大臣規範違反の中川VS「小沢チャンネル」の石川 北海道11区の政治資金
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中川VS石川「北海道11区」献金ランキング |
- Digest
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- 全300小選挙区中、最注目区
- 政治資金明細をチェック
- 「要望実現のため献金」
- 「関係業者と接触」して3000万円もらう大臣
- 自民党最大のスポンサー
- 政界のタニマチ「ニトリ」
- 十勝JAトップが4900万円を捻出
- 所得税ゼロのJA厚生連も税金還流
- ホクレンも子会社で迂回献金
- 税金還流の砂糖利権
- 法の抜け道使って税金還流して「法令順守」と胸を張る日本甜菜製糖
- 三井造船も税金還流
- 大臣就任中にパーティー収入2億円
- 「法令等に従って適正に処理しているところ…」中川事務所
- 小沢一郎チャンネルと政治献金の関係性
- 選挙区の地方議員から上納金を徴収
全300小選挙区中、最注目区
中川氏といえば、麻生首相の朋友で大の酒好き代議士として有名な人物。農水大臣、経産大臣、党政務調査会長、財務・金融大臣を歴任し、将来の総理大臣候補のレールを歩んできたが、今年2月にイタリアで開催したG7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)の終了後、赤ら顔でロレツが回らないままトンチンカンなやりとりを連発する “ヘロヘロ泥酔”会見の映像を世界にさらす前代未聞の失敗をして閣僚を引責辞任した。国民にこれほど鮮烈な印象を残した政治家も珍しい。
一方、石川知裕氏は、小沢一郎氏の元秘書で側近中の側近の一人。西松マネー問題で検察から事情聴取を受けたのは記憶に新しい。
全国屈指の知名度の中川氏と、小沢側近の石川氏の激突は、次期衆院選の結果を象徴するものとなるだろう。両氏のこれまでの対戦成績は、05年の郵政選挙のときに中川氏が107,056票、石川氏が84,626票と、2万2430票差で中川氏が勝ったものの、自民党にすさまじい追い風が吹いてもなお、これしか差がつかなかった。今回は民主党支持率の上昇と中川氏の不祥事で、大接戦が予想される。
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中川VS石川 資金力比較。中川氏が10倍近く上回る![]() |
政治資金明細をチェック
そこで有権者の判断材料の1つにするため、両陣営のバックにはどのような組織や勢力がついているのかを、政治資金面からチェックした。
確認した政治団体は、両候補が支部長を務める政党支部(「自由民主党北海道第十一選挙区支部」「民主党北海道第11区総支部」)と、両候補の資金管理団体(「昭友会」(代表者:中川昭一氏)、「勝山会」(代表者:石川知裕氏)。
プラス両候補の資金源となっている政治団体(中川氏の関連政治団体は次の10団体。「昭成会」「中川会」「政経研究会」「中川昭一帯広連合後援会」「中川昭一十勝連合後援会」「中川昭一札幌後援会」「近代政治懇話会」「明日の十勝経済産業を語る会」「明日の十勝を語る会」「北海道中小企業団体政治連盟」)。
石川氏の関連団体は、「石川ともひろと新しい風の会」と「石川ともひろ足寄後援会」。
チェックの方法は、中川氏の資金管理団体「昭友会」と東京に事務所を置く「昭成会」「中川会」「政経研究会」は総務省のHPから閲覧。それ以外は北海道選管に収支報告書のコピーを郵送してもらうよう申請し、文書を入手した。期間は全て過去3年間分(2005年~2007年分)だ。
こうして政治資金明細をチェックし、企業、政治団体および個人の献金とパー券購入額を集計して、金額順にランキングしたのが上記一覧だ。
その結果、中川氏には、北海道の中小企業の政治団体や、自民党お馴染みの支持母体「日本医師連盟」、家具&インテリアショップで業績絶好調の「ニトリ」、「農協関連団体」などからの資金が目立った。法の抜け道をフル活用して「血税還流」したカネも流れている。一方の石川氏には、「小沢一郎チャンネル」を開設したニコニコ動画を経営するドワンゴ代表取締役会長の川上量生氏や、石川氏の親族、それに道議、市議、町議といった地方議員から徴収した上納金がメインであることがわかった。以下、それぞれ詳細に見ていく。
「要望実現のため献金」
中川氏に最も献金しているのは、「北海道中小企業団体政治連盟」で金額は3046万円に上る。同政治連盟は05年、06年の中川昭一氏が経済産業大臣をしていた時期に集中して献金している。一体どんな団体なのか? 政治資金収支報告書の1ページ目には必ず事務所の連絡先が記載してあるので、そこに電話をしてみた。すると、ガチャっと電話をとった中年の男性とおぼしき声の人がしょっぱな次のように述べた。
「はい、北海道中小企業団体中央会です」
北海道中小企業団体政治連盟とは名前が違う。しかし、これはよくあるケースで、社団法人などの団体組織が、名前をほんの少し変えて政治団体に登録して、公然と政治献金をして利益誘導するという事例は多い。この団体もそうに違いないので、まず、北海道中小企業団体中央会とはどういう団体か聞いた。
――はじめまして。フリーのジャーナリストの佐々木と申します。何点かお聞きしたいのですが、まず、こちらはどういった団体なのですか?「団体法に基づき道内の中小企業を支援し、道内約2000の中小企業組合などが会員となり、国・道・市町の補助金と会員による会費を主とした財源として活動している団体です」
――そうですか。その北海道中小企業中央会の政治団体が「北海道中小企業団体政治連盟」ということですよね。
「はい。そうです」
――その北海道中小企業団体政治連盟は2005年に、05年11月28日に「中川昭一経済産業大臣を激励する会」というパーティーを札幌市で開いて、2200万円以上の収入を得たりして、中川氏が経産大臣の間に集中して3000万円以上献金していましたので、ひょっとして中川さんのための政治団体ですか?
