電磁波&鉄塔の街・門真 「白血病死者18人調査」から10年、今も変わらぬ風景
(写真上)生駒山系から古川橋変電所に続く高圧送電線 (写真下)左手が古川橋変電所、右手の鉄塔の下にある茶色の建物が保育園 |
とんがり屋根したかわいらしい保育園の入り口では、ママたちが手を振りながら子どもの帰りを待っている。
「ともく~ん、おむかえですよ?!」
保育士の声と同時に、ピンクのリュックを背負った男の子が走り出し、ママの腕のなかに飛び込んだ。ほのぼのとした幸せいっぱいの日常。
「写真なんか撮らんでください。うちはそれで30年間、なが~いこと嫌なめにあってきたんですわ。やっと長いことかかって沈静化したかと思ったのに、またやられるとたまらんですよ」
平静を装う園長だが、口元はあきらかに震えている。
ここは、大阪・門真市にある保育園。
手に持った電磁波測定器は『36.1mG(ミリガウス)』を指す。「平均4mG以上の電磁波で小児白血病が2倍以上になる」といわれているのに、だ。
◇大量の電気を食い続けて生きている
電磁波とは、波を描いて進む電磁気の流れのことで、電流や電波が流れるところには必ず発生する。磁石のプラスとマイナスと同じように電磁波も電気と磁気の両方の性質をもっているが、電気が発生する空間を電場(電界)、磁気が発生する空間を磁場(磁界)。電場は体の表面に電流を走らせるだけだが、磁場は体内に入り込み細胞レベルまで到達するといわれ、このことが人体に影響を与えると問題視されている。
電磁波の問題が全国のお茶の間で話題になったのはおよそ10年前。
ワイドショーや週刊誌で「送電線や携帯電話、家電製品などが発する電磁波が、がんや白血病を引き起こす」「蛍光灯をかざすだけで明かりがつく」と大々的に騒いでいたのに、今ではそんな話題も目にしなくなった。
私の部屋を見まわすと、家電製品はもちろんのこと、携帯電話、デジタルカメラにデジタルビデオカメラ、パソコンに周辺機器。省エネを心がけているつもりだが、大量の電気を食い続け、生きているのが現状だ。
いったい、電磁波の影響はどうなったのか?
何らかの対策ですでに解決したのか?
それとも電磁波の影響はなかったのか?
そんな疑問を胸に、電磁波の街とも呼ばれる大阪府門真市にやってきた。
◇墓標のように並ぶ巨大な鉄塔
門真市の末広町と古川町にある古川橋変電所は関西各地に電力を供給するため、奈良の生駒山系や、遠くは岐阜の木曽川系水力発電所からの高圧電流が送電線を伝って送られてくる。
高台にのぼると、住宅やマンションの上を15万4000ボルト、または7万7000ボルトの高圧送電線が走り、巨大な鉄塔が墓標のように並ぶ様子を一望できる。
この鉄塔の足元や送電線の真下にどれだけの人びとが暮らしているのかと想像すると信じ難い光景だ。
電磁波の影響もさながら、見た目もおぞましく、さらには地震などの災害で鉄塔が倒壊したらと考えると危険きわまりない状況だ。
門真市に来る事前に、私は電磁波測定器を使って身の回りにある電磁波の強さを測っていた。
電磁波の磁場を測るには一般的にmG(ミリガウス)という単位を使うが、パソコンのモニターが1.8mG、電源プラグが0.5mG、部屋の中央ではわずかに0.4mGで安全値といわれる2~3mGの範囲内だ。
簡易保育所の門真学園で『36.1mG』を測定したのは、保育所が古川橋変電所に隣接したうえ、周辺の鉄塔や高圧送電線群に取り囲まれるように位置しているからだ。
前出の「蛍光灯をかざすだけで明かりがつく」とメディアで取りあげられていたのは、実はこの場所での出来事である。
◇元自治会長が行った死亡聞き取り調査
私は1997年3月21日号『週刊金曜日』の誌面で告発されたひとつの記事をバッグに入れていた。
◇4mG以上の電磁波で小児白血病が2倍以上
高圧送電線の周波数は、電磁波の波が1秒間に50回~60回振動する50~60ヘルツ(Hz)の超低周波電磁波で、これまで人体への影響について各国で研究や調査が行なわれてきた。
