フジ産経株主総会で「原発報道できるのか!」 原発データ隠しで辞任の南直哉・東電元社長が監査役留任で
参加株主による動画や静止画の撮影、録音も禁じられたフジ・メディア・ホールディングスの株主総会 |
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- 質問する株主のマイク電源を切断
- 総会前から抗議活動
- 裁判進行中なのに「労使紛争は解決済み」と虚偽答弁
- 「泥棒に警察官をやらせていいのか」
- 質問中にマイクの電源を切断
- フジサンケイグループが「第20回地球環境大賞」で東電にグランプリ授与
質問する株主のマイク電源を切断
株主「原発データ隠しで東電を辞めた南(直哉)元社長が、いまだに当社の監査役を続けている。まず、南さんに辞めていただく必要があります。(中略)泥棒に警察官をやらせるようなものだ・・・・・・」議長「時間です。簡潔に述べてください」
株主「南さん、あなたが尊敬しているであろう平岩外四(東電元社長で経団連元会長)さんだったら、この恥辱の場にはいないはず」
議長「趣旨がわかりません。打ち切ります」
株主「打ち切るな!」
議長「打ち切ります」
打ち切るな・・突然、マイクの電源が切られ、質問中の株主が叫ぶ。
――聞け!!
だが、広大な会場の半分から後ろには、マイクが切られているためその叫びもほとんど聞こえない。会場は一瞬騒然となったが、質問者のマイクは切られたまま、他の株主にマイクが渡され、たんたんと予定通りの議事が進められた。
質問した株主は、マスコミ界一の御用組合・産経労組に対抗し反リストラ産経労を結成して1994年に解雇された松沢弘委員長。答える議長は、フジ・メディア・ホールディングス(フジ・メディアHD)の日枝久会長である。
例年どおり同社の株主総会は、異議もなく形式的に短時間で行う“しゃんしゃん大会”であるが、真っ当な質問をするごく一部の株主がおり、松沢氏がその中心だ。したがって、松沢氏が出す質問ではじめてフジサンケイ・グル―プが抱える問題点が見えてくるのだ。
※松沢弘氏の事前質問状全文(計20頁)は末尾よりPDFダウンロード可
フジ・メディアHDは、フジテレビやニッポン放送を始め、実質的子会社の産経新聞(40%の株をフジ・メディアHDが所有)を擁するメディアコングロマリットである。
この株主総会が見逃せないのは、フジテレビ・産経新聞グループによる不当労働行為という、メディア界にとって重要な労働争議を抱えているからである。
1994年、産経新聞社系列の日本工業新聞(現紙名=フジサンケイ・ビジネスアイ)内に真っ当な労働組合を結成したために松沢弘委員長が解雇された。それに絡んで反リストラ産経労は東京都労働委員会に不当労働行為を訴えたが棄却された。
そのため中央労働員会に再審査申し立てをしたが、同委員会は棄却する命令を交付した。その中央労働委員会の命令取消を求め東京地裁に提訴した行政訴訟(被告=国)が進行中であり、株主総会2週間前の6月14日には松沢委員長が最後の意見陳述をして結審。10月25日の判決を待つ状態になっている。
松沢氏は株主として毎年、総会に参加し、さまざまな質問や要求をしているのだ。
■フジTV産経新聞と17年闘う 松沢弘元論説委員が語る産経残酷物語(前) (後)
株主総会前に必ず現れるフジサンケイ・ロボット。 |
総会前から抗議活動
当日朝9時から、松沢弘委員長を始め、反リストラ産経労のメンバーや支援者、弁護団など約30名が駆けつけ、株主総会会場と台場駅(新交通ゆりかごめ)を結ぶ通路でアピール活動を始めた。
駅を降りて次からつぎへの会場のホテル「グランパシフィック・ル・ダイバ」へ向かう株主らに対して、フジテレビ・産経グル―プの不当労働行為を訴えるビラを配った。
マイクをとった松沢氏は、会場に向かう株主たちに、株主総会で追及する2点を訴えた。
「みなさん、本日行われるフジ・メディアHD株主総会の焦点は二つです。一つは、我々反リストラ産経労に対する不当労働行為に対して見解を求めること。もう一つは、原発のデータ改竄や隠蔽で辞めさせられた東電元社長の南直哉さんが、フジ・メディアHDの監査役に居座っていることです。これで、どうやって原発事故の報道をするんでしょうか」
