数年前はボーナス８ヶ月だったけど…

新日石は売り上げの７割がたが、サービスステーション（SS）から上がってくる。実際には特約店（仲卸業）に販売し、特約店がSSで売っている構造となっている。この特約店からの売り上げが新日石の中核事業だ。

2008年は原油価格が下がった年だった。NY原油は、7月に１バレル147ドルまで上昇後、12月には32ドルにまで暴落。2009年4月現在は、50ドル近辺で推移している。下落局面では、以前に高値で仕入れた在庫があるため、在庫価格評価が割高となって原価が高くなり、在庫評価損が膨らむ。したがって、原油価格が下がると新日石の利益も下がる構造だ。

労組は、在庫評価を除いて考えるよう交渉しているが、それでも黒字幅は減っているため、業績を考慮して決定される2009年のボーナス額は減る見通しだ。

「相場を抜きにしても、そもそも全体の消費量が減ってきているのが原因です」（社員）。石油の消費量は、構造的に増えそうにない。国内市場は2005年から縮小に転じた。新日石は国内売上高が連結で８９．９％（2008年3月期）を占めるが、国内は人口が減り、若者は車に乗らない傾向がある。不況で新車販売も激減中だ。政府は景気対策で、燃費のよい新車に限定した購入支援を進めているため、全体の燃費が上がり、ますますガソリンの絶対消費量は減るのが確実だ。

西尾進路社長は、「開発（天然ガス開発など）、海外（海外での販売）、新エネルギー（バイオや電池類など）が３本柱だ」と新分野進出を打ち出しているが、幹部クラスに海外駐在経験者もほとんどいないといわれる「超ドメドメ」企業であるうえ、歴代社長は文系出身で新技術にも疎い。現社長（西尾氏）は経理財務畑出身、その前の社長（渡文明氏）は販売畑、そのまた前は、勤労畑（労務、人事）だったという。

2008年3月期は連結で国内売上高比率89.9％、石油精製・販売比率91％であり、完全に「国内で石油を売る会社」以外のなにものでもない。このまま構造転換が遅れると、会社自体が化石燃料のように枯渇して消え行く可能性がある。

「なんであの人が？」という人も管理職に

業界全体の見通しとして、業績が伸びてボーナスの月数が今後とも増え行く見込みは少ない。だが新日石の基本給部分の制度については、化石燃料のように旧来型の戦後日本的なモデルを維持している。つまり、年功序列的で安定している。

新日石のキャリアパス

「評価で給与に差をつけず、一律で昇格していく仕組みなどは、官僚よりも官僚っぽい」（社員）