スーパーホテル”ベンチャー支配人”は「最賃割れの過酷な職場だった」
東京地裁・角谷昌毅裁判長の労働法骨抜き判決が日本を「蟹工船列島」に
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| 事実認定されたベンチャー支配人カップルの「業務委託料1084万円/年」と「常時2名体制」(判決文より抜粋)。時給は平均618円となる計算だが、労働者ではないので問題ナシ、というのが判決内容だ。確定すると、最賃未満で労働者を働かせることが可能となる労働法の〝抜け道〟となりかねない(判決は末尾掲載)。 |
形式上は業務委託契約だが実態は労働者で、最低賃金割れの長時間労働ではないか――株式会社スーパーホテル(本社大阪市・山本健策社長)で「ベンチャー支配人・副支配人」として働いた男女カップルの至極もっともな訴えを、東京地裁の角谷昌毅裁判長は切り捨てた。原告カップルは「4年で3000万円以上貯金可能」の謳い文句に誘われて応募し約70室の店舗運営を任されたが、実際に支払われた年1084~1260万円の「報酬」はアルバイト人件費込みで、1日わずか3万円程度。業績不良なら即契約解除の弱い立場で詳細なマニュアルの遵守を求められ、毎日15時間前後の深夜早朝労働を休みなく1年半続けざるを得なくなった結果、過労死寸前に。時間と場所の拘束や指揮命令権の大きさを考えれば「労働者」と言うべきだが、角谷裁判長は「契約上の目的」「業務の性質」というマジックワードで労働者性を否定。この労働法をぶっ壊す問題判決が確定したら奴隷的な労働が野放しとなり、病人・過労死が続出する事態になることは容易に想像できる。
- Digest
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- 元支配人が判決に感じた違和感
- 判断枠組み
- 事実認定
- 「諾否の自由」
- 「業務遂行上の指揮監督の有無」
- 時間的場所的拘束
- 報酬の労務対償性
- 「4年間で3000万円」にだまされた
- 説明会で上映された成功物語の番組
- 1400頁のマニュアル
- 過酷な日々
- 契約解除を通告
- 「現代のマグロ船のようなものです」
※判決(抜粋)は末尾にてPDFダウンロード可
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契約に含まれる業務マニュアルでは、24時間年中無休で常時2人体制以上の勤務を義務付けている。その業務内容に対し、初年度報酬はアルバイト人件費含め、総額1084万円だけ。
1084万円/(48人時×365日)=618円が、支配人夫婦とバイトの平均時給となる。東京都最賃の約半分の水準にしかならない。
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| 同社が事業・ビジネスモデルの第一のポイントとして挙げる「業務委託によるホテル運営」。現在も「ベンチャー支配人」という名の業務委託請負人を募集中。ようは、1年で切られるリスクだけが高く、過酷な労働の割に賃金が低い非正規雇用者である。 |
これを業務委託の名のもとに合法と判断したのが、角谷昌毅裁判長によるトンデモ判決であった。現在、控訴審が進行中だ。
このまま確定すると、業務内容や時間がガチガチに拘束されているのに〝正社員ゼロ&最賃割れの完全非正規ホテル〟が合法化され、ただでさえ30年間も上がっておらず4年連続下落中の日本の実質賃金水準に、さらなる下方圧力がかかってしまう。
元支配人が判決に感じた違和感
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| スーパーホテル「ベンチャー支配人・副支配人」の労働者性を争点とした訴訟の一審判決(2025年7月10日)後、記者会見で不当な判断である旨を訴える原告と弁護団。 |
「まさか労働者性が判決で否定されるとは思いもしませんでした」
あるスーパーホテル元ベンチャー支配人の男性はそう話し、Aさんらが敗訴したことへの違和感を吐露した。支配人経験者の間でAさんらの裁判は関心事になっていたという。
Aさんらは2018年9月に業務委託契約書をスーパーホテルと交わし、以後1年半の間「ベンチャー支配人・副支配人」として都内の70室ほどの店舗を運営した。
まとまった金が貯まるという事前の説明とは裏腹に、金は残らなかった。日に15時間に及ぶ早朝深夜労働を休みなくすることを余儀なくされ、収入を時給に換算すると最低賃金より低かった。この辺りの経緯は後段で詳述する。
Aさんらがスーパーホテルを提訴したのは2020年10月。労働者保護を目的とした労働法に照らせば、形式的には業務委託契約だとしても労働者にあたり、ホテル側は未払賃金などの支払い義務を負うとの訴えだ。
5年に及ぶ審理を経て昨年7月、同地裁の角谷昌毅裁判長が一審判決を言い渡す。請求棄却。Aさんらの完全敗訴だった。労働者性は認められなかった。労働者でなければ労働法の保護はない。どれだけ働こうが自分の勝手、それで死のうが自己責任ということになってしまう。
元支配人の男性が感じた違和感は、角谷判決がベンチャー支配人の実態を正しくとらえていないことを物語る。そして判断理由をよくみると、スーパーホテルを勝たせるという結論が最初からあったのではないかと思わざるを得ない乱暴な論理が浮かぶ。
なお、この裁判の争点は、労働者性の有無のほかにもいくつかあるが、紙幅の都合により本稿では労働者性の部分についてのみ取り上げたい。
判断枠組み
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| 厚生労働省のホームページに掲載された労働者性に関する解説。Aさんらの契約条件と労働実態は常識的にみれば労働者になるはずだが、東京地裁(角谷昌毅裁判長)は「契約の目的」「業務の性質」といったマジックワードを駆使し、強引ともいえる手法でそれを否定した。 |
判決をみていくと、まず労働者性の有無を判断する上での「判断枠組み」を示している。
労働者とは
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ベンチャー支配人の業務委託契約書(サンプル)。

株式会社スーパーホテル本社(大阪市西区)。

ベンチャー⽀配⼈制度で運営するスーパーホテルの店舗(本稿とは直接関係ありません)。

スーパーホテル「ベンチャー支配人」の労働者性をめぐる訴訟が続く東京高裁。

4年で3000万円の貯金ができるという求人文句を見つけたのがAさんらがスーパーホテルとかかわる最初のきっかけだった。同社ウェブサイトに掲載されたベンチャー⽀配⼈の募集案内(2018年当時)。

Aさんらが参加した説明会で配布された資料。「報酬」は4年で4650万円以上、「(アルバイトの)採用に関わる費用は本部が負担」と記載されている。「報酬」とはアルバイトの人経費込みの意味だと気づいたのは後のことだった。

スーパーホテルの「業務要領」。多数の遵守事項が記載されている。

「ベンチャー支配人には裁量の余地がほとんどない」「4年続けられることは難しい」と話す元ベンチャー支配人の男性(手前)。奥はAさんら原告。




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