先駆けとなったのは1979年、アメリカのワルトハイマー博士が「デンバーの変電所付近では小児がんの発生率が2.25倍、小児白血病が2.98倍になってる」と電磁波有害説を『アメリカ疫学ジャーナル』に発表。
さらには、1992年に発表されたスウェーデン最大の教育研究機関、カロリンスカ研究所の疫学調査は世界に衝撃を与えた。
カロリンスカ研究所の発表は、高圧送電線から300メートル以内に住む50万人以上を対象に25年間をかけて、子どもについては全種類のがん、成人については白血病と脳腫瘍を対象として、磁場の強さと発症率の関連を調査したもので、小児白血病の発症率は高圧線の影響のない地域に対し、磁場が1mGを超える地域ではおよそ2倍、2mG以上では2.77倍、3mG以上では3.8倍と電磁波の影響の強さに応じて危険度が高くなると報告した。
その後、調査を行なった各国の研究機関も「平均4mG以上の電磁波で小児白血病が2倍以上になる」と報告し、日本でも、国立環境研究所と国立がんセンターが行なった2002年の全国疫学調査でも同様の結果を出している
2005年6月、イギリスのオックスフォ-ド大学のジェラルド・ドレイパー博士らが33年間にわたって小児白血病患者9700人の住環境を調査したもので(参考:英国医師会)「送電線から200メートル以内に住む子どもは、600メートル以上離れた所に住む子どもに比べて、小児白血病が70%も多く発症する。また、送電線から200~600メートルの範囲に住む子どもは、600メートル以上離れて住む子どもに比べて小児白血病のリスクは23%高かった」としている。
■国立環境研究所「研究所における電磁界と健康に関する研究」
◇国際機関「おそらく発がん性がある」
しかし、小児白血病は10万人に3~5人といわれる珍しい病気で、がんの発症もタバコや食物などさまざまな要因が考えられるため、電磁波との直接的な因果関係は今のところ、はっきりとしない。
世界保健機構(WHO)の下部機関である国際がん研究機関(IARC)は、発がん性の評価を分類し、超低周波電磁波を「おそらく発がん性がある」のグループ2Bに位置づけた。
ただし、同じ分類基準にはコーヒーやガソリンエンジン排ガスなども含まれるため、がんの主因になるとはいい難い。タバコやアスベストは最も危険度が高いランク1の「発がん性がある」に分類されている。
■世界保健機構(WHO)「超低周波電磁界とがん」
■国際がん研究機関(IARC) 「発がん性評価結果」
一方で、電磁波の影響は科学的な究明が進められている途上にあり、小児白血病だけでなく、脳腫瘍や乳がん、流産などにも影響を与えるという調査結果も次々と出されている。
■アメリカ国立医学図書館、電磁波の影響に関する調査・研究報告(英文)
◇たくさんのホコリが家じゅうに積もる
「なるべく家にいないようにしています」
こう語るのは、鉄塔の足元で40年間も生活してきた主婦のAさん。家の玄関から高圧送電線の鉄塔まで、距離はわずか3メートル。玄関口で電磁波測定器のスイッチを入れると『11.8mG』を示した。
「あ~ やっぱりですか」
さほど驚かない様子のAさんは、過去にも民間の測定員に調べてもらったことがあるので、高い電磁波が出ていることも、がんや小児白血病に影響があるといわれていることも知ったうえで暮らしてきたようだ。
「隣の家も、二軒隣の家にも、がんで亡くなった方がいるので自分の健康も心配なんです」と、昼間はなるべく外出し、家にいる時間を減らすように心がけていると話す。
Aさんがこの家で暮らし始めて最初に異常を感じたのは、たくさんのホコリが家じゅうに積もるということだった。 毎朝、拭き掃除をしているのだが、夜になるとテレビや電化製品はもとより、廊下や階段にまで触れた指跡がつくほどにホコリが積もるのだという。
