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28歳自動車カスタム職人が就寝中に心室細動で過労死――労災認定の決め手は婚約者とのメール記録だった…
Iさんの母(左)と婚約者だったアイコさん(右)=仮名=。海道宏実弁護士事務所で。

 

 

 

 


 2010年9月下旬の早朝、連休2日目だったIさんは就寝中に「心室細動」という心臓の異常を起こし、搬送先の病院で死亡した。28歳だった。Iさんは、北陸地方にある自動車カスタム専門店の唯一の正社員。技術が専門誌に掲載される優れた職人だったが、1台1台に完璧な仕上がりが求められるなか、残業は月100時間超に。毎晩、帰宅前に婚約者に送っていた「仕事が終わった」という内容のメール送信時刻が、労災認定の決め手になった。代理人の海道宏実弁護士は、メールがなければ認定は「絶対になかった」と言う。Iさんはどのような働き方をしていたのか。またタイムカードがない会社で労災認定を受けるにはどうすればよいのか。母と婚約者、そして弁護士に話を聞いた。(認定関連資料はPDFダウンロード可)

【Digest】
◇社長による引抜き 別の自動車関係の会社から移る
◇職人として専門誌で紹介されたことも
◇完璧な仕上がり目指し仕事終わらず
◇残業は月100時間以上
◇仕事終わり、午前0時以降が8割
◇母「あと半年分くらいあるわ、とか言ってた」
◇アイコさん「レッドブルばっかり飲んでた」
◇高温環境 観測史上1位の猛暑下でエアコンなく
◇メールが残っていなければ 労災認定「絶対ない」
◇時系列
◇資料ダウンロード

原則は会社名を明らかにして報じることですが、この記事では例外的に、遺族の以下のような意向により社名を伏せました。1つは、Z社のウェブサイトにはIさんの名前と写真が掲載されたままになっており、会社名を出すことでIさんが誰かわかってしまいプライバシーが守られないこと。もう1つは、この過労死事案は和解が成立し損害賠償の支払段階に入っているが、会社名が明らかになることで経営が悪化し、賠償金の支払いに影響する懸念があること。やむを得ない事情としてご理解下さい。(佐藤裕一)

 2010年の9月29日と30日は、Iさんの2連休だった。水曜の定休日と木曜日にあたる。両日とも天候はおおむね曇り。30日の夜は晴れていた。

 29日は婚約者のアイコさん=仮名=といっしょに犬を遊びに連れて行くなどして過ごし、夜、犬の耳掃除が気になったが綿棒がなかった。「明日も休みだから、買ってきて明日するわ」。母にそう言って、夜11時半ごろ、「もう寝るわ、おやすみ」とアイコさんと2人で、自宅2階の自室に戻って行った。

 翌30日の朝6時頃、Iさんは就寝中に心室細動を起こし、救急搬送先の病院で死亡した。心室細動とは、心臓でポンプ機能を果たす心室が、不規則に細かくけいれんを起こし、血圧はほぼゼロになってしまう異常事態。28歳だった。労働基準監督署は、2012年1月24日付けでIさんの死亡を過労死と認定した。

◇社長による引抜き 別の自動車関係の会社から移る
 Iさんが働いていたのは、北陸地方にある自動車カスタムの専門店「Z」。この会社が株式会社になったのはIさんが死亡した10年の5月だが、Iさんが正社員として入社したのは、法人化前の07年12月だった。

 もともと別の自動車関係の会社で働いていたところ、法人化前のZ社の仕事を引き受けるようになり、Iさんの力量を知ったZ社の社長がIさんを引き抜いた。引き抜きにあたって、Iさんのためにブースをつくるなどの用意もしたという。

 Z社が得意とするのは自動車オーディオとドレスアップ。社長以下、正社員はIさん1人で、ほかにアルバイトが3人という小さな会社だった。Iさんがおもに担当していたのはドレスアップの方で、オーディオ関係は社長がやっていた。

◇職人として専門誌で紹介されたことも
 ドレスアップとは、簡単に言えば、板金、塗装、コーティングなどの技術を駆使したカスタム自動車の製作だ。改造自動車とも言う。車体を分解して、加工、塗装して組み立てるといった大掛かりな作業もある。アイコさんによると、Z社は自動車の修理もやっていたが、Iさんの仕事のほとんどがカスタムだった。

 コーティングや塗装の技術に優れたIさんが入社したことで、Z社は幅広く仕事を受注できるようになった。「何から何までカスタムできる会社は、この地方ではZ社のほかにはない」とアイコさんは言う。

 専門誌が取材に来ることもあり、仕上がったカスタム自動車を景観のいいところに運んで写真撮影をしたり、特殊コーティングの職人としてIさんの技術が誌面で取り上げられたこともあった。

 愛車の改造だけに、自動車オーナーが注ぎ込むお金も大きい。

 「1台に1000万円くらいかけて、オーディオから全部変えて、ショーに出す車を作っていたりするから」とIさんの母が教えてくれた。車体のコーティングだけでも15万円から25万円ほどかかるらしい。

 カスタムによって公道を走れなくなった自動車は、名古屋や静岡などで開かれるショーに出すために、積載車に載せて社長が往復したという。

◇完璧な仕上がり目指し仕事終わらず
 そんな世界だから、届いたパーツを取り付けて終了ではなく、1台1台、毎回異なる「一品物」を完璧に仕上げる。塗装やコーティングにほこりが1つ着いていてもダメ。自動車オーナーから指摘を受けるのだとアイコさんは言う。

 「ちょっとほこりが着いただけでお客さんに指摘されちゃう。気泡もそうです。あるとやり直し。それは彼も手で触って分かるし、完璧にしたいから」

 雑な仕事はしないという社長のこだわりも強かった。

 「他の会社は仕事をはけることが優先なので、ちょっとぐらい雑でもお客さんに出してしまう。でも、ここの会社はそれをしたくないというこだわりがあった」

 自動車オーナーと相談しながら仕事を進めていくこともあり、1台を仕上げるだけでもかなりの時間がかかっていたらしい。そんな自動車を何台も抱えていたから、仕事は終わらず、毎日、午前1時2時ごろまで作業せざるを得なかった。

◇残業は月100時間以上
 その結果、死亡前6カ月の平均残業時間は、労基署が認定した分だけでも97時間に及んだ。終業が午前1時2時になるのは当たり前で、午前4時を過ぎたこともあった。翌日は朝10時から働く。

 労基署が認定したIさんの残業時間をまとめたのが下の表だ.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。



労基署が認定したIさんの毎日の拘束時間をグラフにした。午前1時2時という時間が日常になっていることがわかる。
高温環境が「循環器系への負荷は大きいと考えられる」とする『長時間労働者への面接指導マニュアル(医師向け)』の一部。
Iさんとアイコさんのメールのやりとりの一部。緑のふきだしがIさん。この送信時刻にそった時間が認定された。
遺族代理人の海道宏実弁護士

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