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介護福祉士&ケアマネ 「芸能人呼ぶカネあるなら給料上げて!」非効率事業者が淘汰されない、官製低賃金労働者

情報提供
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B:不良職種予備軍
(仕事3.0、生活3.7、対価2.0)
 会社四季報業界地図2016年版によると、過去15年間で就業人数が「増えた職業」1位は介護職員で、約100万人増加。それでも急速な高齢化を背景に、有効求人倍率は2.83倍(2015年10月)と、求職者1人に対して2.8人も求人がある人手不足だ。さらに、厚労省が2015年6月に発表した推計では、人数の多い「団塊の世代」が75歳以上になる2025年には253万人の介護職員が必要となるものの、現状のペースでは215万2千人しか確保できず、約38万人も不足するという。そんな“超売り手市場”で引く手あまたな介護職の実情を聞いた。
Digest
  • 世代間格差を拡大する仕組み
  • 資格取得のハードルは上がるが、報酬は…
  • 求人票の額から上がらない仕事
  • 月収30万円超がない、介護職のキャリアパス
  • 時給1500円とはいうものの…
  • 施設では、夜勤手当が生活給に
  • 「坂本冬美を呼ぶカネがあるなら給料上げて」

世代間格差を拡大する仕組み

2000年にスタートした介護保険制度により、親族ではなく社会全体として高齢者介護を担う仕組みが始まって15年。「職業としての介護労働者」が日本でも急速に普及しつつある。

20世紀までは、子供やその嫁が、高齢な義理の母を無償で介護するのが一般的な姿で、筆者の寝たきり生活が長かった祖母がそうだったように、家政婦が雇われていた(たまたま金銭的な余裕があった)。今ではそれらの代わりに、見ず知らずの介護職の人(ヘルパーさん=介護職員初任者研修修了者および介護福祉士)がやってきて、格安で介護サービスを提供してくれる。

利用者の自己負担は原則1割だけ。自宅から車の送迎つきで施設で入浴や体操をする「デイサービス」を週3回受けても、利用者の支払額はわずか月1万円程度(おやつ・昼食代等で変わる)、という仕組みだ。よほど重度で病状が悪くなければ、おおむね年金の範囲内で支払うことができる。

その財源は、40歳以上が支払う介護保険料が50%、残り50%が税金(国、都道府県、市町村)から支出され、利用者負担は1割だけ(収入が多いと2割)。驚くべきことに、いまサービスを受けている高齢者の大半は、40代50代の現役時代に介護保険料を納めてこなかった高齢者たち(2000年スタートのため)。シルバーデモクラシーによって、さかのぼって支払う義務については議論にすらならない。典型的な世代間不公平を生み出す制度である。

訪問介護は非正規中心、施設介護は正社員中心

世界一のスピードで高齢化が進む日本では、介護需要も急速に増え、財源は逼迫。当然、現場の介護労働者の賃金に振り分ける額は限られる。介護労働の賃金水準は、高くない。

さらに、不安定な非正規が制度を支える。厚労省資料によると、訪問介護員(48万人)は非常勤が69%を占め、施設等の介護職員(123万人)のほうは逆に常勤が72%を占める。全体では、非常勤(主にパート)が約4割を占めている。


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訪問介護歴10年のAさん(40代)

資格取得のハードルは上がるが、報酬は…

「子どもには勧めません」(40代・介護福祉士のAさん)、「子どもにやれとは、とても言えない」(50代・ケアマネのBさん)、「経営側として入るなら、まだよいのですが…」(20代・介護福祉士で経営にも関与するCさん)――。

現場の人たちに聞くと、どうみても人に勧められる職業となっていないのが、介護職の現状である。

社会的ニーズの増大と財源不足の制約から、今後、社会全体として、少なくとも「給料はそう高くないけれど、尊敬される職業」に育てていかねば、なり手が不足して制度が破たんする。だが現状では、政府が完全にそのブランディングに失敗している。

2025年に253万人もの人が従事する重要職種ならば、主婦がパートタイムでやって家計の足しにする片手間な仕事だけではなく、頑張れば単独で家計が成り立つポジションにも就ける「専門職」として認知されなければいけない。

フルタイムだと、週40時間×年50週=約2千時間。時給2千円ならば年収400万円。日本のサラリーマンの全体平均が415万円(2014年、国税庁発表)だから、キャリア10年の中堅どころで、このあたりの収入(時給2千円)に到達できるキャリアパスが目安となる。だが現実はそうなっていないばかりか、資格取得のハードルを上げ、ますます投資対効果ばかりを悪化させている。

「自分は10年前に『ホームヘルパー二級』の資格をとりましたが、当時はニチイ学館の通信教育で4ヶ月勉強して、12日間実習すると、とれました。2013年4月から、このホームヘルパー二級が『介護職員初任者研修修了者』という名称に変わり、勉強量、単位数も増えたので、駆け込み受験も多かったそうです」(40代・介護福祉士のAさん)

2017年1月からは、介護職員初任者研修修了者が、その上の「介護福祉士」資格試験を受験する前に「450時間」もの実務者研修を受講(費用は10万円程度~)することが義務化された。人手が足りないのだから、ハードルを上げるのなら待遇改善施策とセットで実施すべきだが、一方的にハードルだけ上げ、めぼしい待遇改善策は打たれていない。

厚労省「賃金構造基本統計調査」によると、2014年の福祉施設介護員の平均月収は約22万円、年間ボーナス等は約46万円で、平均年収は約309万円。ざっと100万円ほど足りない。平均25%の引き上げが必要だ。

求人票の額から上がらない仕事

「新卒で、なんでここに来てるんだろう?という人が、いっぱいいる業界。5年後10年後を考えずに、好きなことをしに来ている、という感じ。初任給は他の業界と差がないから分からないのかもしれませんが、

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Cさん(20代)の源泉徴収票(新卒入社2年目のもの)。中間管理職も兼務してこの年収。

介護職のキャリアパス

Bさん(50代正社員、ケアマネ)

Aさんの給与明細

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 2016/01/19 22:35
 2016/01/19 22:31
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