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40代早期退職の技術者が語る「内側から見たルネサス」 独自開発なし、リストラ先送り、逃げ切り図る経営者…

情報提供
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「独自開発に投資せずリストラ先送りしてきたツケ、敗北は必然です」
 グローバル競争に敗れ、わずか4年で売上を半分近くにまで激減させたルネサスエレクトロニクス。先月(2012年10月)末に会社を去った“希望退職者”は7446人にも上り、会社側が当初募集した約5千人に対し1.5倍となる大人気ぶり。国内で過去最大規模の希望退職実施企業となった。今後3年かけて約10の工場を売却・閉鎖予定と厳しいリストラが続く見込みで、産業革新機構の出資を受ける可能性が高まっている。このたびの希望退職に応募し、外資企業に転職した40代半導体技術者に、現場から見たルネサス凋落の原因を分析してもらった。
Digest
  • 遂に冬ボーゼロに
  • 「もう明日から有休を消化して来ない、辞めてやる」
  • 合併したのにリストラを先送り
  • 「開発投資をサボってコピーばかり」のツケ
  • カネがないから、言葉ばかり
  • 職人技の伝承が途絶えた
  • 「のどか」な社員たち

遂に冬ボーゼロに

ルネサスの今年(2012年)の冬ボーナスは、ついに実質ゼロが決まりました。ところが、「ボーナスは生活給の一部」という前提で安定支給されてきたためか、本当にキャッシュがゼロになってしまうと、ローンを組んでいる人などが生活に困って苦しすぎるという事情をかんがみて、来夏に支給見通しのボーナスから1カ月分を前倒しで払う、ということになりました。

まだ来夏のボーナスを出せるかもわからないのですが、少なくとも私はそういう説明を受けています。もう辞めて転職した身としては関係ないのですが、いかにも日本企業らしいところだと思います。(注:ルネサスは日立、三菱、NECの半導体事業部門が母体となって設立された、電機連合系労組の寄せ集め企業)

今回の希望退職は、当初5千人ほどを募集し、正式な募集期間は2012年9月18日~9月26日で、10月末が退職日と設定されていました。ところが、応募者が1.5倍(7511人)に膨れ上がったため、募集を開始した9月18日の夕方に、急きょ、イントラ上に「明日で締切ります」といったお知らせが流され、実際に2日目で募集が締め切られました。

夏前から対象者全員と面談して追い込んでいったことに加え、行く末を案じた社員が、会社側の予想を越えて、大量に会社を見切ったのだと思います。内部から見て、7511人もの人が見切るほど、ヤバい状況ということでしょう。

応募者が増えて当座の現金が足りなくなったことから、退職金・年金の支払いが、分割払いになってしまいました。最後の支払いは1年も先です(2013年9月が最終)。会社側の見通しのいい加減さに、応募者としても、非常に迷惑しています。

会社が見通しを誤った結果、65人が、応募を辞退せざるをえなくなりました。だから、最終的には7446人です。メディアでは「応募者が目標に達しなければ次は整理解雇もあると脅されたが、目標数を上回って解雇が回避されたため」などという会社側の説明が流されていますが、実態としては「生活設計が狂ったから」という人のほうが多いです。

まとまった割増退職金を元手に、ローンを返し終えて新しく事業を始めよう、などと計画して希望退職に応募したところ、突然、分割払いにされたことで、人生設計を狂わされてしまい、応募をキャンセルせざるを得なくなったということです。

分割払いの話など募集時には聞いていませんから、限りなく違法行為に近い後出しじゃんけんですし、後払いにするなら利息をつけるべきですが、それもありません。早期退職者は次の仕事を探すので精いっぱいで裁判をやるエネルギーもない。残っても居ずらい。ひどい話なんです。

「もう明日から有休を消化して来ない、辞めてやる」

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年齢だけで一律で決められた「特別退職一時金」。※早期退職優遇制度の全25頁は末尾よりPDFダウンロード可

早期退職対象者の条件は、総合職35歳以上、地元採用の専任職は30歳以上で、勤続5年以上。対象者全員が、個別の面談によって、プログラムの説明を受けました。

システムLSI事業のような大赤字の部門は、部長の1日がその面談だけで埋まっていたようです。縮小して継続予定の滋賀工場(滋賀県大津市、ルネサス関西セミコンダクタ)でも「1千人斬れ」とノルマが出て、もう残ったとしても仕事はないぞ、と脅すようなかんじで退職に追い込まれていました。

前倒しで「応募させるための面談」が延々と続けられたんです。ひどい扱いを受けたのは、生産ラインを担当していた人たち。8月下旬~9月上旬にかけて、とにかく応募しろ、辞めろ、もう仕事はない、といった半強制的な退職誘導面談が行われ、彼らはひどくプライドを傷つけられていました。

それで、「もう明日から有休を消化して来ない、辞めてやる」と、面接の翌日から来なかった人が続出したほどです。うちの事業所では、生産ラインの人たちのうち6割は辞めています。その結果、ロットの進行が大幅に遅延したり、一時的に不良率が上がるなど、9月~10月は、生産ラインが崩壊寸前までなりました。

私自身は、この8月から部長と1:1の面談を何度か繰り返し、早期退職申請書に署名・捺印しました。退職日は10月31日で、10月いっぱいが引き継ぎ期間となりました。

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会社から示された個人別の「退職金・年金試算表」

早期退職は、回数を重ねるほど条件が悪くなるものですが、今回の条件(上記書類参照)は、やはり前回よりも、1割ほど割り増し率が低くなっています。

実際の金額は、「個人別退職金・年金試算表」という数字が入った書類を渡されたのですが、右記のとおりです

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再就職支援サービス申請書

ルネサスが手掛ける製品群(同社ウェブページより)

主任技師(管理職クラス)の源泉徴収票2011年分。赤字が続くなかでも、ボーナスはしっかり年4か月分が出続けたため、年収ベースでは十分に高い水準

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cloudliner_tweets2012/12/28 02:08

開発者が現場で何をやっているのかというと、代理店経由で競合製品を入手して、解体調査を行い、「TIはこんなことやってるのか」とか、フェアチャイルドは、STマイクロは…と、開発部や設計部が見て、マネをする

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