1時間ほどのアピール行動を終えると、松沢氏は株主として総会に出席するため会場のホテルに向かった。
千人以上収容の会場はほぼ満席で、松沢氏はかなり前方の中央に席をとった。ひな壇中央には、日枝久会長が陣取り、役員がずらりと並ぶ。
ここに紹介する一連の動画は、松沢氏の少し後ろから撮影したもので、会場の後方から撮影しているように見えるが、縦長で広い会場の6分の1くらい前に位置しており、画面の背後には6分の5くらいの株主が着席している。
型どおりに、当期の報告事項がすぐに終わり、次いで決議事項が説明される。
第1号議案 余剰金の処分の件第2号議案 取締役15名選任の件
第3号議案 役員賞与支給の件
裁判進行中なのに「労使紛争は解決済み」と虚偽答弁
この後、事前に送付された株主からの質問書に役員が答え、その後に会場からの質問を受け、最後に議案を一括採決したい旨を日枝議長が提案した。
「個別議案ごとに、会場での採決をとれ!」
と会場から声があがる。
つまり、株主総会を開きましたよ、という形式を示すのに一番都合のいいのが議案をすべてまとめて拍手採決するやり方だ。会場前に陣取った社員株主らが拍手して終わる・・。これを毎年繰り返しているのだ。
太田英昭専務が、事前に寄せられた株主からの質問に答えのだが、反リストラ産経労の松沢弘委員長からのものと思われる質問に言及した。
「株主さんが18年前、当社の関連会社・産経新聞社子会社の日本工業新聞社を解雇され、当社にその労使紛争の解決を求めている件については、長年にわたって事前質問を頂戴し、当社もその都度回答してまいりました。
しかしながらすでに、日本工業新聞社に責任がない旨の司法判断が確定しております。(違う、東京高裁で係争中だぞ。虚偽答弁だ!! と会場からの声)。また、本総会の決議事項・報告事項に一切関係なく、また株主様共通の利益になるものとも考えられません。
さらにご質問の内容は、ほかの株主様に関係ない内容であり、こうした質疑が繰り返されることは、わざわざ会場に足を運んでくださる株主様のご迷惑となる可能性もあります。株主総会は個人的な問題を話し合う場ではありません」
(労働組合は個人じゃないぞ!!)
会場の前の席に陣取った社員株主と思われる人びとの拍手。会場にいる何人かの株主が撮影すると、「スタッフ」というプレートをつけたダークスーツの人間が何人も「カメラ・ビデオ等 撮影はお断りします」とプラカードを掲げ、左右から「撮影をおやめください」と言い続け妨害する。
株主は撮影も録音も禁じられたが、会社側は参加株主を撮影し放題 |
会場に設置された大型カメラでは、松沢弘氏を始め株主を会社が自由に撮影でき、株主だけが撮影も録音も禁じられている状態だ。裁判所並みである。
参加している株主が直接質問できる時間になり、合計15人の株主が質問にたったが、反リストラ産経労によれば、大半が社員株主だという。つまり、関係者がありきたりの質問をしてマイクを独占し、一般株主の質問を封じていることになる。
15人のうち、経営陣に批判的で厳しい質問をしたのは2人だけで、そのうちの1人は松沢弘氏だった。
「泥棒に警察官をやらせていいのか」
「みなさん、一年ぶりです。株主の松沢です。日枝(議長)さん、やはり南(直哉)監査役には辞めていただく必要があります。南さんは、柏崎刈羽(等)の原発データ隠しで、荒木浩会長とともに東電を引責辞任した事実があります。
昨年の総会で太田専務は、引責辞任した事実を含めて南さんを高く評価しておられるとおっしゃいました。去年も私は泥棒が警察をできるのか、と申し上げましたが、泥棒どころじゃないですね。
福島原発の事故を見れば、まさにWar criminal=戦争犯罪に匹敵し、狭い日本の国土を削り、国民の健康を将来にわたって損ねている。その(東京電力をデータ改竄と隠蔽で辞めた)南さんが、公共放送の使命をおびているフジテレビジョンとその親会社であるフジ・メディア・HDの監査役なんて、できるわけないでしょう」
