渋谷センター街飲食店の24歳「名ばかり店長」が過労自殺 月200時間残業でもパワハラ上司が休み与えず
成人式ごろの和孝さん |
「売上げのいい誰々店長は今月1日も休んでいませんよ。あなたは何日休んだの」。毎月1回の店長会議で、株式会社サン・チャレンジの上田英貴社長は、店長が休むことを非難するかのような発言を繰り返していた。
同じ会社に親子で勤め、長男を亡くした政幸さん(58)は、同社が首都圏で展開する飲食チェーン「ステーキのくいしんぼ」の店長として、その発言を聞いていた。前年比の売上げが低下し続けていた店長に対して、「業務への取り組み方が悪い。それはあなたの人格が悪いからだ」と批判する発言もあったという。
政幸さんは、後悔をまじえて次のように話す。
「会社自体に長時間労働で過労死するという認識がなかった。意思があればいくらでも働ける、という社風でした。私も3カ月休みなく働いたこともありますから。仕事のし過ぎで自殺するなんてことがあるのかなと、そうなるまでは知らなかったし、興味もなかった」
「24歳じゃ体力があれば働けますよね。それも剣道で鍛えたということがあった。今回こういうことになって初めて、過労死の家族会に行って話を聞いたりして、長時間労働で自殺しちゃうんだなとか、働きすぎると人間は死ぬんだな、ということがわかった」
死亡したのは、渋谷駅にほど近い「ステーキのくいしんぼ」渋谷センター街店の店長、和孝さん。当時24歳だった、政幸さんの長男だ。連続勤務90日目の2010年11月8日午前1時ごろ、店舗が入るビルの非常階段の踊り場で、首吊り自殺した。
上司のエリアマネージャー(20代)が意図的に休みを与えず、月200時間の長時間労働と暴力を日常的に受けていたことによる過労自殺だった。
◇「ソースがないから買って来い」と上司、休みのデート中に
和孝さんは、剣道で特待生入学した高校を05年3月に卒業すると、東京・銀座にある高級レストランに入社。しかし、長時間労働や希望する調理の仕事になかなか就けなかったことから2年で退社した。
そのころ、政幸さんが店長をしていた「くいしんぼ」入谷店ではアルバイトが不足していた。和孝さんが「調理の仕事がしたい」と話していたこともあり、「だったら自分のところで働いてみないか」と声を掛けた。これがきっかけとなり、和孝さんは07年5月から入谷店でアルバイトとして働き始めた。
息子だからといって特別扱いはしていなかったが、しばらくすると、上田社長から「親子で働いていると甘やかすことになる。正社員にして別々に働くべきだ」と声がかかった。「(和孝さんのことは)私に任せなさい」とのことだった。
アルバイトをはじめて3カ月後の07年8月、会社は和孝さんを正社員として採用し、高円寺北口店に異動させた。
和孝さんがナンバー2として渋谷センター街店に配属されたのは、半年後の翌08年2月ごろ。このとき同店を仕切っていたのが、和孝さんより1歳年上の梅原=仮名=という店長代理(後に店長、エリアマネージャーと昇格)だった。
和孝さんと仲の良かったアルバイトの証言によると、和孝さんは配属当初こそ週1日程度は休めており、金曜日の仕事が終わるといっしょにラーメンを食べにいったりする時間はあったようだ。8月ごろからは同店のアルバイト女性との交際も始まった。
だが、やがて休みは月に1度取れるかどうかという程度になり、その休みのときも、「ソースがないから買って来い」というような用事で梅原氏に呼び出されることがたびたびだった。
たとえば、交際がスタートして間もない9月5日。和孝さんが休めることになり、彼女といっしょに横浜の遊園地「コスモワールド」に遊びに出かけた。観覧車とジェットコースターの券を買ってこれから乗ろうというとき、梅原氏から「ソースが足りないから買って来い」と和孝さんに電話があった。
