浜崎あゆみが美容整形をしているのではないか。
　その噂を聞いたのはいつだったろうか。
　
　長い間、外見と社会の関係について取材執筆をしていると、そのような噂や情報をよく教えられる。「ほら歌手の○×さん、美容整形をしていますよね」

　証拠がないので、「この問題は書けないだろうな」と思っていたとき、「こんなサイトがありますよ」と知人に教えられた。

　■参考サイト１
　■参考サイト２

　韓国でつくられたサイトのようだ。

◇「美容整形」で参考にするトップは「浜崎あゆみ」
　「浜崎あゆみ」と「美容整形」で検索すると、あふれんばかりに情報が出てくる。浜崎あゆみさんが美容整形をしているのではないか、という「疑惑情報」だけでなく、こんな情報もあった。

参考にしたい芸能人ランキング！！★
●調査対象期間：2003年9月～10月
●美容整形アンケートに答えて頂いた方対象
●総投票数：248票

　美容整形アンケートで、「美容整形するとしたら、参考にする芸能人は誰ですか？」という質問に答えて頂きました。あなたなら誰を思い浮かべますか？？

▼第1位 浜崎あゆみ
▼第2位 松田聖子
▼第3位 長谷川京子

　美容整形を考えている女性にとって、浜崎あゆみさんの顔とは、美容整形クリニックに行ったとき「こんな顔にして欲しい」という「参考になる顔」ということなのである。

　ここに至って、浜崎あゆみさんをめぐる美容整形疑惑というより、社会現象としての「浜崎あゆみの外見」について取材をする必要性を理解した。著名な芸能人の顔は、個人のものではない。一般大衆の美意識に働きかける、強烈なメッセージを発するアイコンなのだ。

　浅草の地下鉄のホームに、「浜崎あゆみ」のデビュー直後の顔写真が広告として掲示されているという場所を、マイニュースジャパン編集者の山中登志子さんが教えてくれた。浅草という、人の往来が激しい地域の駅構内に、そのような写真が本当に掲示されているのだろうか。半信半疑だが、まずはこの眼で確かめるためにデジタルカメラをもって浅草駅に向かった。

　都営地下鉄「浅草駅」駅の構内に、その写真はたしかにあった。

　写真には『1995年　16歳　映画主演デビュー　「すももももも」（バル企画）より』とある。

◇元所属芸能プロダクション「わかりかねます」
　早速、この芸能プロダクション、パル企画 に電話をしてみた。

－－もしもし私、浜崎あゆみさんのファンの者なんですけど、浅草の駅（都営地下鉄）にある広告をみてお電話しています。地下鉄の駅構内にパル・ブレイヤーズ・アカデミーの写真が出ていますね。浜崎さんが「美容整形をしている」と友人が言っていまして、そういうことが本当にあるのか、確かめたくてお電話しているんですけど。

