”誤記の一致”まで偶然?――あり得ない理由で有名教授の盗用を不問に付した中京大と武蔵大の絶望的コンプライアンス 「誠実調査義務違反」で提訴
学生が同じことをやれば厳しく処分されるのに教授なら許される――そんな矛盾が高等教育の現場で横行している。他人(筆者=三宅)の文章を丸写しにするという露骨な研究不正行為(盗用)を繰り返し働いた大内裕和・武蔵大学教授は、発覚から4年近くになる現在に至るまでいっさいの非を認めず、何ごともなかったかのように教壇に立っている。研究者の風上にも置けない破廉恥が通用する原因をたどると、不正をただすべき大学の責任放棄に行き着く。中京大学は予備調査をやっただけで「不正の疑惑はない」「本調査不要」と告発を門前払い。転職先の武蔵大学は、一応本調査をやったものの、文章表現の類似は偶然の一致である、誤記の一致も偶然の結果である、と言わんばかりの非科学的な理由をこじつけて免罪した。研究不正の防止や解決は自浄作用に委ねるという制度を悪用した大学ぐるみの不正隠蔽に異を唱えるべく、筆者は武蔵大学と中京大学を相手どった損害賠償請求訴訟を起こした。
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※対武蔵大・中京大「研究不正”誠実調査義務違反”訴訟」の訴状はPDFダウンロード可
提訴
3月15日、私は中京大学と武蔵大学を相手どり、それぞれ10万円の損害賠償を求める民事訴訟を東京地裁に起こした。(令和6年ワ6685号、民事5部)
大内裕和・武蔵大学教授(前中京大学教授。専門は教育制度論、教育社会学)。 |
大内裕和・武蔵大学教授(2022年3月まで中京大学教授)が私の著作を盗用した問題について、中京大学と武蔵大学は不十分な調査しか行わず、「盗用ではない」と断定、不正を見逃した。この調査のあり方が、常識的にみて、また、研究不正防止目的で作成された文部科学省のガイドラインに照らしてあきらかに誤りであり、盗用の被害者として多大な精神的苦痛を受けたという訴えである。
左は、大内裕和中京大教授(当時)が2017年2月に刊行した著書「奨学金が日本を滅ぼす」’(朝日新書=出庫停止中)。右は盗用元の「日本の奨学金はこれでいいのか」2章(三宅勝久著、2013年刊行。大内氏らとの共著) |
大内教授の盗用行為の悪質さについてはすでに「卒業大学不明の教育専門家・大内裕和中京大教授の科研費研究に「盗用」多数、被害者が提訴」で述べた。一見して盗用とわかる露骨な丸写しで、しかも多数回に及ぶ。悪質きわまりない。
★「選択」記事からの盗用がみられる大内裕和氏の記事・著作一覧
前回の記事は、著作権侵害訴訟を起こした当時(2021年)の状況を報告したものだった。
本稿では、この裁判の結果とその後の経過、そして、今回両大学を訴えることになった事情について報告したい。
著作権侵害訴訟
大内氏の盗用行為が私の著作権を侵害しているとして損害賠償請求訴訟を起こしたのは2021年4月のことだ。だれが見てもわかる明白な丸写しであるから絶対勝てる――そう考えて弁護士に委任せず、本人訴訟で裁判を起こした。著作権侵害訴訟の賠償金は概して低い。弁護士費用を払うと、勝ったとしても費用倒れになる、との考えからだ。
結論から先に言えば、この著作権侵害を争った裁判は負けた(地裁・高裁・最高裁の全判決文を末尾にPDFで添付)。裁判長いわく、
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左は大内教授が「日本の奨学金はこれでいいのか」1章(2013年刊行)に書いた記述。2012年4月に発行された雑誌「選択」の記事(右。三宅勝久著)とほとんど同じ部分がある。
「本調査不要」として告発を門前払いした中京大学(名古屋市昭和区)。
文科省ガイドラインは「捏造」「改ざん」「盗用」を特定不正行為と定義づけ、重大な研究不正と位置づけている。
武蔵大学(東京都練馬区)。
告発1
告発2
告発3(大内氏の記述)
告発3(三宅記述)
盗用がみられる大内氏の著書「奨学金が日本を滅ぼす」(朝日新聞出版、2017年。出庫停止中)。捏造が疑われる記述もある。
著作権侵害訴訟(東京地裁・令和3年ワ10987)の中で、「選択」記事は読んでいないとする釈明が記載された大内氏の準備書面(2021年10月11日付)。
「奨学金が日本を滅ぼす」の盗用を指摘したことに対して大内氏は、筆者(三宅)より前に発表した文章等があるとして盗用剽窃を否定する反論をした。ところが、それらの文章等にもまた別の盗用が見つかった(大内氏から筆者に宛てた2020年9月14日付回答書より)
予備調査を経て本調査を実施した武蔵大学だったが…。
武蔵大学は本調査終了後、盗用や捏造を認定しなかった理由の説明を拒み、報告書の開示要求にも応じなかった。やむなく筆者は文科省に情報公開請求をして報告書を入手した。
武蔵大学の調査報告書。誤記の一致について、日本学生支援機構に確認して誤ったのが原因(そして三宅の誤記と偶然一致した)――とする不自然な釈明を大内氏が調査委員会に対して行ったことが読み取れる。
中京大学のキャンパスに掲げられたポスター。「真を、ゆく。」との美辞とは裏腹に不正追及にはすこぶる消極的だ。
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