自殺した富士通社員・Aさんの妻B子さん
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2017年10月、富士通の知的財産関連部署に勤務していた50歳の同社社員Aさんが、鬱との闘病のすえ投身自殺した。Aさんの生前、上司であるDグループリーダーからパワハラを受けていることを何度も聞かされていた妻B子さんは、夫の死後すぐに富士通に事情説明を要請。だが富士通側は「弁護士との協議が必要」とすぐには応じず、事件の3ヶ月後にようやく開かれた説明会では、AさんとDの上司にあたるC課長が、Aさんの生前の業務で「いかにミスが多かったか」を、重度の鬱であったことも考慮せずことさらに強調。D本人へのヒアリングさえ行わないままにDの言動を正当化し、会社の対応は適切だったとする「説明書」を読み上げた。さらにB子さんが、説明会の場にD本人がいない理由を尋ねたところ、C課長は「会社には社員を守る義務がある」とうそぶいたという。(「説明書」は末尾よりPDFダウンロード可)
【Digest】
◇自殺から3ヶ月後に行われた事情説明
◇死者の無能をあげつらう「説明書」
◇Aさんは本当に能力不足だったのか
◇配属初日に「教えられなくても仕事はやれ」
◇「対策」はやはり席替えだけ
◇「守るべき社員」を選別する富士通
◇自殺から3ヶ月後に行われた事情説明
自殺後の会社側の対応で、「守るべき社員」を都合よく選別する富士通の冷酷な体質が浮き彫りとなった。
2017年10月に自ら命を絶った、富士通社員Aさん(当時50歳)。元々は同社の地方営業所でSEとして働いていたが、16年6月、「知財グループ」という部署に異動。同社が保有する知的財産に関してSEから寄せられる問い合わせ・相談に回答するほか、富士通の保有する特許を侵害する第三者がいないか、などを調査する業務に就いた。
だが配属後、直属の上司にして、すでに部内で「クセのある人」との評価があった「D」というグループリーダーから、執拗な叱責を受け、苦悩。薬を服用せずには眠れなくなり、やがては自殺念慮に取り憑かれるようになった。
Aさんが17年2月24日に精神科を初めて受診した際のカルテには、「異動した部署に自分の気分次第で怒鳴る、クソみたいな人がリーダーにいる。無神経な事を平気で言う人。なじる、けなすを平気でこなす人」という医師による記述がある。
さらに別の病気で日大病院を受診した際も、医師から「メンタルクリニックにかかっていたのは職場の人間関係?」と問われたAさんが「そうです。(中略)上司、先輩です。すぐ大声で怒鳴ったりする人で」と答えている。
亡くなる直前のAさんは大学病院の精神科に入院していたが、妻であるB子さんが病院に見舞いにいくと、「俺、働きたいし、新しい配属先(注=知財グループの解体・再編に伴い発足した別の部署)で心機一転頑張りたいけれど、ごめん、もうダメだ。頭がおかしくなっちゃったんだ。こうなっちゃったのはあいつ(Dリーダー)のせいだ。会社のせいだ」と訴えていたという。B子さんは言う。
「亡くなる前の夫の頭の中はDと会社、そればかりでした。しかし夫は会社で起きたことのすべてについて私に話してくれたわけではありませんし、最後は口にすること、思い出すことも深刻な苦痛になってしまっていたので、こちらからは聞きたくても聞けませんでした。彼が富士通で本当はどういう目に遭っていて、何が彼をそこまで追い詰めたのか。それを私は、どうしても知りたいんです」
Aさんが亡くなって以来、B子さんは富士通に対し事情説明をするよう再三要請していたが、富士通側は「弁護士との協議が必要」との理由でなかなか応じないまま時間は経過。ようやく開かれたのは、自殺から約3ヶ月が過ぎた17年12月末日のことだった.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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亡くなったAさんが生前通っていたメンタルクリニックのカルテ。「異動した部署に自分の気分次第で怒鳴る、クソみたいな人がリーダーにいる。無神経な事を平気で言う人。なじる、けなすを平気でこなす人」などと訴えていた |
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富士通産業医による診断書。「抑うつ状態」と診断され、2度の休業を余儀なくなされた |
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日大病院を受診した際の診療記録にも、Dに対する訴えが記録されている |
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