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日本マイクロソフト カリスマ性なき樋口氏が「使える雇われ社長」になったワケ

情報提供
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Baa:優良予備軍
(仕事4.0、生活4.0、対価3.2)
 2011年2月、三菱商事が入居していた品川区港南の通称SGTに本社を移し、「日本マイクロソフト」と社名に「日本」をつけた樋口泰行社長。2011年6月期、2012年6月期と2年連続で、「D6(先進6か国)で最も高い業績を上げた現地法人」としてバルマーCEOから表彰を受けただけに、とてつもない利益が出たのは確実。だが、日本法人の業績は非開示で、売上の内訳も、相応の税を日本に納めたのかも隠されている。「法人向けライセンス契約は、日本企業向けを含むアジア地区は全てシンガポールの法人が契約主体。欧州はアイルランド。もちろん節税目的です」(元社員)
Digest
  • “防衛戦”目立つ事業環境
  • クラウド化で踏みとどまる
  • いいタイミングでやってきた樋口さん
  • ダメすぎた前任者
  • IBMから多く採用し好調に
  • 社員の6~7割は営業系
  • 全世界共通の「スコアカード」問題
  • 新卒の離職率は低め
  • 英語は内勤だと不可欠
  • 相場より「ちょっと低め」な給料水準
  • 査定で5を2回とると「PIP」措置
  • 「阿波踊り接待」の時代も
  • バブリーは過去のものに、経費削減続く
  • 日本人だけ冷めてる「宗教みたい」なMGX
  • 有休を年12日消化するコミットメント
  • 女性登用が極端に進行中

“防衛戦”目立つ事業環境

PC離れやクラウド化の流れのなかで、従来のビジネスモデル(Windows&Officeで稼ぐ)が崩壊するリスクもあり、世間一般では、これまでOSやソフトを高いシェアで独占し稼いできたマイクロソフトは分が悪く、様々なものからの“防衛戦”を強いられる環境にある。

PCから、移動端末(ケータイ・スマホ・タブレット…)へという流れのなかでは、対アップル(iPad 、iPhone)で『サーフェス』や『ウインドウズフォン』を投入も、惨敗中だ。

「サーフェスRTは、目標数字をセットされ、現場はアップアップの状態。乗り換えキャンペーンなど打ち出してますが、目標通りには全然売れていません」(営業社員)。原因については「iPadに比べ、アプリ数が圧倒的に少ないから」(内勤部門社員)との見方が多い。

ウインドウズフォンに至っては、世界的にはシェアが伸びているにもかかわらず、日本では2011年夏を最後に、2年以上も新機種が出ないという絶望的な状況。社員は社用電話として持たされているが、社外の人からは存在を忘れ去られつつある。

クラウド化で踏みとどまる

一方、クラウド化の大きな流れのなかでは、対グーグル・アマゾンの激戦で、この分野は現在、戦国時代だ。一時期、Windows OSの脅威だった「リナックス」対策はもはや社内で聞かれなくなり、脅威はグーグルとアマゾンに変わった。

たとえばグーグルのクラウド型サービス『Google Apps』に客が流れると、『Office』(Word、Excel、PowerPoint…)の代用品である『Google Docs』にシェアを奪われ、収益源である『Office』が売れなくなる恐れがある。

そうしたなかでも、社員・元社員によれば、クラウド化を積極的に進める樋口社長の方針が奏功。確かに、サーバー製品やクラウド対応契約の売上が伸び、業績好調を牽引しているようである。

具体的には、『Office365』(メール、ポータル、法人向けスカイプのLyncなど一連のアプリを月額制で利用するサービス)や、クラウドのプラットフォームであるサーバー製品(『シェアポイント』『システムセンター』『ウィンドウズ・アジュール』等)の契約を推進中。

オラクルに対抗して出しているデータベースの『SQLサーバー』、業務システムを稼働させるための『Windowsサーバー』などのサーバー製品の販売も好調である。

「今年は『Windows XP』のサポート切れ(2014年4月)を控えて『7』か『8』へ切り替える特需もあり、おかげ様で好調。売上比率では『Windows』『Office』が依然高いですが、サーバー製品が全体の半分近くにまで伸びて来ています」(営業社員)

結果として、クラウド化のなかでもシェア争いで負けることなく踏み止まり、市場の拡大に合わせて事業拡大に成功している模様である。

いいタイミングでやってきた樋口さん

そうは言っても、言うは易し、行うは難き。一見、苦戦を強いられそうな環境のなか、樋口社長(2008年4月就任)は5年間で、社内の何を変え、日本法人の業績を伸ばし、米国本社から連続して褒められるような「使える雇われ社長」になれたのか。

複数の社員らによれば、樋口氏には決してカリスマ性はない。第一に、タイミングが良かったのだという。「大手法人関連の部分では、樋口さんは2000年代前半~中盤の努力が実った、いいタイミングでやってきた、と言えます」(元社員)。つまり、棚ボタだ。

これは、2000年前後からはじまった包括契約(EA=エンタープライズ・アグリーメント)というプログラムの話だ。マイクロソフトは、その強い立場を利用して、大手企業から複数年契約を取り付けるよう、営業に力を入れた。契約金額はPCの台数で設定し、たとえば3年間のライセンス使用のコミットを貰うかわりに、ソフトの利用権、バージョンアップ権やその他特典を付与する。

その営業努力が実り、法人に対する全社的なパック販売で、WindowsとOfficeを中心に安定した収入が入るようになり、数年先の売上まで確定した。最低限の売上が確定するため、その上で、WindowsとOffice以外の追加的なサービスを一生懸命に売り込める時間ができ、さらに売り上げが伸びる好循環になったという。

「企業が安心して使えるサービス内容、価格体系、信頼性がウチにはある。(グーグル・アマゾンに比べて)長く法人ビジネスをやってきた信頼が生きている」(技術系の営業社員)というから、前任者までの時代に築かれた企業向けの強力なブランド力が、ここにきて効いてきたのは確かだろう。企業のコンプライアンスの重要性が増すなか、信用力の面で、新興企業よりもリードしているのである。

ダメすぎた前任者

第二に、樋口体制になって

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日本マイクロソフトのキャリアパスと報酬水準

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