介護福祉士&ケアマネ 整形外科通いも当り前、低ストレス・重労働でキャリアパス見えず…
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介護福祉士登録証 |
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- 自宅訪問と施設勤務
- 訪問介護の仕事現場
- 「風呂入れが一番キツい」
- 老健、特養施設「スポーツクラブで9~18時で運動するみたい」
- 1人で40人みるケアマネの仕事
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- デキるヘルパーとは
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- 整形外科通いが当り前、70代もいる現場
- 効率悪い訪問介護の1日
- 担当16人でもキツい、ケアマネの1日
- 家族模様が垣間見える仕事
- 解決策として

自宅訪問と施設勤務
コンビニのレジ打ちやファミレスのバイトが都内で時給900円前後(夜間は1300円強)の昨今において、それより3~4割高く、今後数十年は人手不足が続く見通しで失業リスクも低い。
介護職の仕事内容は、利用者数べースで全体の71%を占める「居宅サービス」が中心で、別途、「施設サービス」(23%)、地域密着型サービス(10%)がある(厚労省「介護給付費実態調査月報」平成27年1月審査分による)。居宅サービスは、家庭に訪問して行うサービス(訪問介護)と、利用者を一時利用施設に日帰り送迎つきで預かるデイサービス(通所介護)がある。主要3大サービスが「訪問介護」「通所介護」「施設介護」と考えてよい。
居宅のほうが利用者の要介護度は軽く、要介護1と2が中心。施設のほうは、要介護度が高い(要介護4と5が中心)傾向がある。介護職員としても、施設で働くほうが、より重度の利用者を相手にする分、難易度は高め、と言える。
訪問介護の仕事現場
非正規が中心となっている家庭への訪問介護の場合、その担い手は女性が多く、主婦の家計補助というパターンが目立つという。「私が勤務先を選んだのは、そのヘルパーステーションが自宅の近くにあったから。訪問介護は結局、10年やりましたが、介護職員は9割超が女性でした」(パート契約のAさん=40代女性)
Aさんが所属する社福では、訪問介護部門が、ヘルパー(=初任者研修修了者と介護福祉士らの総称)20数人、サービス提供責任者2人、ケアマネ5人、という体制。別途、デイサービス(30人体制)や特養なども展開する中堅どころだ。
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訪問介護の現場組織。「登録ヘルパーが20数人、サービス提供責任者2人、ケアマネ5人、という体制」(Aさん)![]() |
Aさんは、直行直帰で1日2~3件の自宅に訪問介護に訪れ、1時間ずつ、「身体介護」(入浴、排泄、食事、着替えなど)または「生活援助」(調理、洗濯、掃除、買物代行など)を行う。
一回のサービス提供ごとに、その場で利用者に印鑑を押してもらう必要がある。その場で介護内容を紙に手書きで記入し、印鑑を貰う。「押しといて」と言われて自分で押すこともある。その紙は、自宅に帰ってから、毎日、その日の分を社福の拠点にファックスし、サービス提供責任者に知らせる。原本は、月に数回、拠点を訪れた際に持っていき、利用者ごとのファイルに綴じて保存する。
この20数人のヘルパーを管理しているのが、2人の「サービス提供責任者」で、こちらは正社員。介護福祉士からみると、自分の訪問先や仕事内容を決める権限を持つ人物であり、逆らえない上司のような存在だという。
「サービス提供責任者」は訪問介護事業を行う場合のみ必要とされ、「利用者40人あたり最低1人」と決められている。介護福祉士の受験資格でもある「450時間の実務者研修の受講」がないとサービス提供責任者には就任できない。
ケアマネが決めたプランに沿って、サービス提供責任者がヘルパー(初任者研修修了者、介護福祉士)を派遣する。ケアマネは同じ社内で正規雇用の場合と、非正規雇用である場合、さらには外部の人である場合もある。
「サービス提供責任者とケアマネの関係は、ケアマネのほうが上。ケアマネが、どの事業者に仕事を割り振るか決めているからです。だから我々は、ケアマネに対して営業をかけます」(Cさん=20代介護福祉士、経営側にも関与、男性)。ケアマネ>サービス提供責任者>ヘルパー、という力関係である。
訪問介護の仕事は、障害が軽度の人が中心であるが、施設とは異なり、完全「アウェイ」の環境(相手先の自宅)で1:1となるため、相性が悪いとストレスも大きい。
利用者からのクレームとしては、「『いまある材料でやって』と言っても残しちゃうのよ」など。これは、料理がうまい人に来てほしい、と交代を要求している。介護職の資格試験で料理の腕は問われないが、こうした相性で長続きしないことは多い。
体重が重い人の場合はキツい。「80キロくらいの巨体の人だと、ポータブルトイレに座って貰うのが大変。重いから動かない。体重加算がほしいくらい。自分では立てないから、ちょっとずつ動かして、15分くらいかかります。一番タイヘンなのは、こういう、車いす⇔ベッドやトイレの移動、いわゆる『トランス』なんです」(Aさん)
訪問介護は、移動時間も長く、必ずしも自宅近くというわけでもない。事業者が乱立しているので、利用希望者が近くにたくさんいても、事業者ごとに情報は分断されている。「1つの行政区内に訪問介護の事業所が40~50か所もあるので、移動効率が悪いと感じます」(Cさん)。
掛け持ちで登録しているヘルパーも多いとはいえ、「拠点が家から近いから」という理由だけで1つの事業者に登録するAさんのようなケースも普通にある。
無駄な移動時間は、社会全体として莫大な介護職の時間(=人件費)の浪費となっている。事業者が多すぎるのが問題である。
「風呂入れが一番キツい」
Aさんはデイサービスの拠点でも勤務経験がある。デイサービスは、自宅に迎えに行って「風呂入れ」などをして3~4時間で送り返すのがメイン業務だ。片麻痺の人、車いすの人などは、独力で風呂に入れない。
「午前中の3時間で、15人くらいの利用者を、流れ作業で風呂に入れていきます。ボックスタイプのシャワー施設があり、ヘルパー2人で、風呂の中と外(脱衣所)に1人ずつ配置される体制。介護の仕事で一番キツいのが、この風呂入れ。ユニフォームの上に大きなエプロンをして、Tシャツ・短パン姿でやるのですが、認知症だと、入浴中に排泄する人もいます。自分は、風呂さえなければデイサービスの仕事を続けていましたが、風呂が嫌でやめました」(Aさん)
送り迎えも、一仕事である。「階段しかないアパートの2階の自宅から、車椅子でデイサービスへ連れて行き、送り返すのは力仕事になるので、こういうケースでは男性を配置するなど、担当割を考慮します」(Cさん)。デイサービスは、体力がない人にはキツそうである。
老健、特養施設「スポーツクラブで9~18時で運動するみたい」
訪問介護とは違い、1日中、ハコモノのなかで働きずくめとなるのが、施設勤務者だ。「特定有料老人ホーム」での勤務も経験したAさんによると、1日の流れは以下の通りだった
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ストレッチャー浴の説明(Aさん)
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読者コメント
2008年に始まり、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国と協定を締結。受け入れ上限は2016年度、各国とも看護師が200人、介護福祉士が300人。国家試験は看護師が原則3年で毎年受けられ、介護福祉士は原則4年で1回の受験。合格すれば在留が認められ、合格しなければ帰国しなければならない。15年度の合格率は看護師が11%、介護福祉士は50%を超えた。
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