ジョッキ、ビン、缶…中身はぜ~んぶ同じ 生ビール=新鮮の嘘
「生ビール」と「瓶ビール」。瓶ビールだって「生ビール」なのだが…(都内のそば屋) |
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- 酵母も旨みも除去されるのに“生”
- 企業のイメージ戦略にのせられないように
- 参考:醸造法で3タイプに分かれるビール
◇生ビールだからおいしい?
二人のジャーナリストと一緒に居酒屋で暑気払い。生ビールを注文したら、キンキンに冷えたジョッキ入りビールが出てきた。銘柄はサッポロ。
--この生ビールと、ビンや缶の生ビールって、一緒だって知ってた?
キンキンに冷えたサッポロビール
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「知らないよ。同じものなの?」
「へーっ。一緒なの?そうだったの?」
2人とも驚いていた。各専門分野では、いずれも第一人者である。
以前、居酒屋で注文のとき、「ジョッキ生とビンビールの生って、どう違うんですか?」と聞いたことがある。店員は「生は、ビンと違って、新鮮だから」と言っていた。「やっぱり生ビールだからおいしい」「泡立ちがいいね」とビールジョッキを傾けながら語る人も多い。ビアガーデンでもそんな声が聞こえてきそうだ。
わたしも、缶・ビンの生ビールとジョッキで出てくる生ビールは、違うものだと思っていた。だが実は、ビアガーデンや居酒屋でジョッキで出てくる生ビール、家庭用2~3L入り生ビール、缶・ビン入りの生ビールの中身は、まったく同じものだ。何が違うかといえば、それぞれを異なる容器に詰めた、というだけ。同じ貯蔵タンクから生産ラインが樽詰めになるか、ビンや缶入り用になるかの違いに過ぎない。
2年ほど前、単行本『この酒が飲みたい』(コモンズ)の編集を進める過程でそれを知ったとき、わたしも驚いた。
◇「生ビール」は日本独自の概念現在、国産ビール大手4社は、国産ビールの“生”とは「火入れ殺菌(加熱処理)しないもの」としている。
話は40年前にさかのぼる。サントリーが1967年に「純生」(ビン詰め)を発売したところ、爆発的な人気となり、シェアがアップした。NASAの技術による「ミクロフィルター」を導入し、熱処理をしないで酵母を取り除くことに成功したというのがウリだった。このサントリーの純生がきっかけとなり、業界で「生」論争が勃発した。
アサヒビールによれば、翌1968年に発売した「アサヒビール本生」は、「本当の生です。酵母が生きています。」との触れ込みで、工場周辺にだけ瓶詰めで出荷、冷蔵保存必須で、賞味期限は2週間だったという。生きた酵母こそ「生」、という主張だ。
「酵母を取り除いたビールは生ではない」と競合他社。「熱処理しないビールが生だ」とサントリー。
「生ビール」という日本語の意味
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1979年、公正取引委員会が、「生ビール、ドラフトビール=熱処理をしないビール」と公示し、サントリーの主張が認められた。それ以後、ミニ樽、生樽、ビア樽に入った、いかにも新鮮そうな“生”ビールが市場に登場した(→公正競争規約)。
それが、「生ビール=新鮮」といったイメージにすり替わり、一気に広まっていった。
*参考:『この酒が飲みたい愛酒家のための酔い方読本』(コモンズ)酵母も旨みも除去されるのに“生”
公取が「火入れしないものは全部、生」とお墨付きを与えたことで、日本のビールは、ほとんど“生”一色となった。現在、火入れ商品は、キリンビールで「クラシックラガー」のみ、アサヒビールで「アサヒスタウト」のみ、サッポロビールで「サッポロラガービール」のみ。サントリーはすべて生。
かつて酵母を除去したビールは生ではない、と主張していた各社は、今では、除菌高性能フィルターで酵母を取り除いた “生”ビールなくしては成り立たなくなった。
