テクノロジー進化と労働市場変化――10年後に食える仕事 食えない仕事 テクノロジー編
令和元年版高齢社会白書より。出典:2015年までは総務省「国勢調査」2018年は総務省「人口推計」、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(出生中位・死亡中位推計) |
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- 人工知能(AI)が人間を超える領域が拡大
- ブロックチェーン技術が変える仕事の形
- 「RPA」等々による継続的なIT化
- 労働適性人口が減少、高齢化率は40年後まで世界一
- 「失われた20年」主要先進国で断トツの賃金停滞
- 先進各国は労働時間短縮しながら給料アップ
- テクノロジー活用=労働生産性向上≒賃金アップ
- 労働生産性G7最下位
1.仕事を変える新技術のブレークスルー
人工知能(AI)が人間を超える領域が拡大
長年、研究されてきた人工知能(AI)がこの5年ほどで1つのブレークスルーを遂げ、「ディープラーニング」(深層学習)によって、より複雑な計算ができるようになった。その成果が、2016年の囲碁における『AlphaGo』の人間王者に対する勝利であり、将棋でも『PONANZA』が人間の王者(山崎隆之・八段、佐藤天彦・名人)に連勝を続け、既に勝負がついている。
「ルールと変数が限定された枠の中で、最強の答えを見つける」という作業は、AIが人間を超えた。実際には「確率と統計」(高校で習う数学)を複雑化したものに過ぎないが、その解析プロセスはしばしば『黒魔術』と呼ばれ、なぜその答えが正しいのか、というロジックが人間の理解力を超えてブラックボックス化している。そのため、あたかも知能を持っているかのように見え始めた(実際には、ただのアルゴリズムである)。
『AlphaGo』が人間に勝った際の打ち手は、人類が長い年月をかけて蓄積してきたノウハウの「定石」とは異なるものがしばしば見られた、と話題になった。AIは、人間が持つ「偏見」を排除し、最適解を導き出す。よって、「理由は人間には理解不能だが、答えは人間よりも正しいものを叩き出す」――これがAIの重要な特徴だ。もはや、機械と人間が競合するゲームにおいては、人間が挑んでも無駄骨となるだけとなった。
「ルールと変数(変動要素)が完全に限定されている枠の中」での勝負は、人間はAIに太刀打ちできない。たとえば「暗算」というゲームにおいて、人間が電卓と計算スピードを争っても勝てないのと同様、囲碁・将棋のような、より複雑な対戦においても、AIは人間に勝つ。
たとえば胃の健診で「CTやMRIの画像1000枚の中から1ミリ未満の悪性腫瘍(がん)が写っている画像を正確に抽出せよ」といったゲームは、人間よりもAIのほうが、正確さとスピードに勝ることがはっきりしてきた(AIは電源さえあれば疲れを知らないため莫大な量もこなせる)。
これは、過去の膨大な枚数の検査画像を予め読み込むことで、AIがディープラーニング(深層学習)によって悪性腫瘍の「特徴量」を自動で抽出し、学べるからだ。人間は1日100枚ずつ見ても10年で36万5千枚しか学べないが、AIにその限界はなく、もっと高速でより細かい差異やレアなケースまで昼夜を問わず学習するため、人間よりも正確に診断できるようになる。
一方、株価・為替・不動産価格の動きの未来予測(投資)など、「変数が完全に限定されている」とは到底いえないゲームにおいては、AIの成果は芳しくない。世界中の森羅万象が変数となって影響し、なかでもBrexitやトランプ大統領当選のような、過去に例のない国民投票や選挙が最大の変数となりうる株式相場や為替・不動産市場は、囲碁・将棋とは比較にならない変数の組合せで結果が決まるため、いわゆる「組合せ爆発」(指数的爆発)を起こす。よって、証券アナリストやファンドマネージャーらがAIにまるごと代替されて失業することはない。
この、「AIがどの分野で人間を超えるのか」を理解することは、職業の未来を考えるうえで極めて重要である。もしAIによる銘柄選定がウォーレン・バフェットのパフォーマンスを超えたら、ファンドマネージャーという職業は完全にAIに代替され、人間の仕事ではなくなるが、それは起こらない。一方、画像診断を中核業務とする放射線科医の仕事は、その大半がAIに代替され、人間の仕事ではなくなる
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過去20年の年間賃金推移(OECDデータより)
2018年までの過去20年間の年間賃金推移(OECDデータより)。※為替レート換算ではなく購買力平価換算となっている
過去20年の年間労働時間推移(OECDデータより)
それぞれの取り分
時間あたり労働生産性の各国比較(日本生産性本部)
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2019年12月時点での最新2018年データに各種情報をアップデートし、書籍版に合わせた(2020年1月10日、本文修正済)。
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