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サムスン電子ジャパン「グローバル企業ではなく、日本的な古い体質を持つ韓国企業です」新卒入社組が語る“イメージと実態のギャップ”

情報提供
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新入社員に発令される辞令。ロゴ入りの立派なカバーに入れられてわたされる。韓国本体では「勝ち組」の証となる。
 グローバルではシェアトップの20%前後をアップルと争うものの、日本国内では5%未満に低迷するサムスンのスマホ『GALAXY』。「置くだけ充電」をiPhoneに先駆けて実装するなど、技術力では最先端を走りながら、日本ではあまり売れず、2年前(2015年末)には事実上の指名解雇で100人を削減しコストカット。だが、その際に解雇リストの対象外だった新卒入社の社員たちまで続々と辞めている。元サムスン社員の転職先はファーウェーが鉄板ルートで、社内では「リトルサムスン」と呼ばれるほどだという。高い離職率の原因とは、どのようなものなのか。新卒入社組の若手に、現場の実情を聞いた。
Digest
  • 研修では毎日、社歌を合唱
  • ファーウェー内に「リトルサムスン」
  • 圧倒的な本社の“伝言ロボット”感
  • 上層部は古い日本企業カルチャー、文書も会話も日本語
  • 熱血系の研修、家族主義な洗脳っぽい社歌を毎日合唱
  • グチャグチャな派閥争い
  • 毎週金曜の経営戦略会議でつるし上げ
  • ケータイキャリアの力が強すぎる日本
  • 存在しない会社名で「韓国臭隠し」
  • プロダクトはよいのに売れない「限界感」がすごい
  • グローバル企業らしいところ①:情報管理
  • 給料自体は悪くない
  • 上位1割でボーナス7か月分
  • 制度はグローバルだが、カルチャーが…

※サムスンは後述の通り、コピー紙1枚1枚にタグを埋め込み出口のセンサーで検知したり、社屋入り口で社員のスマホカメラにシールを貼るなど、徹底した情報管理を本体で行う。日本法人は社員数が少ないことから、情報源を守りつつリアルな実態を報告するための措置として、現役社員・元社員を明記せず「新卒入社組の若手」と表現するにとどめる。いずれにせよ同社の内部状況をよく知る立場にいる人物である。

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カバー表。右上にサムスンのロゴが入っている。

研修では毎日、社歌を合唱

サムスン電子ジャパンでは入社式の日、代表取締役より、新入社員1人ずつに「社員(G1-01)に命じます」という辞令をわたす儀式が行われる。

辞令は、分厚いアルバムのような、仰々しいサムスンロゴの見開きカバー付きだ。G1-01とは、社内でのランク(一番下のグレード)を示す。

「これが実物です(上記写真)。まさか日本法人だけでやっているはずもないので、この儀式は、韓国の本社でもやっていると思います」

サムスン電子ジャパンは、2012年入社から新卒採用を開始。毎年、10~20人規模の新卒採用を続けていたが、2016年入社を最後に、採用を停止した。2016年は、堤社長が半年で退任したり、グローバルではギャラクシー発火事故が起きたりと、混乱の年だった。2017年4月と2018年4月は新卒採用ゼロ。2019年入社の採用も現状、発表されていない。

「2015年末に約100人をリストラしてコスト削減しましたが、その後も、業績が思うように回復しないので、新卒採用に踏み出せないんです。2012年の新卒入社組1期生は、すでに全員が辞めていて、定着率も低い。2013年と2014年入社も、すでに半分以上が辞めました。遠からず、新卒入社組は全員いなくなるでしょう」

とはいえ、会社としては、あまり問題視していないようだ。社員が役員に質問できるセッションでは、こんなやりとりがあったという。

「最近5~6人が一気に辞めたが、どういう見解なのか?」(社員)

「離職率としては一般的だと思っています」(役員)

売上が思うように伸びていない現状では、むしろ人件費が減って利益がねん出できるほうが、会社にとってはありがたいのかもしれない。2年前の「100人リストラ」の際は、かなりのコストをかけてまで辞めさせていたからだ。

「100人リストラでは、バイネームのリストがあり、事実上の“指名解雇”でした。これは社内ではよく知られていて、新卒入社組は全員、リストから除外されていました。辞めたくない人は、裁判沙汰になった人もいたそうですが、リストアップされた100人は、8割がたが、それほどゴネることもなく辞めました。なぜかというと、条件が年収1年分丸々と悪くなかったからです」
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直近3期分の決算公告。毎年、代表取締役が代わっており業績も不安定。

サムスン電子ジャパンは2015年度決算で特別損失を64億3300万円計上。この一部が、割増退職金の原資となったとみられる。

希望退職に応じて辞めると年収1年分上乗せ、という条件は、中途採用で入社して勤続年数が短い人にとっては、悪くない条件だ。

特に、企業業績がよく、人材の「売り手市場」となっている日本国内の転職市場では、すぐに好条件な転職先も決まる。

競合する企業なら、サムスン在籍者とあれば、なお転職しやすい。競合社内の情報がほしいからだ。

ファーウェー内に「リトルサムスン」

「最近では、辞めた人が続々と、ファーウェーに転職しています。サムスン→ファーウェーが、まさに鉄板コースになりつつある。上司がファーウェーに転職して、その上司から、私の同僚も誘われていました。部長、次長、課長、社員と、全クラスで計10人は行っています。ファーウェーでは、その一群が『リトルサムスン』と呼ばれているそうです。年俸も高いし、サムスン社内では『またファーウェーか』という感じだそうです」