静岡市清水にある良質酒専門の「リバティ」店主、長澤一廣さんが、酵母の働きについて解説する(長澤さんは世界標準規格「ビア・クォリティ検定士」の資格を持つ日本初の酒屋店主)。「さまざまな味を生み出す働きをするのが酵母です。この生み出す味の中には“雑味”も含まれます。高性能フィルターで濾過する日本の“生”ビールは、真夏でも常温管理で腐らないように、その素となる酵母菌を除去します。そのとき、同時に旨みまで除去してしまうので、味わいの浅い、水っぽいものになります」
つまり、工業製品のごとく物流・保存するうえで、管理しやすく、コスト面で有利だが、その裏で、ビール本来の旨みが犠牲になった形である。
「ビールとしては、腑抜け商品になっているのです。高性能フィルターまで使って除去するのは、原料の悪さを隠したい、といった面もある。キンキンで冷たくして喉ごしばかりを強調する理由は、ここにあると思います。欧米でもフィルターを使っているビールもありますが、旨みまで除去してしまうほどに強くは、濾過しません。ベルギービールのように、あとから酵母を追加するものもあります」
企業のイメージ戦略にのせられないように
売れるから「生」をうたいたい、しかし、酵母があると常温輸送、長期保存ができないのでコストがかさむ、そこで高性能フィルターで酵母を除去し、品質が均一な工業製品のごとく仕立てた。各社とも常温で9ヶ月間も保存が可能だ。これが日本の、実はフレッシュではない“生”ビールの実態
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キリンの「一番搾り無濾過<生>」CMのひとコマ。無濾過の強調がかつての“生”論争を想起させる
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読者コメント
ビンと缶はビールと炭酸ガスが容器内で同居していますが、樽のジョッキはビール樽とガスボンベは別なので、ビンや缶と中身は微妙に違うのではないでしょうか。樽でも、ガスボンベをつないで三日すると味が落ちるといわれているので、うちでは一番小さい業務用10リッター樽にしています。
ギ○ス社のパーフェクトパイントでしょう。そこまで行かなくても、通常はサーバーとジョッキを洗浄と冷却するだけでかなりおいしさを保つ事が出来ます。味が違うのは流通と保管によるところが大きいですね。
飲食店に勤めています。ビアサーバーがいんちきと言われてしまうと少々困るのですが(笑)マトモな店ならサーバーの管理、温度管理、注ぎ方によって味を変えるとかそれなりに技術がいります。ただし、水通しといってサーバーをろくに掃除していない店や、中には水を混ぜている店もありますが・・・。
缶・瓶・樽で味が違うのは、問屋での保管やトラック輸送での劣化の差です。冷蔵保存などしていません。直射日光ガンガンです。その中で樽が劣化の速度が一番遅いのです。ビア・サーバーなんて、最初ビールを入れて、後から機械で無理やり作った泡を乗っけるんですよ。インチキです。
地ビールも熟成しているものがある... はず。
某メーカーの工場見学では、「3ヶ月熟成してから」出荷します。出来立ても旨くは無いのよ。けど、オリジナルの地ビールは美味しいよね?要は発酵のピークをどこに持ってくるかで旨さは決まるのさ。
開封したビールを朝まで置くと酸っぱくなるだろ?アルコール発酵の行き着く先は酢なんだよ。菌体除去や火入れはその為にあるのに、材料の質と勘違いしているのでは?あと、菌によってはフロックやオリ等が出るから、それを取り除く意味もあるよ。樽は回転率の良い店で使われるのが普通。ビンや缶よりもはけやすいから新鮮なんだよ。
とどのつまり、ものは一緒ですが注ぎ方、鮮度が重要なんですよ。缶やビンはその点劣りますねぇ。不満のある方は酒屋でビンとジョッキを比べてみてください。一目瞭然ですね。
最初に習うのが、缶ビールの美味しい注ぎ方。プロが注ぐと(温度管理も完璧)、全然味が違う。ホント、ビアガーデンの味(誉めすぎ?)。
ビアガーデンは、缶ビールをジョッキにあけているのではなく、ビアサーバつかってます。だから、味が違う。
作ってます。確かに「火入れしないと生」って感覚だなぁ。
注ぎ方一つで、味は別物になります。(ついでに言うと、キンキンに冷やしすぎもダメ。)缶ビールを家で飲むより、ビアガーデンで飲んだ方が圧倒的に美味しいですよ。もし同じであれば、その人はプロ!
