ポスト戦後のキャリア論-8 能力を開発するには②
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P+PC分析図 |
才能(資質)がおぼろげながらにでも分かったら、そこに集中的に時間を投入して知識と技術を身につけ、強みを作り出していかねばならない。ビジネスパーソンは、強みになる能力開発に時間を重点配分しなければならない。その場合、直近の目に見える収入は重要ではない。むしろ、目には見えない能力が開発される分を、常に年収に上積みしてトータルで考えるべきだ。なぜなら、あとあと、プラスオンで(時には複利で)効いて来るからである。
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- 「将来能力」に投資する
- 地上+地下、全体のバーを伸ばす
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「将来能力」に投資する
単純化した図で示すと、右上の図のようになる。現在の仕事は、①の収入で、仮に400万円としよう。②の部分(仮に100万円とする)が、その仕事を通じてOJTや研修、才能を刺激してくれる人間関係など、プラスして獲得できる見込みがある能力アップ要因分だ。これはもちろん、前述のとおり、自身の才能(資質)にひもづいているものでなければならない。強みにつながらない投資は、無駄になる。
②の部分は、確実に契約で基本給などが保障される①の部分に比べると、確かに目に見えないし、市場ニーズの変化など不確実要素が強いから、その分、割り引いて考えねばならない。だが、②が近い将来の能力(稼ぐ力)アップにつながり、割引率ゼロとした場合、正当な成果主義の組織であれば、翌年以降に(または評価が正当でなければ転職した次の職場で)100万円の収入に化けるのだから、①と②のバランスは、常に考慮しなければいけない。
前出『7つの習慣』ではこれを、「P/PCバランス」と呼んでいる。
P = performance (目標達成)
PC = Performance Capability(目標達成能力)
であり、常にPCのほうにも投資する必要性を説いている。まったく同感である。
森の中で木を倒そうと、一所懸命ノコギリをひいているきこりに出会ったとしよう。「何をしているんですか」とあなたは訊く。すると、「見れば分かるだろう」と、無愛想な返事が返ってくる。「この木を倒そうとしているんだ」「すごく疲れているようですが…。いつからやってるんですか」あなたは大声で尋ねる。「かれこれもう5時間だ。くたくたさ。大変な作業だよ」「それじゃ、少し休んで、ついでにそのノコギリの刃を研いだらどうですか。そうすれば仕事がもっと早く片づくと思いますけど」とあなたはアドバイスをする。「刃を研いでる暇なんてないさ。切るだけで精いっぱいだ」と強く言い返す。
――スティーブン・コヴィー『7つの習慣』
刃を研がなければ(PCに投資しなければ)、目標(木を切り倒すというP)は達成できない。同様に、将来稼ぐ能力に投資しなければ、収入は上がらない。
ケース②で紹介した旅行業のBさんを思い出していただきたい。Bさんは金融に転じた後、さらに2回、移籍している。『5年後に、その5年間をならせば高くなっているか』が基準で、「日興からフィデリティには、下がっても行っていた」と話す。直近は下がっても、そこで身についたキャリアの価値が高ければ、より業界内で通用するようになって数年後には回収できるからだ。
Bさんは「基本給が現在の1.5倍ほどになる」という条件を提示してくるヘッジファンドの誘いには乗らなかった。「単なる給与の先食いで終わるから」(Bさん)。これはつまり、地下の部分(③)が見えなかった、ということだ。
地上+地下、全体のバーを伸ばす
20代のうちは、様々な能力を身につけられるチャンスなので、直近の収入は無視するくらいがよい。たとえば
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「木こりのジレンマ」という説話の木こりがとても社畜的すぎる - Togetterまとめ
http://togetter.com/li/1021568
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