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GoHoo四季報<2013年秋>地層処分1000年後に放射能無害化? ――小泉批判のため読売社説が重大ミスリード

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四半期誤報大賞:読売新聞2013年10月8日付社説
 原子力エネルギーの利用をどうするのか、秘密保護法は是か非か、日中間の尖閣諸島問題にどう対応していくのか。山積する重要なテーマについて、メディアがわかりやすく正確に報道することが求められている。3か月ごとに重大な誤報を5~6本を取り上げる本シリーズの第二回目は、9~11月の新聞報道が対象。四半期誤報大賞は、「原発ゼロ」を唱えた小泉元首相を批判し、社論である原発推進の世論を形成するために、実際には万年単位の封じ込めが必要とされる高レベル放射性廃棄物の地層処分について、1000年後には放射能がほぼ無害化してしまうかのように読者をミスリードした、10月8日付読売新聞社説を選んだ。
Digest
  • 地層処分1千年後に放射能無害化?小泉批判の社説でミスリード(読売)
  • 秘密保護法「一般人は処罰対象外 、公務員らに限定」は間違い(産経)
  • 「赤旗で秘密保護法反対」 虚報に藤原紀香さん遺憾表明(産経)
  • 「日米が中国防空圏撤回要求の共同文書」大誤報を放置(読売)
  • 「原子力規制委が住民聴取を拒む」 誤報で会見排除され、おわび(毎日)

第一回目<2013年夏>編はこちら

地層処分1千年後に放射能無害化?小泉批判の社説でミスリード(読売)

10月1日、政界を引退して久しい小泉純一郎元首相が講演で「原発ゼロ」路線を唱え、大きな波紋を起こした。読売新聞は8日付で「小泉元首相発言 『原発ゼロ』掲げる見識を疑う」と題する社説を掲載。「小泉氏の発言は政府・自民党の方針と異なる。政界を引退したとはいえ、看過できない」などと激しく批判した。

その中で小泉氏が「原発ゼロ」の理由として、原発から生じる放射性廃棄物の扱い方を疑問視し、「核のごみ処分場のあてもないのに、原発を進める方がよほど無責任ではないか」と主張したことを取り上げて反論。

使用済み核燃料や、それを処理した際に出る放射性廃棄物の処分法は技術的に決着している。専門家は地盤の安定した地層に埋めれば、安全に処分できると説明している」「放射能は、時間を経ると減り、1000年で99.95%が消滅する。有害性が消えない水銀など重金属の廃棄物とは事情が違う

などと指摘した。

社説は、地層処分が技術的に安全であるとの見解で専門家が一致しているかのように印象づけているが、事実はそうではない。日本学術会議は昨年、地層処分の技術的課題が残っていることを指摘し、この課題を解決するまで「地層処分」ではなく「暫定保管」を採用するよう提言していた。

この提言を踏まえ、今年夏に文部科学省内に地層処分の課題を克服する技術開発のための専門家会合がスタート。経済産業省内にも地層処分の技術的評価を見直す専門家会合が設置された。こうした再検討の動きを無視して「技術的に決着している」と断定されれば、ミスリードされる読者は多いだろう。

より深刻なのは、放射能が「1000年で99.95%が消滅する。有害性が消えない水銀などと事情が異なる」という指摘だ。専門知識のない一般読者がこの説明を聞かされれば、1000年封じ込めれば放射能がほぼ有害性が消えてなくなるという印象を抱くに違いない。

ところが、実際は万年単位の封じ込めが必要とされる。地層処分されるガラス固化体は1本あたり「約2×10の16乗ベクレル」の放射能が含まれて、1000年後に99.95%消滅しても依然として極めて高いレベルの放射能が残るからだ。

しかも、原発が昨年末までに生み出した使用済み燃料は、ガラス固化体にして2万4800本に相当する(NUMOのホームページより)。「1000年で99.95%が消滅する」という指摘が、地層処分の安全性を強調する文脈においていかにナンセンスで、ミスリーディングであるかがわかろう。

あろうことか、読売新聞は11月22日付社説で改めて地層処分の安全性を訴える文脈で、再び「放射能は時間とともに減少し、約1000年後には99%以上が消滅する」と強調した。

もちろん、原発政策をどうするにせよ、既に発生した放射性廃棄物の処理、処分の課題は避けられない。だが、地層処分が科学的、技術的に何の課題もなく、単に処分地の選定という政治的課題だけ解決すればよいと言い切ることが、この問題の進展にかえってマイナスだと、昨年日本学術会議が指摘していた。こうした指摘を同紙が一顧だにせず、技術的問題を矮小化して「1000年後には99%以上が消滅する」とミスリードするのは、かつての「原発安全神話」ならぬ「地層処分安全神話」を生み出すためだろうか。

 
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産経新聞2013年11月12日付朝刊5面

秘密保護法「一般人は処罰対象外 、公務員らに限定」は間違い(産経)

特定秘密保護法案は今年秋の臨時国会で最も深刻な論争を巻き起こした。主要メディアは、朝日、毎日、東京の各紙が反対の論陣を明確にし、連日廃案に向けたキャンペーンを貼ったのに対し、読売と産経は賛成の立場で報じた。

不正確な報道や、法案の条文とかけ離れた根拠薄弱な報道も見受けられたが、中でも明らかに事実誤認で、読者に誤った印象を与える危険性が高い記事が、産経新聞が11月12日付で報じた「秘密保護法案『一般人は処罰対象外』森担当相、公務員ら限定強調」だった

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MSN産経ニュース2013年11月21日付記事

読売新聞2013年11月30日付朝刊1面トップ

毎日新聞2013年11月10日付朝刊1面

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