「ちょうど電気の傘にホコリが集まりやすいのと同じ現象なんです。この家自体が蛍光灯みたいなもんですよ」
Aさんはこの家で3人の子どもを育ててきたが、「幼少期には3人ともアレルギーや気管支ぜんそくが激しかった」と、当時を振り返る。強い電磁波の影響で家じゅうにホコリが集まり、子どもたちに影響が出たのではないかと今も疑っている。
立ち話をしている間、私はAさんが手首につけた銀のアクセサリーをくるくるまわす仕草がとても気になっていた。
◇磁力を放出する?ブレスレット
「あ、これですか? ゲルマニウム入りのマイナスイオンのブレスレットなんです。磁力を体内から放出してくれるといわれて買ったんですよ。気休めにしかならないのかも知れませんがね」
後日、インターネットで電磁波防止グッズを調べたところ、Aさんのと同じ型のブレスレットを見つけた。それは美波動商品のひとつとして電磁波防止ショップで3,990円(税込)で販売されている。
「いつでも、どこでも『Bhado)))ブレスレット』を身に付けることにより、あなたを有害電磁波や静電気から守ります」というキャッチフレーズとともに、「通常の免疫力を持った若い女性がハロゲンヒーターの電磁波をあびると免疫力が低い数値になったが、『Bhado)))ブレスレット』を付けると通常の数値より良い数値になった」と効用を掲げている。
通常の免疫力とは何を意味するものか、また電磁波をあびると免疫力が低い数値になるとはどのような根拠があるのかは不明だ。また、Aさんがいうゲルマニウムやマイナスイオンという流行語のものは含まれておらず、アルミ合金とロジウムメッキで作られている。
そのほか、さまざまな電磁波防止グッズのサイトがあるが、携帯電話に貼るだけで有害電磁波を無害化し有益エネルギーにチェンジするというアルミ合金チップ、電磁波シールド繊維素材により作られた電磁波防止エプロン、電磁波防止キャプ、さらにはクリスタル石やトルマリン石を使った「近年大ブームの『電磁波防止の泉』」という宝石セットまでが売られている。
日本では防護グッズの性能に基準や販売の規制は一切ないが、欧米では取締まりが行なわれ、有効性には否定的のようだが…。
◇関西電力「5万ミリガウスでも人体への影響はない」
関西電力に電磁波の影響について問い合わせてみたところ、電話をとった広報担当は「がんや小児白血病に与える影響ですか?多いんですよね、そういう問合せ」とつぶやき、機械的な話しぶりで説明を始めた。
関電グループの中尾さん「磁界(磁場)が小児白血病に影響を与えるという疫学調査が出ていますが、証拠が十分でなく、研究によっては影響がないという結果も出ています。1000mGという強いものを動物に曝露して行なった調査でも、まったく影響がないということがわかっています。国は超低周波の電磁波による健康への被害はないとしていますし、磁場の値を規制していませんので1000mGでも、5万mGでも人体への影響はないという見解を持っています」
生活環境における電磁界(電磁波)が健康に害を及ぼすことはない、ときっぱり結論づけた。
さらに蛍光灯のことについても尋ねてみる。
--門真学園の横にある鉄塔の下で、ドーナツ状の蛍光灯と棒状の蛍光灯の2種類を、以前テレビや雑誌でやっていたように振りかざしてみたんですが、まったくつきませんでした。夜になってもつきません、なぜでしょうか?
関電広報担当「そんなことはわかりません。電界が作用して蛍光灯がつく場合がありますが、何の影響もありません。蛍光灯を布でこすってもつく場合があるんですよ。なぜかなんてわかりません」
古川橋変電所周辺では10年以上も鉄塔や送電線の工事は行なっていない。ボルト数も電圧も変わっていないという。言い換えれば10年以上もの間、何の対策もとっていないということだ。いや、対策をとる必要はないということなのだろうが、しかし、なぜ蛍光灯はつかなかったのだろう?
