日産リーフを購入したものの、4年足らずで事実上使用できない状態になってしまった初期ユーザー、加持紀彰さん(仮名、福岡県在住)。「日産は日本のユーザーをなめている」と憤る。
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当時の日産自動車副社長が「5年で10万km走行しても大丈夫」と公言し、カー雑誌も「5年の使用で性能の80%は確保される」と書き立てるなど、鳴り物入りで2010年12月に発売された電気自動車『リーフ』。だが、3~4万㎞走っただけでバッテリーが急速に劣化し、15年7月現在、既に使用できなくなった車両が続出していることが分かった。国・自治体に補助金を出させたEVタクシーは散々な結果となり、米国では集団訴訟に発展した末に日産が原告に補償する条件で和解。13年5月には国内ユーザー向けにバッテリー保証を始めたが、日本ではまず起こりえない「4セグメント欠け」に限って保証するという無意味なものだった。実際に乗れなくなってしまったユーザーの1人、加持紀彰さん(仮名、福岡県在住)は、夏場にエアコンをつけて走らせると「せいぜい50km程度」しか走らなくなり現在、廃車同然だ。保証を求めると、日産は「80%は単なる目安」「保証の判断は司法の場で」等と言い放ったという。「初期ユーザーは人柱なのか」と憤るこのユーザーに、消費者をなめているとしか思えない日産側の悪辣な対応ぶりを聞いた。
【Digest】
◇EVに社運をかける日産
◇「5年間で10万kmを走行しても十分利用できる」等と宣伝
◇「3~4万㎞」でバッテリーが急速劣化
◇ほかにも起きていた被害
◇アメリカでは集団訴訟に発展
◇初期ユーザーはモルモットか
リーフ被害者を募集しております→こちらより またはinfo@mynewsjapan.com
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◇EVに社運をかける日産
リーフ(LEAF)は、ハイブリッド車の開発でトヨタ、ホンダに後塵を拝していた日産自動車(以下、日産)が、きたる電気自動車(EV)市場で主導権を握るべく鳴り物入りで開発した世界初の量産型EVだった。
2010年12月、世界に先駆け、まず日本とアメリカで販売を開始。電気自動車の世界販売台数を追跡しているブログ『EV Sales』の集計によると、リーフの世界累計販売台数は、15年5月時点で約17万2,000台に到達。2位以下の三菱、シボレーを大きく引き離して、首位に立っている。
一方でトヨタやホンダなどは、水素と酸素を化学反応させて電気をつくる「燃料電池」を搭載した燃料電池車(FCV)を開発。トヨタが14年12月に、量産型としては世界初のセダン型FCV「MIRAI(ミライ)」を発売したのに続き、ホンダも16年3月にFCVの市販を予定している。
EV車市場では圧倒的な首位に立ち、17年には新型の投入も予定されているリーフだが、先月の株主総会では、EVにこだわりを見せる経営陣に対し、株主から先行きを危ぶむ声も上がった。
「日産が得意とするEVは長い距離が走行できないために普及していない。トヨタ自動車が燃料電池自動車を開発し、政府も後押ししている。日産が置いてきぼりを食うのではないかと心配しているが、それでもEVにこだわるのか?」(15年6月23日付『産経ニュース』)
これに日産のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は「燃料電池にまったく手をつけないわけではない」と断りながらも、こう答えたという。
「答えはイエス。こだわっていく。EVのリーダーの座を維持し、主要な自動車セグメントを国内外に作っていきたい」……
◇「5年間で10万kmを走行しても十分利用できる」
上記株主は、「EVは長い距離が走行できないために普及していない」と指摘しているが、これに反して日産とその関係者は、リーフ発売以前、リーフのバッテリー性能がいかに優れているかを盛んにPRしていた。カー雑誌なども、モータージャーナリストらが、日産に取材した上で同様の見解をユーザーに伝えていた。
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お馴染みの「世界初の量産型電気自動車」、日産リーフ。 |
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リーフに使用されているバッテリー(リチウムイオン電池)は、日産自動車、NEC、NECエナジーデバイスが共同出資(出資比率は日産自動車が51%)して設立した、「オートモーティブエナジーサプライ株式会社」によって開発されている。
自動車雑誌「マガジンXビジネス」の10年10月号では、カーライフ・ジャーナリストの渡辺陽一郎氏の取材に答え、オートモーティブエナジーサプライ社がリーフのバッテリー寿命について、以下のようにコメントしている。
「4000回の充電をメドに考えており、テストケースで、ほぼ達成できました。一日一回充電しても、10年は交換せずに済む計算です」
リーフのバッテリー性能については、日産本体の役員、幹部も保証している。
インプレス社のクルマ情報サイト「Car Watch」の11年 6月 29日付記事によれば、同29日にパシフィコ横浜で行われた日産の株主総会で日産の山下光彦副社長(当時)が EVのバッテリー性能について、「5年間で10万kmを走行しても十分利用できる仕様となっている」と明言。
さらに、宮本丈司氏(EV技術開発本部エキスパートリーダー)も、クルマ情報誌「ホリデーオート」の2010年8月号で、一般的な電池ならば熱によってバッテリーの劣化が進んでしまうところ、リーフに搭載されているリチウムイオン電池は放熱性に優れており、劣化が進みにくい、と強調していた。
「リチウムイオンバッテリーは、5年使用しても80%の容量が残るという試算のもと、住友商事と協力して2次利用ビジネス「4R」(再利用、再販売、最製品化、リサイクル)も進めており…」
一般社団法人日本自動車連盟(JAF)の会員向け月刊誌『JAFMate』を制作している株式会社JAFMATEが運営するニュースサイト「CAR LIFE NEWS」の2013年6月11日付記事では、編集部の徳永智氏が次のように書いている。
「EVの駆動用バッテリーは、充放電を適切にコントロールすることで長寿命を実現しており、通常は廃車までバッテリーを交換する必要はない…」
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「CAR LIFE NEWS」の2013年6月11日付記事。「廃車までバッテリーを交換する必要はない」と明記している。 |
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◇「3~4万㎞」でバッテリーが劣化
福岡県在住の加持紀彰さん(仮名)は、11年2月にリーフを購入した初期ユーザーの一人である。加持さんが購入したリーフは、3種類あるグレードのうち、最上級の「G」で、当時の購入価格は450万円だった。
もともと車好きで、しかも日産ユーザーだったという加持さんは、リーフ購入にあたっても、相当量の情報を参照していた。上記に記したような、リーフ発売前にカー雑誌に掲載された記事は、軒並み目を通したほか、神奈川県厚木にある日産のテクニカルセンターにも自ら足を運び、開発者から直接話も聞いたという熱の入れようだ。
その上で、日産を信頼して購入した加持さんだが、いまは「日産に騙された」と断言する.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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リーフは世界に先駆けて日本とアメリカで発売された。 |
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リーフ発売前に日産ホームページに掲載されたQ&A。 |
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日産ホームページに掲載された、リーフバッテリーの保証内容についての説明。 |
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