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森永乳業 若手社員が語る「配属ガチャ」からの修正不能な〝衰退事業部〟のお仕事

情報提供
掲載用:森永の社章
JTCは「社章」が健在。森永はエンゼルのイメージが強いが、乳業のほうにエンゼルマークはつかない。

JTCの労使関係は、終身雇用と引き換えに社員のキャリア(仕事人生)を会社側がコントロールする――という暗黙の前提で成り立っている。『ビヒダスヨーグルト』『ピノ』をはじめ身近なスーパー・コンビニで製品が定着している森永乳業も、創立100年余りの、日本を代表するJTCの1社。「配属ガチャでハズれました。修正できる見通しも、制度もありません。このままでは自分のキャリアが危ういと考えています。女性にはお勧めできる会社だと思います」――。そう話す若手社員(20代)に、若くしてキャリアの「どん詰まり」を感じさせてしまうJTC人事の実情を聞いた。

Digest
  • 一括採用からの配属ガチャ
  • 社員紹介ページがMAX
  • 自律的なキャリア形成が難しい会社
  • 「年3%ずつ下がる」ジリ貧事業部の仕事内容
  • トップ昇格組は30代のうちに1千万円
  • 30歳まで月5万円の住宅補助
  • 7段階評価の目標管理制度
  • 17:30に帰れる
  • 「女性の融通が通る会社」2030年度目標値を突然倍増!
  • 360度評価ナシ

一括採用からの配属ガチャ

典型的なJTC(Japanese Traditional Company)は職種別採用を行わず、本人の希望は無視して、会社が勝手に適性を見極め、配属先を決める。それが合っているか間違っているかは、後になってみないと分からない。結果オーライになるパターンもあるが、人生は1回しかないので、失敗だった場合に会社は責任をとれない。よって、社員側からみたら納得のいかない仕組みである。自分で選んだキャリアならば、仮に将来的に失敗だったと分かっても自己責任であり、納得性は高い。

❏「製菓」と「乳業」の関係写真
 森永 太一郎(右記)が創業した森永製菓が、ヒット商品となったキャラメルの原材料を安定調達するため1917年に設立したのが「日本煉乳」という会社で、これが後の森永乳業である。両社はいったん合併した後、1949年に分離し、今に至る。資本関係は薄まり、現在では製菓が乳業の株を2.1%保有(2023年3月末)、逆に乳業が製菓の株を1.4%保有(2023年9月末)するだけ。社員の人材交流もなく、〝生き別れた兄弟〟は、中身が完全に別モノの、名ばかり兄弟となった。製菓が売上2133億円、乳業が5470億円(ともに2024年3月期)と、弟分である乳業のほうが図体は大きく、時価総額でも乳業のほうが上回る。

森永乳業は、「会社に丸ごとお任せ」タイプの会社で、公式サイトの「育成制度」を見ても、上から目線で充実した教育を施してやる、というパターナリズムの姿勢を感じさせる。個人の意向など気にしている気配がない。

そのほうがラクでいい、全部お任せして、自分の頭では考えたくない、自分を会社の部品の1つとしていいように使ってくれ――という完全受け身なタイプにとっては、とてもよい会社といえる一方、雪印食品のように、事件(牛肉偽装事件)を起こして廃業に追い込まれると、一蓮托生で自分の社内キャリアも終了し、外部労働市場に突然、放り出されるリスクもある。

チルドカップコーヒー&紅茶はシェア1位、ヨーグルトが2位。
キラー商品に乏しく明治やメグミルクと代替可能な品が多い。

森永乳業の主力製品は、一般のイメージ同様、国内の一般消費者向け事業が中心で、「ヨーグルト」「牛乳」「ビバレッジ」「アイス」で、それぞれが400~500億円の売上規模を誇る(右記参照)。これらとは別に、外食産業向けアイスクリーム等のBtoB(900億円規模)と、ドイツや米国での海外事業(600億円規模)を持つ。

セグメント売上
主力製品セグメント別売上(2024年3月期)

現在の大貫陽一社長は、上智大・法学部卒の営業畑出身。

それぞれの部門に、文系職の大半を占める営業職がいるが、「市乳(宅配など)」事業は、そもそも計画段階からマイナス、2024年3月期実績は売上高マイナス3%となった、主力事業のなかで唯一のジリ貧部門である。

市乳は、乳製品を個人宅に宅配する部門で、生協はじめネットスーパー・コンビニなど、生鮮宅配市場がレッドオーシャン化するなか、「乳製品だけの宅配(しかも価格は割高)」は競争力が弱く、ジリ貧。大貫社長も、市乳部門の未来図を社員に示せていない。

森永乳業はここ5年ほど、大卒以上で計50~90人を採用しており、これが「N社員」コース(全国転勤アリの総合職)である。別途、高専・短大・専門学校卒向けの「A社員」コース(地域型総合職)があり、こちらは工場がある地元の高専卒者が対象で、工場(北海道~神戸まで計11か所)に配属となって生産技術職に就き、転勤はない。

N社員コースは、5:5~4:6で技術系が多めだ。事務系は職種別ではなく一括採用で、入社後に何をやらされるのかは、内定時に全くわからない(マーケ職を数名だけ切り分けて募集しているが、人数実績を開示できていない=職種別採用はゼロと考えてよい)。世界でも稀な、もはやJTC名物となっている「配属ガチャ」で配属先の部署と職種が決まる。

社員紹介ページがMAX

「私の同期は、事務系と技術系でおよそ半々くらいでしたが、私を含め事務系同期のうち、約8割が営業職への配属でした。営業職の半数が『カスタマー』で一番多く、次がBtoBの『食品素材』。一番少ないのが『市乳』です」(若手社員、以下同)

残りの文系2割は、

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14人の社員紹介でも「市乳営業」は存在から消されている。黄色枠内が文系職。うち、赤枠内が営業職。

森永乳業の営業現場組織

森永乳業のキャリアパスと報酬水準

給与&賞与明細(20代半ば)。「若年者手当」5万円が30歳まで出るほか、「N社員手当」1.1万円がつく。残業代は数万円が普通。

森永乳業の目標管理・評価制度

突然、倍増を発表した管理職の女性比率(2024年3月)

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