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日本経済新聞社-1 「ヤミ専従」に5億円出す“ガバナンス破たん”

情報提供
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Caa 不良企業
    【人生丸投げ型】
(仕事2.0、生活1.3、対価3.4)
 「何か、社員にとって良い話も書きたいのですが、ないですか?」

 「う~ん…(数秒考えて)…ないですね、ホントに何もない」

 今回、元社員という「地の利」を活かして、社内での役割でいえば部長を除き上から下まで、数々の社員からじっくり話を聞いた。そして最後にこの質問をすると、みな決まって同じように、こう答えたのが印象的だった。

Digest
  • 労組の「ヤミ専従」に5億円
  • 経営側よりも経営側らしい組織
  • ヤミ専従は「不当労働行為」
  • 紙面でヤミ専従問題を書く、相変わらずの棚上げ体質
  • “パワハラ死”に「あんたのせいだ」


【Digest】
◇労組の「ヤミ専従」に5億円
◇経営側よりも経営側らしい組織
◇ヤミ専従は「不当労働行為」
◇紙面でヤミ専従問題を書く、相変わらずの棚上げ体質
◇「パワハラ死」に「あんたのせいだ」


なぜ良い話を聞きたかったのかというと、あまりに後ろ向きでネガティブな話ばかりのオンパレードだと、かえって説得力がなくなるからだ。だが、正真正銘、会社も社員も、どん詰まり街道を突進中としか考えられないのだった。明るい話は、残念ながら何ひとつ見あたらなかった。

何しろ、ここ半年間に限った出来事でも、30代の現場記者は自殺し、40代の現役部長は会社で過労死、広告費は前年比35%減で会社はついに赤字転落、ボーナスも大幅減、昨年創刊の『日経ヴェリタス』も惨敗。にもかかわらず経営陣は、『竹林の間』なる豪華絢爛な応接フロアに浪費し取材先からも呆れられ、杉田会長の指示で『結い 親鸞』なる漫画の連載を始めるも1回で打ち切りという杜撰さで、かすかに残っているブランドを毀損。

社内の不満を抑えるため、経営陣は上層部に役員ポストを激増させ、労働組合には「ヤミ専従」の人件費およそ年5億円の垂れ流しを止められない。そうやって側近と「御用労組」をコントロールしつつ、新人事制度をスタートさせ、ボーナスを減らしつつ、若い記者の昇格を遅らせることで総人件費を抑制。経費削減、人事の停滞で現場の士気が下がるなか、唯一の打ち手と言える電子新聞は、来春スタートを前に成功の見通しが全く立たず…。

まるで自民党政権末期のように国民(読者)不在で、経営の失敗続きでも、労組を違法支配し、かつ株主が社外にいないこと(日刊新聞法による株式の譲渡制限)を悪用してチェックが効かず、ガバナンスが完全に破たんしているのだ。以下、1つずつ詳しく見ていこう。


労組の「ヤミ専従」に5億円

「これは間違いない事実ですので、書いてもらってかまいません。日経労組の、残業代を除く人件費は、会社が出しています。本部の委員長、書記長など幹部の数人以外は、皆、いわゆるヤミ専従です」

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テレビCMの一コマ。タレント価値を毀損しかねない問題を抱えていることを事務所は知っておいたほうがよい

ある記者からそう聞いて、疑問が解けた。何しろ、私の同期は残っているのが24人しかいないのに、そのうち3人が労組の執行部で専従スタッフをやっているからだ。脂が乗ってきて、スキルも体力も充実しているはずの働き盛りの30代記者が、なぜ労働組合活動だけを丸1年間、続ける必要があるのか。普通の会社ではありえない。

私は本連載(『企業ミシュラン』)で100社以上を取材してきたが、このような例は他の企業では聞いたことがない。会社側としては貴重な戦力を失い、社員はキャリアを断絶させ、読者は専従員として抜ける分だけ記事を読めない。いずれも不幸である。

この労組専従員、全社でどのくらいいるのかというと、2008年度実績では、東京本部14人、東京支部15人(名古屋、西部、新聞労連専従を含む)、大阪支部6人の、計35人もいる。異常な多さである。

自身の給与や退職金などを大幅に減らしてまで労組活動に勤しむ社員などいるはずもなく、報酬はフルタイムの正社員並みに保障されている。従業員の平均年間給与は1284万円(2008年12月現在)で、これに保険、年金、退職金積み立て金、家賃補助などの手厚い福利厚生がプラスされ人件費は約1.4倍になるため、総人件費は35人で約6億3千万円になる。

これを、2009年4月時点の組合員数2,418人で割ると、約26万円だ。つまり、本来1人あたりの組合費は月平均で2万円強でなければ成り立たない。だが、実際に徴収される組合費は、月6千円程度。人件費以外の活動費も考えれば、これでは幹部くらいしか養っていけない。そのギャップを、会社が負担している、というわけだ。組合費から出ているという残業代分を差し引いても、推定5億円は会社が運営経費を援助している。

経営側よりも経営側らしい組織

労働組合活動だけをやっている社員に、会社が年間5億円も活動費をくれてやる会社など、どこにあるだろうか。そして、活動費のほとんどを経営側から受け取っていながら、労働者の立場で活動できるのか。労組の仮面を被った、社内の労務部門に過ぎないのではないか。

会社が労組を資金的に支配するメリットは、どこにあるのか。「労使協調の名のもと、編集局の組合員が会社の立場でモノを言ってくれるのが大きい。(印刷部門の分社化などでどんどん切られている)制作局の人たちは『組合活動命』で妥協しようとしないから、それをいさめるわけです」

かつて、経営側との団体交渉の様子を組合員報で見るたび「茶番だな」と感じていたが、なるほど、単なる御用組合ではなく、事実上の労務部、第2経営部隊なのだった。「そういう意味では、経営側よりも経営らしい組織といってよいでしょう」(社員)

日経は今年、中間決算が55億円の最終赤字に転落した。赤字会社が営業活動ではなく、労組の活動費に5億円も無償で資金提供している。過去30年なら、150億円だ。私はIBMに5年ほど在籍していたが、会社のお金を労組の活動費にウラで流用していることが発覚したら、経営者は即クビ、背任として株主代表訴訟にもなりかねない問題である。

ヤミ専従は「不当労働行為」

法的には、労働組合法の第7条で、「労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えること」は、使用者による妨害とされ、「不当労働行為」と定められている

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boshi2010/01/26 04:59

こりゃすごい。

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読者コメント

匿名希望2010/04/01 12:36
読者2010/02/09 17:16会員
mazisuka2009/12/18 10:14
伊関 直彦2009/12/15 18:05会員
masa2009/11/03 21:42
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