「いま横浜です」と伝えても梅原氏は引き下がらず、「すぐに帰って買って来い」と命令。和孝さんは観覧車に乗らずに渋谷に戻り、彼女が「誰でもすぐに買える」というソースをスーパーで買って店に届け、そのまま3時間ほど勤務したという。
その彼女は、遺族が会社や梅原氏らを訴えた損害賠償請求の裁判で、和孝さんの休みについて、「丸々1日を休むことは殆どありませんでした」「ひどい時は、3か月に1回しか休みがありませんでした」と述べている。
(上)「ステーキのくいしんぼ」渋谷センター街店が入るビル。渋谷駅からセンター街に入ってすぐ右側にある(下)店内の様子。 |
◇「なぜ休日を与えないのか」心配する執行役員も
当時、和孝さんの住所は埼玉県内の実家だったが、センター街店の閉店時間が夜11時と遅く通勤にも時間がかかっていたため、店舗ビル上層階の休憩室で寝泊まりしていた
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渋谷東口店店長だったときの和孝さんの名刺。画像処理は筆者による。
和孝さんのアパートの水道使用量や料金の証明書。1年間で12立方メートル(1日平均33リットル)しか使っていないことが分かる。東京都水道局発行。
(上)渋谷労基署が作成した和孝さんの1カ月ごとの労働時間表(中)会社が作成して渋谷労基署に提出したと見られる和孝さんの賃金台帳(下)賃金台帳と労基署の労働時間表をもとに作成した労働時間のグラフ。
(上)渋谷労基署の調査復命書の一部(下)未払いの残業代などを反映して労基署が再計算した和孝さんの賃金。実際の支払額をもと労基署が計算した賃金の倍以上になっていることが分かる。
Twitterコメント
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2013.4 .17 株式会社サン・チャレンジの上田英貴社長 飲食チェーン「ステーキのくいしんぼ」
ぜひ梅田の下の名前も知りたい。そうすれば効果的に叩くことができるのに
「記事中で仮名「梅原」としたエリアマネージャー、実名は「梅田」である。迷ったが公開することにした。(記者) 」 社長ぐるみでこれじゃ、ステーキのくいしんぼは、ブラック企業認定だな。
こっちには父親の発言も
こんな真っ黒なところでも政府は「ハロワで紹介しない」程度の対応で済ませるんですかね。
でもなんだか閣僚が「このくらいの気概を持って」なんて「失言」しそうな悪寒。
なんでそんな会社にしがみついてたんだ。その根性あればもっと良い環境で働けるはずなのに…
ブラック企業
『 「売上げのいい誰々店長は今月1日も休んでいませんよ。あなたは何日休んだの」。毎月1回の店長会議で、株式会社サン・チャレンジの上田英貴社長は、...』こういう店にはいっちゃだめだね。
「ステーキのくいしんぼ」ね。また不買しなきゃいけない会社が増えたか。とりあえず、みんな「ステーキのくいしんぼ ブラック」でググって予測検索させようぜ。
順法意識のない社長、悪意を持った上司、認識の甘い親。逃げ場が無さすぎる…。
飲食業界ってなんでこうなのか。
空気など読まず、嫌なものは嫌と言わないと、死ぬ事も有る。家庭でも学校でも教えるべき。 #犯罪 #カルト #殺人事件
24歳残念店長
会社自体に長時間労働で過労死するという認識がなかった。意思があればいくらでも働ける、という社風
絶句…『「ソースがないから買って来い」と上司休みに』『アパートの水道使用量、1年でわずか12リットル』
感情的には殺人罪を適用して欲しいレベル。
「安い、早い」駅前チェーン系飲食店に流れる客の側も問題。おそらく「過重労働」と「危険食材」の温床となっている店舗は少なくないはず。そうでない真っ当な店を選ばないと(ポンチ)
もちろんパワハラだけど、特定個人からのいじめじゃないか…
昔先輩とか友達とかがバイトしててたまに懐かしくて食べに行ったりしてたんだけどさ、、、ものすごい残念。