福島第一原子力発電所、福島第二原子力発電所、柏崎刈羽原子力発電所の原子炉計13基地において、1980年代後半から1990年代にかけて行われた自主点検記録に、部品のひび割れを隠すなどの改竄が29件あった。2002年に明るみに出、当時の南直哉社長や幹部が引責辞任した事件。
「南さんが監査約にいることで、フジテレビの報道の現場も、その委託を受けている会社も、報道の現場にいる人たちはみな萎縮しますよ。
日枝(久・フジ・メディア・HD会長)さん、豊田(皓=こう・同社長)さん、NHKの数土文夫経営委員長の件を思い出してください。数土さんは東京電力の社外取締役とNHK経営委員長の二股をかけようとした。
NHK会長からも事実上の三行半を突き付けられて、そして東電の社外取締役を選んだんですね。その理由は簡単で、数土さんは、大手鉄鋼業界のトップ。東京電力、その他の8電力会社のような巨大なユーザーにいたほうが出身母体の鉄鋼業界のためにもなると、NHK経営委員を辞めたんですね。
南さん、数土さんにならってフジ・メディアHDの監査役を辞めなさい。それからフジテレビジョンの監査役も辞めなさい。テレビ東京ホールディングスそしてテレビ東京の監査役になっている東京電力元会長の荒木浩さん、わたしよく存じ上げていますが、現役記者の頃。
今回、荒木さんはテレビ東京の監査役を辞めましたね。たぶんこれは、総務省の免許事業がテレビ東京そのものにかかわっているからですね。フジ・メディアHDもテレビ東京メディア・HDも“認可事業”で(テレビ東京の)“免許事業”はもっと強い。
南さんは、フジ・メディアHDの監査役を辞めなければならないし、まずもってフジテレビジョンの監査役を辞めなければなりません。
南さん、長年(東電の)社長やって蓄財したでしょう」
日枝議長「簡潔にお願いします。簡潔にお願いします」
原発データ改竄問題で東京電力を引責辞任し、フジ・メディアHDとフジテレビジョンの監査役に留任した南直哉氏。 |
松沢「はい。もうすぐ終わります。私の取材によれば、あなたの息子さんは日本航空のパイロットだそうですね。経営者然として労働組合と敵対しているそうですが、あの親父にしてこの子パイロットあり、と日本航空の中で総スカンを食っている。
息子さんがパイロットなら生活に困らないでしょう、南さん。東京電力からこれまでにもらったお金を考えても。南さんがいることによって、フジ・メディアHDとフジテレビの東電批判報道は萎縮しているんですよ。
萎縮していないとしても、萎縮していると見られて、それがですね…」
質問中にマイクの電源を切断
日枝「簡潔にお願いします」
松沢「はい、わかりました」日枝「あと1分で打ち切ります」
松沢「はい、わかりました。打ち切らないでください」
日枝「打ち切ります!」
松沢「打ち切るな!」
日枝「打ち切ります!」松沢「打ち切るな! それが私たち株主の利害に直結するんです。あなた(南監査役)がいるおかげで、フジ・メディアHDとフジテレビの視聴率が落ちてるんですよ
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2度にわたる議長解任動議を出された日枝久議長
今年のお土産は、折り畳み式傘、飴玉2種、フジテレビ展望台チケット。
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読者コメント
このたびの毎日新聞販売店の減数には、新聞社販売局として
決して世に出せない事件ですよ。
フジテレビの株主総会は、こんなに怖いんだ!日枝久会長は、とても報道人とは思えない。こんな日枝氏が24年も独裁者として支配しているフジテレビは、もう見ない!
ううむ、インサイダー情報だとか、その辺の決まりを明確にするためにも、
「株主総会における撮影録音の禁止」は「禁止」、
つまり、いかなる撮影や録音行為も咎めてはならないって法律を、
ぜひ国会議員には作って欲しいですね。
記者からの追加情報
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