◇マスコミと関西電力の間で30年間翻弄され続けた
古川橋変電所に隣接する常盤町のBさんは、これまで電磁波の影響について信頼できる情報開示を関西電力にもとめ続けてきた。
「マスコミは電磁波が危険だと漠然とした恐怖感を煽り、関西電力は国の方針に従い健康に害をおよぼすことはないと主張する。果てには、根拠のない電磁波防止商品を売り込みに来る業者までやってきたんです」
板ばさみのなかで、30年間も翻弄され続けたBさんは、「もう時間が経ちすぎたのだ」と精神的な疲労を隠せない。
以前は町内で集会を開き、関西電力に納得のいく説明や対処を求めていたが、問題が長期化するなかでひとり減り、ふたり減りと反対する人も少なくなったという。今では新しく移り住んで来た人も増え、常盤町自体が変わってしまったと肩を落とす。
「パソコンのモニターが部分的に変色したり、電化製品の電源が突然入ったりと小さな障害はあります
「ともく~ん、おむかえですよ?!」
保育士の声と同時に、ピンクのリュックを背負った男の子が走り出し、ママの腕のなかに飛び込んだ。ほのぼのとした幸せいっぱいの日常。
「写真なんか撮らんでください。うちはそれで30年間、なが~いこと嫌なめにあってきたんですわ。やっと長いことかかって沈静化したかと思ったのに、またやられるとたまらんですよ」
平静を装う園長だが、口元はあきらかに震えている。
ここは、大阪・門真市にある保育園。
手に持った電磁波測定器は『36.1mG(ミリガウス)』を指す。「平均4mG以上の電磁波で小児白血病が2倍以上になる」といわれているのに、だ。
◇大量の電気を食い続けて生きている
電磁波とは、波を描いて進む電磁気の流れのことで、電流や電波が流れるところには必ず発生する。磁石のプラスとマイナスと同じように電磁波も電気と磁気の両方の性質をもっているが、電気が発生する空間を電場(電界)、磁気が発生する空間を磁場(磁界)。電場は体の表面に電流を走らせるだけだが、磁場は体内に入り込み細胞レベルまで到達するといわれ、このことが人体に影響を与えると問題視されている。
電磁波の問題が全国のお茶の間で話題になったのはおよそ10年前。
ワイドショーや週刊誌で「送電線や携帯電話、家電製品などが発する電磁波が、がんや白血病を引き起こす」「蛍光灯をかざすだけで明かりがつく」と大々的に騒いでいたのに、今ではそんな話題も目にしなくなった。
私の部屋を見まわすと、家電製品はもちろんのこと、携帯電話、デジタルカメラにデジタルビデオカメラ、パソコンに周辺機器。省エネを心がけているつもりだが、大量の電気を食い続け、生きているのが現状だ。
いったい、電磁波の影響はどうなったのか?
何らかの対策ですでに解決したのか?
それとも電磁波の影響はなかったのか?
そんな疑問を胸に、電磁波の街とも呼ばれる大阪府門真市にやってきた。
保育園横の鉄塔の下で電磁波測定器は67.0mGを示した。迫力の拡大画像は |
門真市の末広町と古川町にある古川橋変電所は関西各地に電力を供給するため、奈良の生駒山系や、遠くは岐阜の木曽川系水力発電所からの高圧電流が送電線を伝って送られてくる。
高台にのぼると、住宅やマンションの上を15万4000ボルト、または7万7000ボルトの高圧送電線が走り、巨大な鉄塔が墓標のように並ぶ様子を一望できる。
この鉄塔の足元や送電線の真下にどれだけの人びとが暮らしているのかと想像すると信じ難い光景だ。
電磁波の影響もさながら、見た目もおぞましく、さらには地震などの災害で鉄塔が倒壊したらと考えると危険きわまりない状況だ。
門真市に来る事前に、私は電磁波測定器を使って身の回りにある電磁波の強さを測っていた。
電磁波の磁場を測るには一般的にmG(ミリガウス)という単位を使うが、パソコンのモニターが1.8mG、電源プラグが0.5mG、部屋の中央ではわずかに0.4mGで安全値といわれる2~3mGの範囲内だ。
簡易保育所の門真学園で『36.1mG』を測定したのは、保育所が古川橋変電所に隣接したうえ、周辺の鉄塔や高圧送電線群に取り囲まれるように位置しているからだ。
前出の「蛍光灯をかざすだけで明かりがつく」とメディアで取りあげられていたのは、実はこの場所での出来事である。