”記者コメント:記事中で仮名「梅原」としたエリアマネージャー、実名は「梅田」である。迷ったが公開することにした。(記者)”
ひょええ
「記事中で仮名「梅原」としたエリアマネージャー、実名は「梅田」である。迷ったが公開することにした。(記者)」
過労死案件:株式会社サン・チャレンジ(東京都)/そろそろ労務上(重)過失致死傷って枠ができてもいいのではなかろうか/少なくとも直接の上司には刑事で責任問えるようにならないと
いいかげんにこういうのを刑法で取り締まれるようにしろよ。
ブラック企業って、企業が労働者を酷使する方針ではなくても、パワハラ上司をのさばらせておくだけでそうなってしまうのだろうなあと。他の企業でもそういう事例での意識ズレありそう。
これは刑事訴訟レベルでしょ…
親にすすめられた職だから、親に相談できなかったのかな・・・剣道やってたって言っても3か月毎日休みなく24時間剣道してるやつはいないし、やってたら死ぬってわかるだろ。
潰れろこんな糞みたいな企業
労働基準監督署ってなんなんだろ?こういうのを防ぐ組織では無いってことなんかな?
休みが7か月で2日! 単に労災ですませちゃいけない気がする。政治家は、大企業の言うことは聞くけど、外食産業には興味がなさそうだし。
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読者コメント
本当に気の毒で酷い事件
元エリアマネージャー上司の名前は梅O高O
現在札幌で自然食品等のショップを経営してる
ここでも懲りずにターゲット従業員が居て似たような仕打してた様だけどその人は無事退職したみたい
情報によれば
このパワハラ上司は、現在
札幌
マカリーズマ**ットの社長やってるそうです
イニシャルは、UT
本件 翌朝9:00頃 ビルの清掃で訪問した際に
私が発見し ハチ公前交番の警察官を呼びましたが
既に死亡していました。
ずっと あのときの光景がトラウマと
なっていましたが
本記事にて原因がわかりました。
ご冥福をお祈りいたします。
休みをあげると遊ぶから。そんなこと本人の自由です。結局自分のしたことをさも本人のためというようにもっていきたいだけです。どこにでも、あほで、上司としての資質に欠けているやつはいます。上司なのは、仕事上だけです。人生の上司ではありません。元上司、そしてその上司を許している社長は人間としてのくずです。今は、のうのうとしているでしょうが、きっと人として尊敬などされていないでょう。恥ずかしい人です。
話聞きましたよ。自分らにも声かけてくれたらいいのに。40人くらいならすぐ集めますから言って下さい。
これ何だかヤバくない??騒ぐっきゃないっしょ((笑))
何これ。おもしろくなってきたんだけど。
この書き込みが原因でイタズラ電話、嫌がらせなどお店と言うよりは御来店頂いたお客様に多大なご迷惑をおかけしました。この件についてと今起きていること等について佐藤さんと話をしたいと思います。
2年ほど前のある午後、都内で過労死遺族の小さな集まりがありました。一人一人が順番に自己紹介や近況報告をするなか、ある女性は、話し始めてすぐに声を詰まらせるように泣き出し、話せなくなりました。被災者のお母様でした。その後、1年以上の時間をおいて私から取材の申し込みをさせていただき、お話を聞かせていただきました。遺族側から記事を書くよう頼まれたり雇われた事実はなく、また、遺族側から金銭をいただいた事実もありません。なお、この書き込みも私だけの意思によるものです。
オレこの話し詳しいよ。
色々知ってるから教えてあげよっか?
記者からの追加情報
単位の間違えがありましたので、お詫びして訂正・追記いたします。(記者)
×たったの12リットル
○たったの12立法メートル
(2013.4.18 本文訂正済)
本文:全約9200字のうち約7100字が
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