味に関して言うと、一ヶ月も持たないんじゃないかな?酵素とかは生きてる(変性していない)から。
公正取引委員会こそが、諸悪の根源だね。
ビールは保存方法、泡の状態でも変わる。あと、文章中の店員の話も一理あるのではないか?何時製造したかわからないビン、缶を飲むより(ほんとは表示あるよね)回転のいいお店の樽詰めを飲んだほうが新鮮の可能性ありでは・・・。
ビール企業の批判をするなら、ビールのプロモーションよりも、ちょっと昔の売れ残りビールの処理方法を批判する方が先なのでは。社会問題としてはこちらのほうが断然問題が大きい。もちろん環境報告書にはそんなことは載っていませんし、現在では環境問題に抵触しないような処理にかわっているはずなので、記事にしたところで遅いでしょうけど。
すなわち、売れてないビールはいつまでも店に残るので鮮度が下がりまずくなります。また、日本のビールにのどごしばかりを強調する傾向が最近あるのは、近年の温暖化現象にあり、そのようなテイストのビールが受けるからです。反面、明確なすみわけをするために、チルドビールなどを付加価値商品として提供するわけです。
やはりこの記者の方の投稿には疑問が残る。中身が全部同じなら、味は皆同じだと思いますか?生ビールの鮮度は何で決まるかご存知ですか?同じ銘柄でもビンと缶と樽生では皆味が違います。また、ビールの鮮度は、流通段階での保存方法と商品回転率(特に最終小売段階)で決まります。
だからね、ラガー主体の頃は違ってたんだよ。50以上の人は、分かりますよね、この意味。
おっしゃるとおり中身は全部同じです。でも、ビールというものは、鮮度、グラス、温度、注ぎ方で非常に風味が変わります。どの味がよいかは嗜好の問題です。嗜好品ですから。 生ビール=新鮮というのは、従来より感覚によるところであり、嘘でも本当でもないのです。
こんな事を言うと大変なバッシングに会いそうだけど、ビールだけじゃないかな、苦くて旨いという飲み物は。本場ドイツには甘いビールだってあるのに、何で日本の人は苦いビールこそ、これぞ本物だって言うのか解りません。知らないのは半分罪な気がします。
ビールは、所詮嗜好品。あまり栄養だとかにこだわるよりも、自分の好きな物を適量飲みましょう。過ぎたるは猶及ばざるが如し。飲み過ぎは厳禁ですよ。
私はビールが苦手なので味の違いに良くも悪くも敏感。仕事でドイツに行くが、ほとんどの町にオリジナル生酵母ビールが数え切れないほどある。ほんとに飲みやすい。どれも甘みを感じる。
じっくり飲むならチルドも美味いけど、風呂上りとかにとりあえず乾いた喉を潤すなら、さっぱりとした普通の生の方がいいな~。製法は、うんちく話のネタとしては面白いかもしれないけど、要は実際に飲んでみてどうかってことでしょ?私は、チルドも生も、発泡酒だってそれぞれ好きだな~。
生ビールの定義、常識かと思ってたら、知らない人がけっこう多いのが意外でした。ただ、居酒屋のジョッキ生は、サーバー使ってるから泡が細かいし、缶やビンとは流通が違うから鮮度もいい。元は同じでも、飲むときには差があると思います。
私は酵母のオリが沈殿しているような地ビールの強い香りが好きなのですが、その手のビールらしいビールって苦手というオヤジが多くて困りますね。キリンだエビスだといっても結局大手の薄いビールの味に慣らされてしまってるんですね。飲むパンというところの一番の栄養成分の酵母が抜かれててはもったいない。
明らかに記事を最後まで読まずにトンチンカンなコメントをするおばかさんは相手にしておりません。会員制サイトなので、会員に迷惑な行為は慎んでください。
キリンのチルドビールのこと、今回の記事ですすめていますよ。記事を全部読まないで、チルドビールのことをコメントしているから、削除されたんですよ。
チルドビールについて発言しただけなのに、以前批判の書き込みをした事で発言削除か。ほんとにどうしようもない言論封殺独裁サイトだな。こんなサイト、こっちからお断り。2度と来ないからどうぞご安心を。
大人向けのレストランの男性社員の方が、「色々飲んだけど、ビールはハイネケンが一番うまい。」と一昔前に言われていました。大量生産の日本車とドイツ製高級車との違いに似たものがあるのかもしれませんね。ちょっとガッカリ。。
>高性能フィルターまで使って除去するのは、原料の悪さを隠したい、といった面もある。キンキンで冷たくして喉ごしばかりを強調する理由は、ここにあると思います。はビールじゃなくて、発泡酒とスーパー○ライじゃないの?
記事内容にちょっと疑問。少なくとも、樽ものは炭酸を足すため、良心的なところなら季節・気温で炭酸量の調節をします。その点で、瓶や缶とまったく同じとはいえないのでは。もっとも、後から足した炭酸がよい結果を生むかどうかは、また別問題ですが。
ホントですか? ワシは生を飲むと苦味が少なくて飲み易いんだけど。先入観なのだろうか?「汁」は同じでも注ぎ方が違うのと炭酸ガスを樽生の場合はいれているのではありませんか。泡の粒の大きさが違うと思っていますが、これも間違いでしょうか?
菌体除去用のフィルターであれば、旨味成分まではカットされない筈だが。ただ、酵素は除去できないから、味わいは経時的に変わるでしょうけどね。
私は生が好きではありません。のどごしのあの刺激が嘘くさくて。そういえば最近、バドやハイネケンを見なくなったなぁ。
注ぎ方によって味に雲泥の差が出るビール。はたまた、酵母の処理で本物の味が失われている日本のビール。薀蓄をかたむけ、こだわって味わう価値がある。
記者からの追加情報
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