◇元自治会長が行った死亡聞き取り調査
私は1997年3月21日号『週刊金曜日』の誌面で告発されたひとつの記事をバッグに入れていた。
町内で過去13年間に死亡した人が160人、うち82人がガンで死んでいました。 血液のガンといわれる白血病で死んだ人がそのうち高圧送電線群を中心に直径100メートルの範囲で13人、150メートルになると18人。ガンで入退院している患者が17人。死亡年齢は7歳から72歳で、夫婦ともに白血病で亡くなっている家族もありました。被害は15万4000ボルトの高圧線と14年前に地下に埋められたケーブルの周囲に集中しています。これは、1996年当時、末広町で電気屋を経営し、自治会長でもあった大西勇さんが、町内でがんや白血病で亡くなる人が多発していることに気づき、過去10年間にさかのぼって遺族に死因の聞き取り調査をおこなった結果を記したものだ。
◇4mG以上の電磁波で小児白血病が2倍以上
高圧送電線の周波数は、電磁波の波が1秒間に50回~60回振動する50~60ヘルツ(Hz)の超低周波電磁波で、これまで人体への影響について各国で研究や調査が行なわれてきた。
先駆けとなったのは1979年、アメリカのワルトハイマー博士が「デンバーの変電所付近では小児がんの発生率が2.25倍、小児白血病が2.98倍になってる」と電磁波有害説を『アメリカ疫学ジャーナル』に発表。
さらには、1992年に発表されたスウェーデン最大の教育研究機関、カロリンスカ研究所の疫学調査は世界に衝撃を与えた。
カロリンスカ研究所の発表は、高圧送電線から300メートル以内に住む50万人以上を対象に25年間をかけて、子どもについては全種類のがん、成人については白血病と脳腫瘍を対象として、磁場の強さと発症率の関連を調査したもので、小児白血病の発症率は高圧線の影響のない地域に対し、磁場が1mGを超える地域ではおよそ2倍、2mG以上では2.77倍、3mG以上では3.8倍と電磁波の影響の強さに応じて危険度が高くなると報告した。
その後、調査を行なった各国の研究機関も「平均4mG以上の電磁波で小児白血病が2倍以上になる」と報告し、日本でも、国立環境研究所と国立がんセンターが行なった2002年の全国疫学調査でも同様の結果を出している
2005年6月、イギリスのオックスフォ-ド大学のジェラルド・ドレイパー博士らが33年間にわたって小児白血病患者9700人の住環境を調査したもので(参考:英国医師会)「送電線から200メートル以内に住む子どもは、600メートル以上離れた所に住む子どもに比べて、小児白血病が70%も多く発症する。また、送電線から200~600メートルの範囲に住む子どもは、600メートル以上離れて住む子どもに比べて小児白血病のリスクは23%高かった」としている。
■国立環境研究所「研究所における電磁界と健康に関する研究」
◇国際機関「おそらく発がん性がある」
しかし、小児白血病は10万人に3~5人といわれる珍しい病気で、がんの発症もタバコや食物などさまざまな要因が考えられるため、電磁波との直接的な因果関係は今のところ、はっきりとしない。
世界保健機構(WHO)の下部機関である国際がん研究機関(IARC)は、発がん性の評価を分類し、超低周波電磁波を「おそらく発がん性がある」のグループ2Bに位置づけた。
ただし、同じ分類基準にはコーヒーやガソリンエンジン排ガスなども含まれるため、がんの主因になるとはいい難い。タバコやアスベストは最も危険度が高いランク1の「発がん性がある」に分類されている。
■世界保健機構(WHO)「超低周波電磁界とがん」
■国際がん研究機関(IARC) 「発がん性評価結果」
一方で、電磁波の影響は科学的な究明が進められている途上にあり、小児白血病だけでなく、脳腫瘍や乳がん、流産などにも影響を与えるという調査結果も次々と出されている。
■アメリカ国立医学図書館、電磁波の影響に関する調査・研究報告(英文)
◇たくさんのホコリが家じゅうに積もる
「なるべく家にいないようにしています」
こう語るのは、鉄塔の足元で40年間も生活してきた主婦のAさん。家の玄関から高圧送電線の鉄塔まで、距離はわずか3メートル。玄関口で電磁波測定器のスイッチを入れると『11.8mG』を示した。
