トヨタ創業家の宿命
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5月上旬発売予定。60ページも増補し約300ページに。トヨタ連載企画の書籍化です。 |
講談社とか広告収入が多い出版社になると、この表紙もダメなんでしょうね。「トヨタの闇がプリウスというのはいかがなものか」みたいな。で、現場は出したくても広告担当の取締役が却下するのが一般的な出版社。
ちくま書房は雑誌出してないから、広告収入について(つまりトヨタについて)考えなくてよい。そこがビジネスモデルとしてうちと相性がいい。
私的には、プリウスが真っ二つに割れてるくらいの絵でもよかったんですが。
で、本題。トヨタは、2006年、2007年がピークで、もう二度とその時代に戻ることはないでしょう。1990年の日本の株価と同じ。どちらも、バブルですから。トヨタのほうは「サブプライム北米バブル」。
バブル崩壊と構造変化が同時進行しているあたりも、日本経済に似ている。やっぱりトヨタは、いろんな意味で戦後日本の象徴だ。だから、トヨタが分かれば、日本が分かる。
自動車業界の構造変化、つまりベンチャーの参入が容易になる電気自動車時代になると、トヨタの強みは発揮できない。ピラミッド型の閉鎖的で強力な組織力はこれまでは強みだったが、それが弱みに転じる。
硬直的で環境変化に弱い恐竜みたいな組織だから、急激な環境変化に対してIBMでガースナーが90年代半ばにやったような(全世界で人員を4割以上削減)体質転換が求められるわけだが、トヨタのカルト宗教みたいなカルチャーでは、それは絶対できない。
なにしろ中核メンバーは16歳からトヨタの高校で学んでる歴代労組委員長とその候補者たちなのだ。いまさら改宗しろと言っても無理。改宗するくらいなら自爆テロを選ぶでしょう。これまでも、過労死するまで働くのが当り前だった人たちですから。
本書では、海外勤務を経験した元社員が興味深い話をしてくれた。
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トヨタ教は、あんまり幸せな宗教ではないようだ。
まだ信仰が甘い若手社員はカラ手形つかまされる可能性が高いので、よく考えたほうがいい。マーケットバリューがあるうちに、さっさと脱出するのも手だ。
無理やりな新興国への人事異動(嫌なら辞めろ)、希望退職募集(50代が逃げ切る)、人事制度変更(若い人は昇進しなくなる)、給与水準引き下げ(ボーナスカットで全員水準が下がる)、分社化(やっぱり工場かな)、アウトソース(経理とか間接部門)、採用凍結。これらに、数年以内には着手せざるを得ない、と見ている。
血を流さない改革なんて無理なので、それは教祖様たる、創業家の仕事になる。つまり章男社長のまま、やり切ることになり、苦しみもがく時期が続くだろう。それが創業家の宿命である。
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うへぇ. 日本の闇そのものじゃないですか...
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