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出張中に「宴会で裸踊り」「フィリピンパブ」 隊員連続自死で判明した兵庫県警機動隊の退廃した幼児体質

情報提供
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在りし日の木戸大地さん。兵庫県警の警察官になって最初の職場は甲子園署地域課の交番勤務だった。やりがいを感じていたという。しかし機動隊に配属されて以降、悩むようになる。
 滋賀県警の19歳の巡査が巡査部長を射殺した事件が世間を騒がせているが、警察職場における精神衛生状態の劣悪さは滋賀県警だけの問題ではない。兵庫県警機動隊の独身寮で2015年秋、20歳代の若い隊員2人が相次いで自死した。どちらも鬱病に罹患していたとみられる。先に起きた山本翔巡査の事件に続いて、今回は、山本さんの1週間後に自死をはかった木戸大地巡査(享年24)の事件を報告する。出張中にもかかわらず、小隊長引率のもと小隊全員でフィリピンパブを含む飲み屋で頻繁に酒を飲み、宴会では部下に「裸踊り」をさせる。そんな退廃した隊の空気に大地さんは嫌悪感を持っていた。加えて遺書の記載からは、先輩から嫌がらせを受けていた疑いがあった。しかし警察は「パワハラ」を否定。納得できない遺族は国家賠償請求訴訟を起こし、真相究明に立ち上がった。
Digest
  • 警備出張中に「裸踊り」の伝統
  • 裸踊りの伝統
  • 小隊長引率でフィリピンパブ
  • 遺書に書かれた先輩の名前
  • カウンセリングのさなかに職権外の「尋問」
  • 真相解明の鍵は「128人の調書」

警備出張中に「裸踊り」の伝統

「クソッ、胸くそ悪い、腹が立って仕方がない!」

「くそみたいな飲み会ぢゃったわ」

「ほんま胸くそ悪い」

これは、2014年10月13日火曜日の深夜10時半ごろ、兵庫県警機動隊員・木戸大地さん(階級は巡査)が、出張中の長崎から交際相手の女性に送ったラインのメッセージだ。

大地さんはもうこの世にはいない。上のメッセージを書いてからちょうど1年後の2015年10月6日の昼、機動隊の独身寮「雄飛寮」(兵庫県北区芦屋)の自室で首をつって自死をはかった。蘇生治療が試みられたが、9日後に亡くなった。警察学校入校から6年、機動隊に配属されて3年目。24歳の若さだった。この寮の別の部屋では、つい1週間前に後輩隊員の山本翔さんが自死したばかりだった。

〈自殺相次ぐ兵庫県警機動隊の陰険体質――「精神ボロボロ」の新人隊員を怒涛の「指導」攻撃で追い詰める〉

息子が死に追いやられたのは先輩らのパワハラが原因でうつ病になったためだ――大地さんの父・木戸一仁さんら遺族はそう訴え、昨年10月、兵庫県を相手に国賠訴訟を起こした。現在、神戸地裁で審理が続いている。※

※平成30年(ワ)34号、原告代理人・市川守弘弁護士

 パワハラが疑われる理由と裁判の内容については後述するとして、冒頭で触れたラインのメッセージの件に戻りたい。

「胸くそ悪い」という感情的なメッセージが意味するものはいったいなんだったのか。大地さんの死後、周囲の証言や警察の調査からわかったのは以下の事実である。

2014年10月8日、大地さんは所属する機動隊第1中隊第1小隊のメンバーら20人態勢で、長崎に出張した。1週間の仕事が終わり、明日は神戸に引き揚げるという13日の夜、「打ち上げ」と称する宴会が開かれた。長崎県警機動隊の隊員もいっしょだった。その二次会が宿泊先の旅館の大部屋で催された。その場で大地さんは皆の前で「裸踊り」をしたという。「胸くそ悪い」の言葉は、この二次会の直後に発せられた。

「胸くそ悪い」という表現をふつうに解釈すれば、裸踊りや飲み会がよほど嫌だったということだろう。本人の意思に反して「芸」をさせられたのではないか、遺族は警察に調査を求めた。

はたして、兵庫県警監察官室が遺族のもとを訪ねて調査結果を報告したのは、大地さんの自死から2ヶ月後が過ぎた2015年12月だった。

「木戸(大地)巡査が裸踊りをした事実はあったが、長崎県警機動隊との派遣先での親睦の中で、その場を盛り上げようとするための行為であり、一発芸の強要等はなかった」

それが報告内容だった。裸踊りをやるよう強制した事実はなく、あくまで、本人が自主的にやった、嫌がっている様子はなかった。よって問題為はないというのだ。それでは「胸くそ悪い」をどう理解すればいいのか、予想外の結論に遺族は驚いた。

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交番勤務時代の成績は悪くなかった。本部長から褒賞されたこともある。

裸踊りの伝統

だいたい宴会での「裸踊り」など、民間の会社ならあり得ない話ではないか――

自営業者として多くの企業や官公庁とつきあってきた実感から、一仁さんは率直にそう思った。忘年会や新年会でもない。出張中の警察官である。「一般人」の常識感覚なら宴会を開くこと自体が問題だ。それが、裸踊りまで容認する職場というのが信じられなかった。

「裸踊りなど・・・たとえ若い隊員がやろうとしても上司がやめさせるのではないか。制止するんじゃないのか」

報告にきた幹部警察官に、一仁さんは疑問をぶつけた。返ってきた言葉に、また愕然とする。

「裸踊りっていうのは、

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兵庫県を相手取った国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論後の記者会見で、つらい心境を語る父・木戸一仁さん(2018年3月22日、神戸地裁)。

寮の部屋に残された大地さんのメモ。先輩隊員を名指しで非難しているようにみえる。

先輩から「カンニング」を認めるよう迫られて困惑する様子が記録された同僚とのラインのやり取り。「パワハラ」という言葉も使われている。

神戸地裁の法廷に向かう父・木戸一仁さんと代理人の市川守弘弁護士(2018年3月22日、神戸地裁)。

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判決「100万円だけ2022/06/22 21:38会員
広島っこ2021/07/09 20:44
司法の独立は建て前2018/10/21 05:17
司法の独立は建て前2018/10/21 05:15
久しぶりの復活通読者2018/10/20 22:03
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