B:不良企業予備軍
(仕事2.0、生活3.7、対価2.6)
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NTT西日本の採用は、いわゆるリクルーター制を今でも堅持している。採用活動をする先輩社員のことを、文系ではリクルーター、理系ではコミュニケーターと称し、ボランティアとしての参加を強制。学生を評価して人事部に情報をあげ、正式な面接に有望な人材を選別したうえで送り込み、内定後までフォローするのがミッションだ。ここ数年リクルーターを務めている若手社員が言う。「学生は選考だと思っていませんが、もちろん選考です。第一志望なの?と聞くと、バカ正直に『第五志望くらい』などと平気な顔で言う人もいて、しかも第一志望だと言う人は全然いない。(不利になるのに)ずいぶんと無防備だな、と思っています」
【Digest】
◇リクルーターとしての仕事は「サビ残」扱い
◇在籍する大学によって甘くなる評価
◇公務員試験の日に「内定者の集い」ぶつけ試す
◇“平均年齢41.8歳”子会社抜きのマジック
◇給料は安いが転勤しなくてよい子会社プロパー
◇本社と支店の行き来が激しい
◇サービスが特殊でポータブルスキルが身につかない
◇「自分の子どもには入社を勧めない」理由
◇仮面社員が資格試験に受かって辞めていく
◇ボーナスの年功要素が弱まった
◇9年目で「エキ3」が最速
◇3割カット拒否の「満了型」は左遷先マーケ部で単純労働
◇「家族持ちはキツそう」な給料
◇2年目社員が独身寮で硫化水素自殺
◇選挙のビラ配り、投票依頼の電話――強制的な労組活動
◇セクハラ・パワハラ――役に立たない組合
◇怒鳴るカルチャー、「週3~4で割り勘」の飲みハラ
◇「40代はまだ若手」、やる気ない人多い支店
◇有休は全消化しないと怒られる
◇昨夏やっと初の女性支店長生まれる
◇リクルーターとしての仕事は「サビ残」扱い
例年、2月ごろに、学生から年齢の近いアラサー以下の社員が招集され、リクルーター向けの説明会を開催。その年の新卒採用における競合状況や、採用ターゲット人数、選考の進め方などについて、人事部の部課長から説明を受ける。
大学別に入社4~5年目の人がチームリーダーに任命され(メンバーは10人以下)、リーダーが、どのリクルーターをいつ送り込むのか、を決めていく。労組が強いことで有名なNTTだが、これは賃金のつかない業務。「リクルーターは『時間外労働』にあたりますが、残業手当も休日出勤手当も請求できません。労働組合は老人のための政治団体化していて、若者を一切守ってくれないですね」(元社員)
リクルーターは、基本的に「学生の応援係」という建前。その大学出身のOB・OGが、現役生のNTT内定を応援する建前だが、もちろん同じ大学の後輩なら誰でもよいわけではなく、ダメな人を早めに落としたり、NTTへの本当の志望順位や他社進行状況を聞き出す、といったスパイ的な機能を期待されている。
「土日で○人に会う、というように、リーダーに稼働報告をします。1日7~8人会うのも普通で、1回あたり約1時間。各自に評価をしてコメントを書いて、人事部や次のリクルーターに引き継ぎます。学生の人生を左右するので、心理的負荷も大きい業務ですが、完全ボランティアワークで、会社からは、交通費と、お茶代1人800円が出るだけです」(若手社員)
◇在籍する大学によって甘くなる評価
リクルーターは、NTT西にエントリーしてきた学生に対し、『うちは仕事内容が複雑だから、説明したい』などと、選考であることを伝えずに、愛校心溢れるおせっかいで気の良い先輩面して会うことになっている。
学生1人に対して、リクルーター2人が別々に面接し、必ず評価を下す。1人目ではこういうことを聞いた、という引き継ぎを2人目にするが、これは、ウェブシステム上に入力して情報を共有する。同じことを聞いて、受け応えに進展があったかを見るためである。
評価は、「SA」「A」「A-」「B+」「B」「B-」「C」「D」の8段階と、かなり細かい。B以上が「通したい」で、B-はOK、まあまあ、という感じだ。Cは「通したくない」でアウト。Dは「全然ダメ」。最初にDがつくと、2人目のリクルーターにも会えない。ある大学のリクルーターは昨年、4人に1人の割合でCとDをつけたという。
この評価は、どの大学の学生なのかによっても、意味合いが異なる。「私立大の学生でB-がつくと×で、ほぼ次の面接には進めませんが、国立大だと、B-でも、面接に進めます。これは、国立大出身者をなるべく採りたいから。ほかに、地域別の偏りをなくす観点から、福岡県ならば九州大学から何人採りたい、などが内々にあるため、候補者が少ないと甘くなります。ただ、このターゲット人数は、2014年度の選考からは明示的には撤廃されました」(若手社員)
このウェブシステムには「特質」という区分もあり、リクルーターは、「論理的である」など、その学生の特徴を記入する。共通の物差しは.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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2010年に新1級と新2級に階層を簡素化した際の、資格賃金の変化 |
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特別手当制度の見直しを伝えるNTT労組の号外(2013年11月26日) |
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入社1年目~4年目までの年収推移(源泉徴収票) |
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NTT西日本のキャリアパスと報酬水準 |
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アラサー社員の給与明細 |
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