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【こだわりグルメ】化学調味料使わぬ鮨作り 鮨大内(寿司/東京・表参道)

情報提供
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「年に数回、商売ぬきで究極の鮨をつくって紹介したい」という鮨大内店主の大内久司さん。大内さんの名刺には「21世紀の子供達のために、今出来る事をひとつ、ひとつ」とある(撮影:林克明)
 捏造が明らかとなり打ち切られた「あるある大事典」の嘘を6年以上前から指摘し、番組に質問状を送り続けてきた医師の三好基晴氏。単行本『ウソが9割 健康TV その健康食信じてはいけません! 』も、問題発覚(2007年1月)以前に出版し、食品の安全性に警鐘を鳴らしてきた。
 その食通、自然食通のスペシャリストでもある三好氏が、自ら見つけ通ってきた、選りすぐりの食事処(レストラン)がある。三好氏が徹底的に調査、検証のうえで紹介するこだわりの店の条件は、下記5点だ。

(1)美味しいこと
どんなに安全性にこだわっていても美味しくない店は紹介しない。

(2)化学調味料を一切使ってないこと
調理に化学調味料を一切使っていないことはもちろん、醤油、味噌、オイスターソースなどの調味料なども化学調味料を使用していないものを使っていること。

(3)食材の内容の情報をできるだけ公開できること
使っている食材の栽培方法、メーカー名、商品名、製造方法などの内容の情報を企業秘密以外はできるだけ公開できること。

(4)適正価格であること
安全性にこだわった食材は一般の食材より値段が高いため、メニューの値段も高めになる。しかし、総合的に考えて適正価格であること

(5)効果、効能を謳わないこと
アンチエイジングをアピール、食材のコラーゲンが皮膚によいなどの効果、効能を謳っていないこと。

三好氏がこの店を推薦する理由をはじめ、店をはじめたきっかけ、食材・調味料へのこだわり、メニュー、店の情報(最寄り駅、アクセス、営業時間、定休日、住所、電話、ホームページ、メールなど)を、外観、店内、店主、料理などの写真とともに紹介する。

■■■以上、企画趣旨■■■

第1回目は、東京・表参道にある「鮨 大内」。三好氏によるレポートをお届けする。

 美食家として有名な北大路魯山人に心酔していた大内久司さんは、「味の素は調味料にあらず」という魯山人のことばをそのまま実行し、「化学調味料や添加物を使わない、天然の素材による安全で美味しい鮨作り」の想いをもとに、1983年にこだわりの鮨レストラン「大内」を東京・表参道にオープンした。寿司ネタ選びはもちろん、海苔、シャリ、ガリ、お茶や酒の飲みものまで、客に提供する素材の吟味にエネルギーを注入している。しかも、適正価格である(食材仕入先リスト付き、<会員限定>)。

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鮨 大内
青山通りから2本奥まった路地にある。
古い民家をおもわせる店内。20席。

◆住所:東京都渋谷区渋谷2-8-4
◆TEL:03-3407-3543
◆営業時間:12:00~13:30、17:30~21:30
◆定休日:日曜日、祝祭日
◆アクセス:JR渋谷駅から徒歩10分、地下鉄表参道駅から徒歩5分
 JR渋谷駅から国道246号線を表参道方面へ行き、「こどもの国」の手前の路地を南に入って行ったところに、1983年2月「鮨 大内」が開店した。

 24年前、大内久司さんは自分の店を始めるにあたって「化学調味料を使わない鮨作り」をすると決めていた。

 それは大内さんが20才の頃読んだ「魯山人」のことを書いた文中に「星ヶ岡茶寮(注:自身が経営する会員制の料亭)の会員に味の素会長や社長を入れなかったのは、味の素は調味料にあらず」という文章があったからだ、と言う。

 当時魯山人に心酔していた大内さんは、尊敬に価する第一の人物の言葉を実行しようと思ったのである。そのように店を始めたものの、大内さんのなかに「自然食」という考えや意識はなかった。