ファーウェー(華為)は、「新卒の技術者で初任給40万円」が話題になった伸び盛りの中国・スマホトップ企業(2016年時点、2017以降はOPPOに追い上げられている)で、年俸水準はサムスンに劣らない。サムスンを追う立場にあるファーウェーとしては、サムスン出身者はウェルカムだろう。

離職率の高さは、こうした外部要因(転職市場の活況、競合企業の成長)に加え、サムスン自身の社内原因も大きいという。

圧倒的な本社の“伝言ロボット”感

その第一が、上層部の“伝言ロボット”感だという。サムスン本体から駐在で来ている社員は、全体の1割未満で、20~30人いる。部長以上の大半は、この駐在でやってきた韓国人が占め、日本で失敗しなければ、本体に戻って出世するコースがほぼ約束されているという。そのため、本体からの指令には敏感に反応する。

「日本で採用された人で、会社を好きな人はいないと思います。本社からの無茶振りとそれに応じる上層部の役職者たちの態度、本社の意向が入ったときの駐在員の目の変わりようが、すごいんです。どんなに現場がカオスになろうが、命令は絶対に完遂させます。個人個人では仲が良くても、本社の“伝言ロボット”になったときの徹底ぶりには、圧倒されるものがありました。

なかでも多いパターンが、『この本社から依頼された情報を明日までに資料にまとめて。本社に報告するから』。退社時刻が迫っていても、拒否権はありません。月100時間超の残業で、精神的に病んだ人もいました。課長代理クラスのバリバリなキャリアウーマンが、休職して、そのまま退職してしまったことも。課長代理→役員に直接報告、という仕事が何度もあって、強いプレッシャーがかかっていました。体調を崩して休職して辞めた人は、4~5人知っています。

リストラの際も、経営企画担当の部署では7~8人いた部員が全員退職となったのですが、韓国人部長が、自分以外の全員をリストラしたことを自慢げに話していました。

 伝言ロボットになりきることは、駐在員の出世に直結します。日本に来た人は実際、おおむね戻ってから出世しているんです」

実際、2015年に本体に戻った方常源社長も、本体で副社長に出世した。

上層部は古い日本企業カルチャー、文書も会話も日本語

社内原因で離職率が高い理由の第二が、入社前後のイメージギャップだ。すなわち、世界トップを争うエレクトロニクス企業としての「グローバル企業イメージ」と、現実の古い日本企業カルチャーとのギャップだ。

多くの新入社員は、サムスンを、代表的なグローバル企業の1つと考え、入社試験を受けに来る。サムスンも、学生に対して、そういうコミュニケーションをしている。

「私の同期でも、サムスンの内定を辞退した人が、外資金融に行ったりしてましたから、グローバルな外資系企業という枠で就活に臨んでいる人が多いと思います。そのなかで、一番伸びしろがありそうだからサムスンを選んだ、というパターンも普通にあるでしょう。私も、そう思っていました。英語も日常的に使って。でも実際は違って、日本に駐在に来る人は日本語を話せますから、コミュニケーションも日本語ですし、カルチャーは、日本企業よりもさらに古臭いものでした」

サムスン電子ジャパンは、組織階層でいうと、社員→課長代理(日本人ばかり)→課長(たまに韓国人)→次長(ここから上は韓国人が多くなる)→部長→上級部長→役員クラス、となっている。人数では9割がた日本人で、次長・部長以上に韓国人が多い。

「社内は、文書も会話も、ぜんぶ日本語です。日本語ができる人が本社からやってくる。英語を使う場面は、ほぼないです。日韓以外の国にまたがるグローバル会議だけが、英語で行われます。応募の最低条件がTOEIC720点(文系)、600点(理系)だった時代もありましたが、それだと応募者が少ないため、途中から、500点台でもOKになりました。実際、英語力は社員レベルならほとんど使う場面がありませんから、それで問題ありません」

熱血系の研修、家族主義な洗脳っぽい社歌を毎日合唱

言語に限らず、グローバル企業に入社した、という期待は、すぐに打ち砕かれる。まずは、数週間におよぶ新入社員研修である。日本でのサムスングループは、2012年に事業ごとに分割されたが、研修だけは一緒に行う。

미래의 꿈 펼치자 우리는 한가족, 아 삼성 삼성 (우리의 노래)

訳:将来の夢広げよう、私たちは一つの家族、ああサムスンサムスン…(私たちの歌)


「この『ウリウィ ノレ(私たちの歌)』がサムスンの社歌なのですが

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サムスン電子ジャパンの年表

ある年の住民税の通知書。年間の給与収入水準について事実関係を確認済み。

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横スポされた技術2018/03/03 18:44
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