朝日新聞出版「同一労働三重賃金」の闇(1)
朝日新聞出版の“カースト”制度。雇用形態という入り口で格差を固定化している。 |
- Digest
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- 格差バンザイの新聞社
- 黒字化したのに2.5ヶ月で据え置き
- およそ半分の報酬で同じ仕事をするプロパー社員
- 内定辞退者もいたほど
- バッファーを担う非正規労働者たち
- 「5年以内に全員返す」「100人より減らさない」の2枚舌
- 巧みな懐柔策も日本の縮図
格差バンザイの新聞社
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この格差バンザイの「ある新聞社」とは、もちろん朝日のことである。
2008年4月、赤字解消のメドが立たない出版部門の収益性を高めるべく分社化し、再スタートをきったのが、株式会社朝日新聞出版だ(朝日社内では「新社」と呼ぶ)。分社の最大の目的は、新たに採用する社員の給与水準をこれまでより激減させ、人件費を減らすことだった。
朝日新聞出版の組織 |
昨秋も経験者のみ10人ほど採用し、現在では約170人のうち、約35人が新社プロパー社員(全員中途採用)。年齢は30代半ばくらいが平均で、男女比は半々だという。出向社員は取材・執筆のスキルが活かせるため雑誌(週刊朝日、アエラ…)に多く、新社プロパー社員は書籍編集(新書、コミック、単行本)に多めに配属されている(右図参照)。
黒字化したのに2.5ヶ月で据え置き
新社プロパー社員の待遇は、出向社員の「3分の2」と社内では言われているが、実質年収ベースでは、もっと低い。住宅手当がないうえ、新社が黒字化したにもかかわらずボーナスは赤字時代の水準のまま据え置かれたため、出向社員との差が縮まらないのだ。
人件費削減によって新社の業績は当然、改善した。発足初年度となった2008年度は、上期は4200万円の赤字だったが、通期では、当初目標である約4億円の黒字には及ばなかったものの、3600万円の経常黒字を達成している。社内資料によると、『新書』『コミック』などが足を引っ張ったが、『週刊朝日』『書籍』などが利益に貢献した。
だが、朝日新聞単体は2008年度、最終損益で27億円の黒字を作ったものの、朝日グループの連結決算では有価証券売却損などで139億円の赤字転落。連結で赤字、子会社単体では黒字である。
こういった場合、事前にルールを決めていないと一時金交渉はこじれる。たとえば大手商社・丸紅の社員のボーナスは連結純利益に連動して自動的に決まる仕組みになっているし、電通も売上高総利益に連動させている(したがって不況の今夏はボーナス半減だった)。だが「経営不在」の朝日は、もちろん何も決めず、「労使の話し合い」という曖昧な方策に頼っている。
新社ボーナス据え置きの会社側説明 |
今春、朝日新聞出版は、春闘のために「朝日新聞出版労働組合」を設立。2008年度上期は赤字だったため冬のボーナスは2.5か月分だったが、通期で黒字となったことを根拠に、今夏ボーナスは3ヶ月分を要求した。だが6月10日に指定した回答期限に対し、経営側はゼロ回答。出向社員には手厚い住宅補助についても「1人一律13000円」を求めたが、やはりゼロ回答。結局、黒字化しても待遇は改善されなかった。
ゼロ回答の理由として、会社側は、現在の厳しい状況を説明している。「厳しい広告状況の影響もあり、09年度上期予算は、社員説明会でもお知らせしていますように約1億円の赤字予算としましたが、状況はより深刻なもので、09年4月の損益は予算比4800万円のマイナス、5月についても、速報値ですが、予算比マイナス約4600万円と大変厳しい見通しとなっています」(右記参照)
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30代前半本体在籍社員の給与。プロパーの2倍。
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【渡邉正裕】同じ価値の仕事でも身分によって「正規-非正規」だけでなく「出向-プロパー」間でも2倍の賃金格差があり、同一労働3重4重賃金の見本のような職場なのだ。…この格差バンザイの「ある新聞社」とは、もち
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読者コメント
インドのカースト制度みたいにはっきりさせず、無意味な建前上はきれいごとを並び立てている分余計に最悪であるとしか感じれません。格差社会の問題追及は必要だから朝日新聞にはもっとして欲しいけれども、自分の社内も改善しないといけない。
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