「あ~ やっぱりですか」
さほど驚かない様子のAさんは、過去にも民間の測定員に調べてもらったことがあるので、高い電磁波が出ていることも、がんや小児白血病に影響があるといわれていることも知ったうえで暮らしてきたようだ。
「隣の家も、二軒隣の家にも、がんで亡くなった方がいるので自分の健康も心配なんです」と、昼間はなるべく外出し、家にいる時間を減らすように心がけていると話す。
Aさんがこの家で暮らし始めて最初に異常を感じたのは、たくさんのホコリが家じゅうに積もるということだった。 毎朝、拭き掃除をしているのだが、夜になるとテレビや電化製品はもとより、廊下や階段にまで触れた指跡がつくほどにホコリが積もるのだという。
「ちょうど電気の傘にホコリが集まりやすいのと同じ現象なんです。この家自体が蛍光灯みたいなもんですよ」
Aさんはこの家で3人の子どもを育ててきたが、「幼少期には3人ともアレルギーや気管支ぜんそくが激しかった」と、当時を振り返る。強い電磁波の影響で家じゅうにホコリが集まり、子どもたちに影響が出たのではないかと今も疑っている。
立ち話をしている間、私はAさんが手首につけた銀のアクセサリーをくるくるまわす仕草がとても気になっていた。
◇磁力を放出する?ブレスレット
「あ、これですか? ゲルマニウム入りのマイナスイオンのブレスレットなんです。磁力を体内から放出してくれるといわれて買ったんですよ。気休めにしかならないのかも知れませんがね」
後日、インターネットで電磁波防止グッズを調べたところ、Aさんのと同じ型のブレスレットを見つけた。それは美波動商品のひとつとして電磁波防止ショップで3,990円(税込)で販売されている。
「いつでも、どこでも『Bhado)))ブレスレット』を身に付けることにより、あなたを有害電磁波や静電気から守ります」というキャッチフレーズとともに、「通常の免疫力を持った若い女性がハロゲンヒーターの電磁波をあびると免疫力が低い数値になったが、『Bhado)))ブレスレット』を付けると通常の数値より良い数値になった」と効用を掲げている。
通常の免疫力とは何を意味するものか、また電磁波をあびると免疫力が低い数値になるとはどのような根拠があるのかは不明だ。また、Aさんがいうゲルマニウムやマイナスイオンという流行語のものは含まれておらず、アルミ合金とロジウムメッキで作られている。
そのほか、さまざまな電磁波防止グッズのサイトがあるが、携帯電話に貼るだけで有害電磁波を無害化し有益エネルギーにチェンジするというアルミ合金チップ、電磁波シールド繊維素材により作られた電磁波防止エプロン、電磁波防止キャプ、さらにはクリスタル石やトルマリン石を使った「近年大ブームの『電磁波防止の泉』」という宝石セットまでが売られている。
日本では防護グッズの性能に基準や販売の規制は一切ないが、欧米では取締まりが行なわれ、有効性には否定的のようだが…。
◇関西電力「5万ミリガウスでも人体への影響はない」
関西電力に電磁波の影響について問い合わせてみたところ、電話をとった広報担当は「がんや小児白血病に与える影響ですか?多いんですよね、そういう問合せ」とつぶやき、機械的な話しぶりで説明を始めた。
古川橋変電所の南側にある大和田小学校の校門にも鉄塔が!迫力の拡大画像は |
生活環境における電磁界(電磁波)が健康に害を及ぼすことはない、ときっぱり結論づけた。
さらに蛍光灯のことについても尋ねてみる。
--門真学園の横にある鉄塔の下で、ドーナツ状の蛍光灯と棒状の蛍光灯の2種類を、以前テレビや雑誌でやっていたように振りかざしてみたんですが、まったくつきませんでした。夜になってもつきません、なぜでしょうか?
関電広報担当「そんなことはわかりません。電界が作用して蛍光灯がつく場合がありますが、何の影響もありません。蛍光灯を布でこすってもつく場合があるんですよ。なぜかなんてわかりません」
古川橋変電所周辺では10年以上も鉄塔や送電線の工事は行なっていない。ボルト数も電圧も変わっていないという。言い換えれば10年以上もの間、何の対策もとっていないということだ。いや、対策をとる必要はないということなのだろうが、しかし、なぜ蛍光灯はつかなかったのだろう?
