているため、各年に1枚(10円)を加えた枚数が実際の枚数になる。
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>「自殺統計原票」を統計処理のために打ち込んだ集計用データ(07年から11年の5年分)のほか、集計用データの取扱いや外部提供に関する規定、「自殺統計原票」の様式や記入方法に関する文書
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読者コメント
若者の自殺を軽く見ているわけではありませんが、普通の就活と比べると有利だと言いたい。
それに自殺者全体から言えば、
平成26年度の自殺の状況(警察庁)では
20歳〜29歳2684人全体の10.6%
40・50・60代はそれぞれ全体の16.7%・16.4%・17.0%ですから。
家庭や健康問題等、若者の比ではない悩みやトラブルが増え、それに伴い自殺も増えてますよ。
全体の自殺者を見れば40代以降が多い筈ですよ。
新幹線焼身自殺も年金額が低いとの不満ですが、それより低い人が多いですね。
私が就職活動をしていても29歳以下、下手をしたら25歳以下という求人が目につき、私等は年齢で足切りされてますけどね。
新卒窓口があったり、若者応援企業等もできて、普通よりは優遇されてるのですが、経歴の問題なのかもしれないですね。
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