ライフステージと福利制度。パナソニックマンの一生が会社によってスケジューリングされている。(パナソニック労政グループ発行『福利厚生ハンドブック』より)※『福利厚生ハンドブック』全60ページは末尾よりPDFダウンロード可。
|
パナソニックには、長時間労働のカルチャーが染みついている。「このままだと、昇進できても、ずっと子供の顔が見れない。管理職クラスのTLになったら時間管理じゃなくなるので、土日も出たりしてます。そのうえ給料も下がってるし…」(中堅技術者)。営業系の管理職に聞いても、「ワークライフバランスという言葉はない会社。19時に帰ると、周囲から『アイツ早く帰ってるな』と思われてる。組合員は帰りますが、管理職になると…」と、同じことを言うのだった。
【Digest】
◇「やってらんねぇよ」デバイス社
◇労基署が入ってサビ残分100万円返金
◇有休は半分くらい消化
◇久石譲作曲のグループソングに
◇「指示待ち」で役人的なパナ社員
◇TV投資が止まらない「失敗の本質」
◇女性GM「結構いる」
◇「やってらんねぇよ」デバイス社
やはり業績の悪い分社ほど、残業代を絞られ、サービス残業が増える傾向がある。半導体を手掛けるデバイス社は、リストラで人を減らした分、残った人に追加の業務量が降りかかっている。
冒頭の中堅技術者が言う。「そもそも、終わらないだけの業務量がある。拘束時間が長くて、それだけ働いても利益は出ていないから、残業代もつけられなくて、やってらんねぇよ…みたいな感じです」
残業時間はWEBで申請するので、調整ができてしまう。出勤・退勤の時間は記録されるが、「自己研修」「自己都合による業務外の出社」(余暇のための打合せなど)などで間引きして帳尻を合わせられる仕組みなので、問題とならない数字に仕上がる。ユニクロの手口と同じである。
|
持家までの住宅対策。持家を奨励。一般的な感覚としては「大きなお世話」という印象。(『福利厚生ハンドブック』より)
 |
|
「残業は100時間はやってますが、半分もつけられない。30時間以下、と言っておきます。具体的に指示されている数字は、ちょっと言えないくらい少ないです…」(同)。ほとんどがサービス残業、とのことだ。
一方、営業職は、どの分社でも、おおむね「月45時間×12カ月まで」となっているようである。「月45時間がマックスで、そこまでは特別な申請が必要ない。平均30弱くらいをつけてます」(ヘルスケア社中堅営業)
◇労基署が入ってサビ残分100万円返金
2年前に労働基準監督署の調査が入って、サービス残業代の清算を余儀なくされたのが、エナジー社だった。
「自己研修」などとして申請している時間の、本当の中身が調査されたのである。「100万円くらい返ってきた人もいました」(中堅社員)というから、いかにパナソニックでサビ残が日常的な風景なのかが分かる。
現在では、労組と人事との取り決めで、「完全定時日」が月に2日(給料日と第二金曜日)設定され、人事の担当者が、オフィスに残っている社員がいないかチェックの見回りをする。この日に残業させるためには、労組に申し入れをしなければならない。「休日出勤」も、同じく労組に申し入れが必要となった。
その結果、エナジー社では、現在は本当に月20~30時間しか残業をしなくなり、サービス残業はなくなったという。一方で、他の分社では続いている部署もあるわけで、結局、イタチごっこだ。
オート社の技術者は、月~木は、ほぼ22時までが標準(ノー残業デーの金曜は17:30に帰ることもある)となっており、残業時間は月60時間を越えると労組の指導が入るため、その範囲内に収まるくらいで、残業代は、ほぼ納得のいく形で支払われているという。
金曜は一応、全社的に「ノー残デー」で17:30に帰ることになっているが、これは守られておらず形骸化している、との声のほうが多かった。
残業時間の多寡、および適正に支払われるかは配属先によるため、「運」としか言いようがない。これが日本の大企業の実態であり、中小企業がさらにひどい実態であることは想像に難くない。言うなれば、車のスピード違反みたいなもので、ほぼ全員が違反状態だが、たまに「ネズミ取り」に引っかかる。
厚生労働省は、企業に恩を売って天下り先にしたいので、傘下の労基署が摘発しても、摘発情報を公開しない。もし公開されれば、メディアに載って社員の採用で不利になるから、必然的に再発防止策を打ち、サビ残は確実に減らせる。
だが、現状では、いくら捕まっても公開されないので、企業は再犯したほうがトクだ。この繰り返しである。解決策は情報公開だと分かっているにもかかわらず、国に解決するつもりがないのだから、どうしようもない。
いずれにせよ、時間管理ではなくなる管理職クラスについては、特にライン長ポスト(部下を持つ立場)の人は、延々と働く覚悟が必要である。
「オフィスで一番最後まで残っているのは、上のポストの人.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
|
メーデー、創業記念日が休みのパナソニック。『ユニオンハンドブック』より。全356ページは記事末尾よりPDFダウンロード可 |
|
|
オート社労組の決算報告書(2011年3月期)。高い組合費(若手でも6410円/月)のうち、半分は労組の人件費(役員・書記スタッフ)に消えていく
 |
|
|
意思決定カルチャーなど
 |
|
|
評価詳細&根拠 |
|
