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1.天引き後の「手取り賃金」に納得できる ♯【手取り賃金が望む生活水準を満たしている】

❐報酬水準 ―対価軸『いい会社はどこにある?』

情報提供
年収と手取り
年収の手取りと「本当の手取り」グラフ

日本では太平洋戦争中の1940年、効率的な戦費調達を目的として、勤労所得に「天引き」制度が導入され、これが現在も続いている※。我々は生活に必要な額を、額面ではなく手取り(口座に振り込まれた金額)から支払うため、重要なのは手取りだけである。この「手取り」から、さらにサービスやモノを消費すると、消費税を10%とられる。つまり実質的には、手取りの90%だけが最終手取である。既に天引きで税金はとられているため、不当な「二重課税」である、という議論がある。

Digest
  • 額面に騙されない
  • 単年の年収水準は重要ではない
  • ボーナス比率が高い外資金融
  • ハウジングベネフィット
  • コンサル、ITにバブルの波
  • 退職金制度の闇
  • 若い時点の低収入を後から回収する
  • 栄枯盛衰なく変わらぬメンツ
  • 大手商社と不動産が定番
  • 『課長になれればいいな』という感覚
  • 経営サイド重視で働き手に配分されない
  • ミドルリスクミドルリターンな領域
  • 有価証券報告書の嘘

額面に騙されない

手取りと本当の手取り一覧表
年収の、「手取りと本当の手取り」一覧表

手取りは、ローンの返済に回すこともでき、消費せず貯蓄や運用に回すこともできるため、選択肢は多い。会社選びにおいては、「手取り」をメインとして考えるのが妥当だ。右記がその一覧表である。前作から16年が経ち、働く者の負担は重くなった。年収700万円だと、手取り540万円→529万円に11万円減った。消費税が倍増したため、最終手取りは、513万円→476万円へと、37万円も減り、我々はずいぶん貧しくなった。※

※米国は真逆で、確定申告を個人で実施することが義務付けられており、納税者意識が高い一因となっている。日本の制度では、年末調整も会社が代行し、代わりに納税するため、納税者を意識する機会が少ない。こうした戦中のどさくさで確立した税や社会保障の仕組みは「1940年体制」(野口悠紀雄)と呼ばれる。

※全体の平均給与水準が上がっていれば相殺されるが、四半世紀の間、ずっと横ばいなので、単純に買えるモノが少なくなって貧しくなっただけである。なお、保険料負担は企業と折半なので、企業側の負担も同じだけ重くなっている。つまり、総人件費も上昇しており、長生きすれば将来的に企業年金として受け取る原資になっているが、ここでは従業員側が実際にリアルタイムに受け取る手取り金額のみに限定している。数十年後のことなど、どうなるか分からないからである。

手取り減の原因は、主に厚生年金と健康保険の保険料を引き上げたためであるが、高齢化で社会保障負担は重くなり続けており、今後も上がる可能性が高い。

年収の手取り表
年収の手取り表

直近では、雇用保険料が2022年10月から1.35%に引き上げ(現在は0.9%)。コロナ禍で企業が従業員に支払う休業手当がかさみ、その財源を賄うためだという。

こうして給与所得者は、帳尻合わせで、容赦なく天引きされていく。

図からわかるとおり、実に緩やかな累進課税となっており、「ワニの口」の先っぽである年収2千万円だと、消費税を払ったら42.8%(845万円)も、税と社会保障に消えていく。総合商社や大手出版社の管理職クラス、そしてキーエンスの中堅社員以上は、このくらい国に貢献しているわけで、ご苦労様、なのである。

対価編みだし一覧
第3章対価軸の構成(本稿は単行本『いい会社はどこにある?』の元原稿 《一部アップデート完全版》です)

逆に、年収2百万円でも53万円(27%)負担し、実際には年収146万円の生活になってしまう。全員同じ10%で、低所得者ほど消費性向は高い(ぜんぶ消費に回す)ため、《消費税の逆進性インパクト》※が大きすぎるのだ。我が国の「分配」政策は、「弱い」と評価されるべきであろう。

《もっと働いてたくさん稼いで国に貢献せよ、ラクにはさせないぞ》という政府からのメッセージが聞こえてくるかのようだ。

※逆進性=所得税は、所得が高い人ほど累進的に課税率が上がるが、消費税にその累進性はなく、全員が一律10%。所得が低い人は貯蓄に回す余裕がなく、ほとんど消費に回すことから、支払う消費税額が所得全体に占める比率は逆に上がる。これを逆進性という。

単年の年収水準は重要ではない

報酬水準と平均年齢の図
35歳報酬水準と平均勤続年数マップ

日本は、大企業と公務員が終身雇用である一方、業績が不安定な中小企業はそうでもなく、外資は業績がよくても「PIP」※と呼ばれる業績改善計画を個人に課して、成果がでなければ実質的な解雇に追い込む。よって、ある年の年収は、突然クビになってゼロになるかもしれず、持続しない。

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