◇マスコミと関西電力の間で30年間翻弄され続けた
古川橋変電所に隣接する常盤町のBさんは、これまで電磁波の影響について信頼できる情報開示を関西電力にもとめ続けてきた。
「マスコミは電磁波が危険だと漠然とした恐怖感を煽り、関西電力は国の方針に従い健康に害をおよぼすことはないと主張する。果てには、根拠のない電磁波防止商品を売り込みに来る業者までやってきたんです」
板ばさみのなかで、30年間も翻弄され続けたBさんは、「もう時間が経ちすぎたのだ」と精神的な疲労を隠せない。
以前は町内で集会を開き、関西電力に納得のいく説明や対処を求めていたが、問題が長期化するなかでひとり減り、ふたり減りと反対する人も少なくなったという。今では新しく移り住んで来た人も増え、常盤町自体が変わってしまったと肩を落とす。
「パソコンのモニターが部分的に変色したり、電化製品の電源が突然入ったりと小さな障害はあります
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読者コメント
実際に調べると門真市の白血病の死亡者数がほぼ変わっていない、という点からも非常に胡散臭い内容。
東京電力に鉄塔は細く低くなりますが最下線を高くするので電磁波数値は小さくなりますと言われました。何を言っても無駄なのだと感じる改修でした。今4,5月で電気使用量が少ないと言われる時期に去年の真夏の最高値18から20mGで一日過ごすことが多く夜になると20から25になり、夏とは逆に高くなる数値の中で安らげない睡眠です。この数値はどういうことなのでしょうか。これからどうなるのか不安です。
住宅街の携帯アンテナ、銛みたいなのや銛をクロスさせたような十字形をしたアンテナが隣の敷地の電柱の上に建っています。携帯のアンテナは高周波?これはどうなんでしょうか?
事故ばかり起こす原発の建設止めて、地下に通せ送電線を
??さんの書かれた日本人の死因に占めるガンの割合ですが、厚労省ページによれば29%(1995。2005には増えて30%)のところ50%超はやはり多い気が。で問題は白血病ですが、0.6%です。亡くなった方の10%が白血病だったとすると、突出しているように思います。世界各地でも似た事例の報告があるようですし。「墓標」云々の表現はやや感情過多だと思いますが、立派なレポートだと思います。
街中にある変電所も危険なのでしょうか。
どうも電磁波問題は白黒ハッキリしないので一度こういう場所で長期間大量サンプル調査をして欲しい。
ナショナルジオグラフィックとかで賞貰っている写真家ですよね?
日本の平均では160人の死者のうち50人以上が癌で死ぬのです。80人と言う数字がそれほど飛びぬけている気はしません。高圧線の直下で20箇所、10000人くらい調べて50%が癌で死んでいるなら何か関係あるかもしれませんが。
この記事に触発されて、調べてみた。門真市に行って見たい。
ないですか。門真市。今日まで知らなかった自分が恥ずかしい位、いろいろな施設、人物、会社ある所じゃないですか。
この鉄塔はいつからあるのだろう。既に住んでいる所に、勝手にどんどん鉄塔が建ったら頭に来るけど、後から引っ越し来たら、嫌なな他に行けばと言われてもしょうがない気がする。何も、こんな危険だと言われている地域に敢えて住む必要が無いと思う。
確かにこの光景は怖い。ガンの発生がこの地域が多いとのことですが、他の地域との比較を知りたい。他の鉄塔のそばでも、この位ガンになる人が多いのか。また、このガンは果たして医学的に鉄塔が原因なのか?万人が納得出来る証拠を出してもらわないと何とも言えない気がします。それとも有料の所に書いてあるのか。この記者の記事をもっと読んでみたいです。
この地区をGooleMapで検索し、航空写真である倍率を超えると、鉄塔がくっきり見えます。。そして変電所の異常な広大さ。電源開発をサボったツケを点々と地図で辿れるのは、、なんとも不気味でした。
日本政府は電磁波問題には知らない顔をしています。高圧線、携帯電話の鉄塔など危険だらけです。しかし、危険性が知らされていません。鉄塔下の保育園を放置するのは、殺人行為に等しいのではないでしょうか。
電磁波は世界中で調査はされてるが危ないとも危なくないともいえないようです。ただし高圧線自体は危なくないらしい。今後は予防原則で何か対策するとかしないとか。。次回はゲルマニウムブレスレットなどインチキ健康グッズ氾濫の問題を取り上げてください。(笑)
記者からの追加情報
お連れ合いがぜんそく、次男が電磁波の影響を疑われている鬱病だともおっしゃっていました。地域に暮らしながら反対運動をすることは、たいへんなことです。町内の人たちが、大西さんがいなくなって清々したと言っていますが、そういううるさ型だからこそ、そこまでねばり強く調査したと思います。住民の立場で活動をされてきた人でした。
「関西電力のやりたい放題」と言っていた大西さんの言葉を思い出します。(編集スタッフ:山中登志子)
本文:全約7,700字のうち約1,600字が
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