 しかし、開店して間もなく、あるお客様から言われた一つの言葉から、「自然食人生」が始まった。

 「せっかく化学調味料を使わない鮨作りをするからには、養殖の魚を使うのもやめたらどうだ」という言葉だった。

 同時にその方は農薬の悪を説いたレーチェル・カーソン著『沈黙の春』(新潮社)を読むように、と大内さんに勧めてくれた。大内さんにとって、この著書は衝撃で大きな転機となった。店の案内のパンフレットには「カーソンのさけび」が書かれている。

 「レーチェル・カーソンの著書『沈黙の春』は農薬の害を説いた本である。この本は1962年に出版され、大きな反響を呼んだ。この『沈黙の春』をカーソンは自分の生命とひきかえに書きあげた。

 現在、このカーソンの生命の叫びは、今を生きる我われ人間に届いているのだろうか。農薬にまみれた野菜、添加物だらけの食品、それに遺伝子組み換えされた食物の数々、それらのものは本当に人間の身体にいいものだろうか。

 いくら文明が発達しても、人間は生き物であり、ロボットにはなり得ない。だからこそ人間は、生命の元『食』を真剣に考えなくてはならないと思う」(大内さん)

◇安全でも美味しくなければ言い訳にもならない
 当時店に出していた養殖魚についても調べてみると、やれ抗生物質だ、密飼いだと安全性を脅かす問題が多々あることを知り愕然とした。

 それを契機に一つひとつの食材を見直し、すべての食材、調味料に自信が持てるようになったのは、15年ほど前からだった。だが、時間をかけて、ひとつひとつの食材を調べていくと、今の時代、100%安全な食材を揃える事の困難さを痛感している。

 たとえば、天然の魚が養殖池の回りに集まって養殖用の餌を食べてしまう問題や、アジやコハダなどの小魚には表示義務のない鮮度保持剤が使われていることもある。外見での判別は困難でも大内さんのようなプロには、下ろしてみると身の輝きや張りの明らかな違いがわかってしまう。

 魚介類の大半は天然ものの方が味は勝るが、モノによっては養殖のものもまずくはないものがある。しかし、お客様に「それは安全ですか?」と訊かれたら胸を張って答えられない。それだったら使わない、と決めた。

 食材は、10年以上の付き合いの信頼できる業者から細心の注意を払って仕入れている。塩、砂糖、醤油、味噌、酒、ひとつひとつの時間をかけて安全なものへと一歩一歩近づけている。

 大内さんにとって、それは「今もこれからも終りのない旅だ」と言う。知れば知るほど、正直な食べ物が少ないからだ。

 また、安全なもの(素材)を使っていても、美味しくなければ言い訳にもならない。

 自然なものほど個性と風味は強いため、大内さんは天然醸造の醤油だけでも今までに数十種類を集めて研究し、自分の味を作り、美味しく、より美味しくしていくことも、終りのない旅と考えている。

◇速醸酢は使わない
 大内さんは「私の店が特別と見えてしまうのは、それだけ安全性に疑問のある食材、食物が出回っているからだろうと思う」と言う。

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お品書きの裏に印刷されている「沈黙の春」の著者レーチェル・カーソンの言葉(上)。

大内さんの「正直な味を求めて」のこだわりを伝えるメッセージ(中)。

調味料、魚、野菜など食材についての質問、疑問にも答えてくれる)(下)。
 こんなことも何度かあった。

 大内さんの鮨を食べたお客さんが「ご飯が臭い」と言ったという。一般の鮨に使う酢めしは、酸っぱくて香りがない。香りのなさをごまかすために化学調味料を入れている。

 「化学調味料を使ったご飯を食べていると異常に喉が渇きます。だから鮨を食べて何杯もお茶を飲む方がいますよね。うちのご飯は、普通の店の3倍食べても、喉がかわきません」(大内さん)

 「鮨 大内」では、無農薬米を原料とした純米酢などを使っている。今はやりの醸造アルコールを原料に短期間の速醸で製造した速醸酢ではなく、静置発酵という伝統的な手法を貫いている。ちなみに米は、JAS認証の新潟県産の無農薬無化学肥料のコシヒカリだ。

