「久夛良木さんに社長をやって貰いたかった」TV時代の部下が語るソニー失敗の原因、リストラの窮状
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スマホを手にインタビューに答える40代社員。※匿名性を守るため色調を変えています。 |
- Digest
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- 反対するなら、やる奴を連れてくる
- デジタル化が進み「お山の大将」の限界に
- 判断が「遅い」のではなく、間違っている
- 部長もエコノミーで東海岸に飛びヘロヘロでプレゼン
- 「バイオに行くか、辞めてください」
- 「自分で探すか、辞めるか」の2択
- 統括課長が自殺
- 「エレクトロニクス業界のBMW」を目指さないと…
反対するなら、やる奴を連れてくる
ストリンガー(前CEO)は、英語だけできる人を抜擢したり、自分の年俸が高すぎる割に早期退職で社員をクビにしたり、就任時のスピーチで「私が得意なのは調整です」などとソニーの状況を全く理解していない発言をしたり、何も社長らしいことはしなかったと思います。現場は「ヒドいね」とみんな言ってました。平井さんになってからは、そういう悪い評判は聞かなくなりました。
久夛良木さんは、ストリンガーが得意だという「調整」とは正反対で、「反対するならいいよ、やる奴を連れてくるから」と宣言する強烈なリーダーでした。
久夛良木さんが本部長の時代は、『ベガ』の1シリーズである「HVX」を開発しており、折り畳み式のリモコンがついた「とんがりモデル」を開発していました。私はその時代の、部下にあたります。
100ワットのアンプをつけて、リモコンだけで原価が1千円以上もしたんです。低い帯域の音も再生する「スーパーウーハー」というスピーカーシステムもついていました。コストが高いので、赤字でした。
当時としては最先端の、LEDバックライトを採用しており、ソニーのハイエンドブランドである「クオリア」のシリーズとして、“超とんがりモデル”として発売しました。
これは、ものすごい画質でした。同じ赤でも、どぎつい赤が出るんです。あとで普通のTVを見ると、ぜんぶ朱色に見えてしまうほど。でも、当時は、LEDバックライトは、時期尚早でした。販売価格が100万円超になり、売れなかった。高すぎて、仕方がないから、出井会長発案の高級ブランド「クオリア」のシリーズで発売したのです。
幕張の展示会「シーテック」で説明すると、競合のシャープやサムスンの担当者からも、「LEDバックライト、ほんとに商品化したんですか!」と感心されたのを覚えています。
本部長(プレジデント)として、このテレビのクオリアをやったのが、久夛良木さんです。久夛良木さんは、短期的な利益は出なくてもやっちゃう。そういう人は、その後、出てきていません。
結局、久夛良木さんは社長になれませんでしたが、その後のストリンガー、平井体制でもうまくいっていないのですから、今のソニーには、そういう突破力のある独裁的なリーダーが必要なんだと思います。
デカい構想、ビックピクチャーを考えている人が、上層部に、少なすぎます。「少し性能をカイゼンした後継モデル」のことばかり考えている。後継機種を出し続けるだけではまずい、と現場では、誰もが感じています。
デジタル化が進み「お山の大将」の限界に
ソニーは、「お山の大将」がいっぱいいる会社です。「統括部長」クラスから上にいっぱいいて、当たったり、外れたり、を繰り返して、大当たりするとSCE(プレステ)になったり。UNIXワークステーションの「NEWS」(後のバイオ)もそうです。
社内で聞いた話ですが、異業種研修で、トヨタ2人とソニー2人のチームで議論したとき、「久夛良木さんなら〇〇と言うよね」などとソニーの人が個人名で語るので、トヨタの人に「どうして組織として決めているのに、そんなに個人名が出るのか?
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PC事業撤退にともなう関連部門を対象とした「早期退職支援」の内容(労組資料より)
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海外売上比が50かな、超えると環境、役割も変わると。最近だと1割ぐらい為替益も追加されるから、別な圧がありそう。か、未知なだけなのか。
どうなんだろうなぁ。リーダーが変われば、あのおぼっちゃま集団もどうにかなったんだろうか。
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読者コメント
海外メーカーとTV分野で技術提携するとニュースで見た時はビックリしましたよ。トップって重要ですよね。
冨山和彦氏の指摘したように会社は頭から腐っていくんですなあ。トップの人選こそもっと慎重に。もっと精密に。日本は課長になる辺りはかなり厳密に昇進試験するけど社長職になるルールが曖昧且つ甘々過ぎる。これが中韓メーカーに負け続ける遠因のひとつだろう。
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