　「あぁ、すみません。浜崎さんの所属はうちではないので、わかりかねます」

－－そうですか。昔そこにいらっしゃった（在籍）ということはないんですか？

　「いえ、そういったわけではなく。はい」

－－浅草のパル・ブレイヤーズ・アカデミーの写真というのはそちらとは関係がないということなんでしょうかね。

　「関係はないわけではないんですが。いままったく所属も違いますので」

－－ああ、そうですか。

　「所属していたわけでもないですし」

－－所属していなかったんですね。

　「はい」

－－ああ、そうですか。

　「はい」

－－最近の顔と全然違うと思うんですけど。そういうことはわかんないですかね。

　「はい。化粧とかいろいろあると思うので」

－－美容整形は特にしていない、という感じなんでしょうか？

　「いや。わかりかねます」

－－そうですか…。

　「ええ、申し訳ないんですが」

　これでは埒が明かない。浜崎あゆみさんがこの会社に在籍していたことは間違いないと思うのだが、やはり、このような質問は答えにくいのだろう。担当者は言葉を濁していた。

◇エイベックス「はじめて聞くお話なんですが」
　いたしかたない。では、いま浜崎あゆみさんが在籍しているエイベックスに電話してみよう。

■エイベックス カスタマーリレーションズ課 ０１２０-８５-００９５（平日10時～18時）

　「お電話ありがとうございます。エイベックスでございます」

－－浜崎あゆみさんのファンの者なんですけど、噂で浜崎さんが美容整形されているというのを聞いたことがあるんですけど。

　「はぁ？」

－－そういうことって本当にあるんでしょうか？

　「はじめて聞くお話なんですが。逆にどちらから聞かれているんでしょうね？」

－－ええと。浅草のほうにデビューした直後の写真付きの広告が出てまして。

　「お店の店頭ですか？」

－－地下鉄なんですよ。

　「地下鉄？」

－－地下鉄の都営の浅草駅なんですけど。一番最初の所属事務所のパル・プレイヤーズ・アカデミーだと思うんです。その時のお顔といまのお顔がだいぶ違うなぁ、と思っていまして。ネット上で美容整形をしているんじゃないかな、という噂があったものですから、それが本当だったらショックなので電話したんですけど。

　「そうですか。とくに該当するお話は聞いたことがないので。私どもといたしましては」

－－そうですか。そういうのはわからないんですかね。

　「いわば、個人的なことになってしまいますのでね。私どもとしては会社的なおつきあいをさせていただいているので」

－－じゃあ確かめるのは難しいんですかね。

◇さらにエイベックス「あくまで個人的なことになる」
　「私どもを通してというのは難しいことでございますね。まずそのご覧いただいている広告が実際のものなのかどうかを直接提供されているところに聞いていただいたり、あとは非常に難しいお話ですけれども、あくまでも個人的なことになる、ということなので。お客さまが何らかの形で本人と確認する。その術しかむしろないと考えますね」

－－あぁ、なるほど。お手紙を出すとか。そういう形になるんでしょうかね。

　「お客さまがそのようにお考えになられるのなら。私どもといたしましては、そうですね。いかがでしょうか、と申し上げることしかできないですね」

－－じゃあ浜崎さんに連絡するとしたら、そちらの会社あてになるのか、どうしたらいいでしょうか？

　「手紙自体はファンクラブ宛に送っていただくことによって本人に渡すお手配をとっております」

－－そうですか。では住所はどちらになるんでしょうか？

　「〒107－0062　東京都港区南青山３丁目１－３０　チームあゆ　浜崎あゆみファンレター係　と書いていたければ」

－－わかりました。電子メールとかはダメなんでしょうか？

　「そうですね、受け付けているアドレスとかは特にないんですが」

－－わかりました。いろんな人から美容整形をしているんじゃないか、という話があったものですから。そういうことは会社としてはわからない、知らないということなんですか？

　「そうですね。仕事をする上で何のかかわりもありませんから。私どもであえて把握することではないと考えておりますし。特に本人から申告があるということもございません」

－－わかりました。ファンレターを送ろうと思うんですけど、あれだけ有名な方ですから、会うということは本当にできるんでしょうかね。

　「それも会社が関わるお話じゃないので。私どもでできるできないと申し上げること自体が困難でございます」

－－ファンレターを書いたら必ずご本人に見て頂けるということなんでしょうかね？

　「お渡しはいたしますが、見るという行為をするのは本人ですので。あとは本人がどのように判断してどう行動するか、ということになってしまいますので。それはむしろ本人のみぞ知る、ということになりますね。

　私どもは会社の立場として、お手紙をお預かりしてそれを本人にお渡しする、というところまでお手伝いさせていただいております」

－－わかりました。ありがとうございました。

　「はい。失礼します」

◇すっぴんあゆを見て、触れた高梨院長が「顔」分析

『週刊新潮』（2003年１月23日号）の『プチ整形の女王』記事に、ペンで線を書きこんで「美容整形疑惑」について解説する高梨院長。

　浜崎あゆみさんのデビュー映画をつくった芸能プロも、いま在籍しているエイベックスもガードは堅い。当然だろう。人気歌手、浜崎あゆみさんが美容整形しているかどうか、それを答えるはずはないし、その義務もない。

　もし美容整形をしていると認めたらそれは大ニュース。認めないとしたら、それもまた、ちょっとしたニュースになりうる。

　では、美容整形に詳しい関係者の取材をすることで、手がかりを探ることにしよう。
　
　美容整形の女王として有名な作家、中村うさぎさんと、その担当医として著名なタカナシクリニックの高梨真教院長に話をうかがうことにした。
　
■タカナシクリニックの公式サイト
　
高梨「彼女（浜崎あゆみ）がよく言われているのは二重、目頭切開、鼻のプロテーゼです。
　
　その３つだけを言ってしまえば、埋没法で二重にした過去はある