「そんなことはない。中川さん以外ともかなり幅広くお付き合いしています。たしかに中川さんが経産大臣をやっていたときにお付き合いがありましたが、経産大臣を辞めた後はそうでもない。当時は北海道から経産大臣が出たという期待感から、その期間だけ力を入れて献金していたということです」
――どういった目的で献金していたのですか?
「中小企業の振興のための政策的な陳情、要望を実現するためです」
――具体的にはどういったことですか?
「基本的には、中小企業政策、経済対策など中小企業に配慮した予算の確保です」
――それは具体的には道路など公共事業の景気対策などのことですか?
「総合的な中小企業政策です」
――具体的には、道路とかもですか。
「総合的な政策です」
――税制の政策も要望していますよね。そうですか。わかりました。どうもお忙しいところありがとうございました。(ガチャ)
「関係業者と接触」して3000万円もらう大臣
資金収支報告書によると、同団体は04年11月29日にも同様のパーティーを開いている。経産大臣に関係団体が3000万円以上の献金をしているというのは、閣僚が守らなければいけない決まり事の「大臣規範」の1「国務大臣、副大臣及び大臣政務官の服務等」の(6)「関係業者との接触等」にある次の一文の趣旨に真っ向から違反している。
「倫理の保持に万全を期するため、関係業者との接触に当たっては、供応接待を受けること、職務に関連して贈物や便宜供与を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」
つまり、献金した団体は「関係業者」の集まりそのもので、その団体が国の補助金をもらうために所管官庁の経済産業省のトップに約2年もいた人物に、3000万円以上の献金をしていたという事実は、まさに「職務に関連して贈物や便宜供与を受けること」という一文にぴたりと当てはまる。
ちなみに、同団体が05年度のパーティーを開いた時、中川氏は経産大臣からの農水大臣に急遽鞍替えしたため、実際は「中川昭一経済産業大臣を激励する会」という名にもかかわらず、中川氏はすでに農水大臣に変わっていたが、例えば、経済産業大臣だった04年11月29日にも、同団体は「中川昭一経済産業大臣を激励する会」という名のパーティーを札幌で開催していたり、05年の経産大臣在任中にも同団体は1000万円以上を中川氏の関連政治団体に献金するなど大臣規範に抵触しているという事実に変わりはない。さらに、後述する農協団体や砂糖メーカーの税金還流、億単位のパーティー収入など、この人にとっては、大臣規範はあたかも破るためにあるかのように、ことごとく違反しているのである。
これほど明らかに違反を繰り返しているにもかかわらず、今まで問題になっていないのは、大臣規範には罰則がないことと、政治資金の根本制度を定めた「政治資金規正法」に「抜け道」が色々と用意されているためだ。どういうことかというと、同法では、本来は補助金を受けた会社や団体が献金するのは禁止されているのに、北海道中小企業団体中央会のように政治団体になりさえすれば、補助金をもらうために多額の献金をしてもお咎めナシということになっている。こんな抜け道だらけのザル法がまかり通っていて政治とカネの問題が解決できる日がくるのだろうか。
自民党最大のスポンサー
2位は日本医師連盟の830万円(同連盟の地方支部北海道医師連盟の金額も含む)。同団体はいわずと知れた自民党最大のスポンサーである
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中川氏のパーティーリスト
ドワンゴの川上会長は石川氏に3年間で450万円の献金
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読者コメント
石川も中川も表舞台からいなくなった・・・・合掌。
西松問題の比ではない違法行為ですね。
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