 大内さんが以前読んだ本には「人類史上、これだけの化学物質を体に取り入れている時代は、ここ50~60年のことではないか。この影響はそれを取り入れた本人よりも、その子ども、孫の代になって、かならずや悪影響を及ぼすであろう」と書かれており、同感した。

 大内さんは「お客様の一言が、私の自然食人生の始まりとなったが、良識、学識ある方々の御指導と励ましが今の形となって続けてくることができた。それにもまして、黙々と良いものを作り、獲り、私に届けて下さり、一歩一歩の道程を同行して下さった生産者の方々、業者の方々に、心から感謝申し上げたい」と言う。

◇こだわりの食材は積極的に使う
 私が初めて大内さんに行ったのは今から10年程前である。

 何かの雑誌で「化学調味料を一切使っていない鮨店」と紹介されていたので珍しいと思い、また美味しいのか、調味料も化学調味料を使用していないものを使っているのか、を知りたくて行ってみた。

 食べてみると、美味しくて適正価格であった。当時でも安全性にこだわってはいたが、もっと安全性が高く、美味しい食材に変えれば、さらに美味しくなると思った。

 しかし、初対面なのに店で使っている食材の危険性を指摘し、もっとより安全で美味しい食材を紹介することは勇気のいることである。

 閉店近くなってお客さんがいなくなった9時半頃、大内さんにいろいろ聞いてみた。

 心配するようなことはなく、私の意見を素直に聞いていただくことができ、「良いものを紹介して欲しい」とまで言われた時は一安心した。その後、何回か行くごとに食材のことが話題になり、少しずつこだわった食材が増えている。

 ある時、玉子焼きを食べると、化学調味料が入っているような味がした。聞いてみると、玉子焼きに使っている魚のすり身は店で作ったのではなく、築地の店で業務用を買ってきたものだと言う。

 であれば化学調味料が使われている可能性があるので、その後、大内さんは玉子焼きを作らず、だし巻き玉子だけを自家製で作っている。料理人として、できるようでできないことである。

 また、養殖海苔の問題を大内さんに指摘した

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大内のメニューの一部。上から、◆握りランチ(夢1500円)◆ちらし鮨ランチ(萌黄1050円、大盛りは1200円)ご飯の上に乗っているのは、自家製の海老おぼろ(天然無添加)。卵は有精卵、米は有機無農薬。◆レディースランチ(1400円)鮨が美味しいのは当然として、一番奥にある温野菜も食べてすぐに味の違いがわかった。野菜は主としてナチュラルハーモニーから仕入れている。もちろん男性も注文できる。◆アナゴの蒸し鮨(昼2000円、夜2300円)香りのあるご飯(無農薬コシヒカリ)に、たっぷりとした量のアナゴ。桜の葉で包まれた香りとあいまって食欲をそそる。これは本当に風味があって美味い。下は、鮨大内のお品書き。これを見ただけで、いかに素材の吟味にエネルギーを注入しているかわかる。それでこの値段はかなりのサービスといえるだろう。日本酒も純米酒・純米吟醸。無農薬の米を原料にしたものも仕入れている。

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■「鮨 大内」取材同行記
 青山通りから奥に入ったところにあるので、こじんまりして落ち着いた雰囲気の店だった。私が最初に口にしたのは「レディースランチ」のご飯。この酢飯を口にいれた瞬間に「あっ、この店はいける!」と直感した。ところが、あとで店主の大内さんにインタビューしてみたら、私が文句なしに美味いと感じた飯を臭いという人がいるというので驚いた。化学調味料の味に慣れているからだ。化学調味料恐るべし。

 そらから、私が世間に広めたいと思っているのは、アナゴの蒸し鮨だ。気に入ったので、三好さんと同行取材したあとに自分でも行き、注文して食べた。

 でも、多くの人に知らせたいという気持ちと、あんまり人に知らせたくないという気持ちが、実は混在している。気に入った店を見つけたときに、こんな心境になってしまうのだ(林克明