画像1:キーエンス「4B」社員の給与明細。4Bとは→キャリアパス図参照。四半期ごとの営業利益に連動して加算される業績賞与の比率が高いが、これでも大幅ダウン。詳細は本文参照。
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リーマン・ショック後の不況直撃を受けたキーエンス。工場向けのセンサーや計測機器が主力とあって、顧客(メーカー)側の設備投資が戻らないと苦しい。2008年3月期まで3年連続で過去最高益を更新し、営業利益連動給の加算でトップクラスの待遇を謳歌してきた社員も、営業益3割減だった2009年3月期は平均年収が前年比261万円も減って1,135万円に。営業益がさらに3割減る2010年3月期見通しでは、1千万円の大台を割っている可能性が高い。仕事内容に対する対価として、現在の報酬水準は納得できるレベルなのか。「後輩の会社選びに役立てば」と社員が実態を語った。(末尾にて人事制度ダウンロード可)
【Digest】
◇恐怖モチベーションで動いている会社
◇「監査」が「ありのまま報告」をチェック
◇利益志向が身につく
◇営業利益が半減=業績給も半減
◇「住宅ローンどうしよう」
◇恐怖モチベーションで動いている会社
自分は給与の高さを重視して会社を選びましたが、2008年度、2009年度は会社全体の業績が急降下しているために、仕事内容のキツさに比べて、若干、期待はずれな感があります。この
キャリアパス図の水準は2年前は確かにそうですが、今では年ベースで200万円ほどは下がっている計算になります。
現場の社員は、高い給与を稼ぐことをモチベーションに働いているというよりも、むしろ分単位で監視される「恐怖モチベーション」で動いているという感じのほうが近い。愛社精神はないですね。
たとえば、各自に与えられる固定電話は、通話時間も架電件数も管理されていて、内容もすべて録音されています。内勤の日は、1日140分電話、1日50件がノルマ。50件かけるのは、担当企業が少ない人は大変で、同じ企業の違う部署にかけたりします。
通話時間を稼ぐために自宅の留守電にずっと話していた営業マンがいて、「すごくいい話をしてるな」と思った上司が録音をチェックしたためにバレて検挙されたという話があるくらいです。
◇「監査」が「ありのまま報告」をチェック
日常的に部下の行動をチェックするのは、「機責」(機種責任者)と呼ばれる30歳前後の現場リーダーです。機責が、顧客に電話を入れて、本当にガイホウ(外出報告書)が「ありのまま報告」になっているのかを確かめます。
一番怖いのは、本部の「監査」。キーエンスで監査というと、怖い言葉なんです。これは営業のエリートが行く部署で、機能としてはメガバンクの監査部門に似ている。1年に1回、抜き打ちで2人やってきて、ガイホウを見て、ETCの通過時刻データやケータイの通話記録と突き合わせたりして虚偽の記載を見抜く。営業のエリートだから、嘘をつく手口も熟知しているわけです。
営業マンは外出の日は、朝、タイムカードを切って出て行く。そして、車の乗車時刻を記録。車のメーターの走行距離も出て行くときと帰ってきたときの1日2回記録。営業先では、まず車を降りた時刻を分単位で記入。営業先での滞在時間は、10分単位で記入。これも「20分~29分までは切り下げで20分と書く」など、ルールが細かく決まっています。そして車に乗る時刻を「9:03乗車」などと記入。この繰り返しです。
訪問時間、訪問件数などが人事評価の対象となるため、ガイホウの虚偽記載はキーエンスでは重い罪に問われます。監査は、顧客先に行ってないのに行ったことにする「カラ外報」を見抜いてくる。同期が検挙されたときは、ガイホウに0分と5分の記述が多かったため、怪しまれました。
ガイホウの嘘がバレて辞めるケースが実際にありますし、降格になるケースもあります。たとえば、虚偽報告がバレた人は、担当会社を減らされ、その結果ノルマが当然のように達成不可能となって自主退社を迫られたり、他部署に飛ばされたり、降格になったり。降格になってもローンがあるから実際には辞めることができない人もいます。
こうした恐怖モチベーションの環境で仕事をしていると、はじめは会社に従順ではなかった人も、だんだん従順になっていきます。社員は性格テストを受けさせられるのですが、入社当時は「夢追い人」タイプと判定されていた人が、数年のうちに変わってゆき、会社人間になっていくのです。
◇利益志向が身につく
営業のノルマは、営業利益ベースです。売上ではない。この会社で身につくものとしては「利益志向」「客に対する話し方、切り返し方」などでしょう。
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画像2:事業推進部から全営業所へ送られる「成果額日報」。2009年1月7日時点のもの。国内全体で対前年比でマイナス32.8%。「1人1日あたり」にまでブレークダウンされている。
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ノルマは、会社全体→事業部→エリア→営業所→前年度をベースにメンバーに割り当て、12ヶ月で割って1ヶ月分にブレークダウン。機責の数字でいうと
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画像3
上:4B社員夏のボーナス
下:同冬のボーナス
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画像4
上:入社1年目の源泉徴収票
下:入社2年目の源泉徴収票
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