「ビッグマック指数」の見方
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ビッグマック |
円の独歩高だと言われる。たまたま各国の協調利下げに日本が加わらなかったり、たまたま日本企業がリスクをとらない弱気体質だったから金融危機に巻き込まれなかっただけで、いまの為替レートは行き過ぎではないのかという議論がある。
円の実態価値がどれほどのものかを確かめるのに役立ちそうなのが、エコノミスト誌が発表している「ビッグマック指数」だ。要するに、各国のマクドナルドでビッグマックをいくらで買えるのか、である。
『エコノミスト』が調べた一覧表は、ここに 載っている。これは2008年7月のものなので、価格改定がないと仮定して、2009年1月の為替で修正してみたのが下記である。
モノには適正価格がある。
私のなかで、皮膚感覚として、どう考えてもおかしい価格第一位が、日本のマクドナルドと薄型テレビだ。これらは適正価格を越えて安すぎる。次がユニクロの一部の商品(ジーンズ等)で、これもおかしい。何か悪いことをしているに違いない、と直感するレベルだ。
ずっとおかしいと思っていたが、マクドナルドは馬脚を現した。要するにあの価格は、違法労働によって、店長の違法なサービス残業で成り立っていたのだ。本来は店長の人件費に充てられるべきカネで、消費者が安い価格を享受していた。
→ マクドナルド店長は管理監督者に非ず 750万の支払い認める地裁判決
松下の薄型テレビも、大阪の松下プラズマディスプレイ茨木工場で働いていた吉岡力さんが2005年5月に偽装請負を告発。シャープでも下請工場で外国人労働者が違法就労するなど、要するに悪さをしていることで実現できている価格なのだった。トヨタもキヤノンも同じだ。
→トヨタ系部品メーカー、偽装請負を内部告発した期間工を更新日3日前の雇い止めで“報復”
ユニクロもどこかで化けの皮がはがれるだろう。ギャップやH&Mに比べても、皮膚感覚で安すぎる。
■では、この見方をマックの表に適用しよう。マクドナルドは、最適調達を行う。つまり世界中の一番安い材料を調達し、一番安いところで加工し、一番安い方法で輸送してくる。だから材料費はほぼ同じだ。
となると、一番価格に響くのは、従業員の人件費と土地代だろう。上の現在の価格表では、ビッグマック1つを、日本の280円より安く買える国は5つある。香港の156円は土地代の高さを考えると確かに安過ぎる感じはあるが、中国系の安い労働力が使えそうだし、場所がら、日本より違法労働が横行しているかもしれない。
164円の南アは白人支配の格差社会で、安い黒人労働力の賜物だろう。となると、シンガポールと、OECD加盟のオーストラリア・ニュージーランドあたりが「安すぎる、為替が行き過ぎだ」という結論になる。肉の調達で現地調達してそうだから輸送費が安いのかもしれないが。
逆に高いほうを見ると、米国のビッグマックは1ドル90円という今現在のレートでも324円。これは、いかにも適正ではないか。やはり、輸出企業であるトヨタ・キヤノンによる「経団連圧力」が効いていたのかは知らないが、これまでが円安過ぎたのだ。
これだけ円高なのに、まだユーロ圏で1個426円というのは、ちょっとおかしくないか。先進国で労務費が高いうえに、最低賃金や雇用法制がしっかりしているからだとは思うが、「まだ円安」の証拠かもしれない。
こうしてみると、マックを通してだけ見るならば、現在、円の独歩高と言われてはいるが、実はここ数年の円が異常に安過ぎたというのが正解であって、急激に適正に向かっただけ、というのが皮膚感覚と言える。ドルやユーロに対しては、もっと円高になっても不思議ではないのだ。
オーストラリアドル、ニュージーランドドルあたりは多少、買っておいても損はしない、という程度であろうか。
オーストラリアドル(→右図)を見ると、確かに下がり方が尋常ではない…。
オージービーフを提供してるステーキ屋さんなんか、もう盆と正月が一緒に来て、ボロ儲けでボロ儲けで笑いが止まらない、いったいどうやって税金対策しようか、というところだろう。
彼らは、消費者から「値段下げろ圧力」がかかるのを恐れて口外しない(裏で笑ってる)し、悲惨な話しかメディアがニュースとして扱わない(人の不幸は蜜の味)から、いつも大田区の下請け町工場が円安でトヨタなど輸出産業が打撃を受けて仕事が減って大変だ(税金で助けてやれ)、という話しか流れない(こういうニュースはトヨタにって都合がよい)。
さて、本題に戻ると、エコノミスト誌には、より正確に為替の妥当性を判断できるように、各国の「バイトの時給」「1平方メートルあたりテナント賃貸料」も一覧表に入れていただきたい。というか、『日経ビジネス』や東洋経済、ダイヤモンドあたり、少しはこういう役に立つインデックス企画モノをできないのだろうか。
サラリーマン体質が染み付いているからアイデアが浮かばないのだろうが、日本の雑誌は“ミシュランもの”にとことん弱い。だから私のような業界の人間でさえ、目もくれないのだ。どうりで雑誌不況になる訳である。
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読者コメント
ユニクロは、まじめ~な会社ですよ。
入るとわかりますが、くそ真面目です。
違法行為や不正行為とはかなり縁遠い会社です。
担当やマネージャレベルで、もし、やってる人が居れば、発覚次第クビが飛びます(間違いなく)。
正しさへのこだわりは、凄いものがあります。
余談ですが、ユニクロの懲罰の多さは凄いです。月に10人とかいうペースで懲戒が行われます。サービス残業が発覚すると、本人だけでなく、店長も降格とか解雇がまっています・・・
でも、ユニクロの社長、テレビ東京のカンブリア宮殿に出演して絶賛されてましたよ。そのうち馬脚を現すんですかね。てことはユニクロの株は売りかな。。。
適正価格について、確かにおかしい世の中になっている。
何でも安ければいいというものではない。
モノを大事にしないのもこんな背景があるからではないか。
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