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労基法違反等の送検企業名、運転手と外国人実習生関連ばかり公表 情報公開文書で判明

情報提供
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送検された企業の公表率。業種・事案には異様な偏りが見られる。
 厚労省は企業名をどこまで情報公開するのか。労働基準法32条(長時間労働)違反、同37条(残業代不払い)違反、労働安全衛生法100条(労災隠し等)違反の3つについて「書類送検された企業名」の情報公開を求めると、ほぼ半数はスミ塗りされた。開示された企業は、自動車運転手と外国人実習生にかかわる事案に著しく偏重し、大企業ではホンダと竹中工務店くらい。お役所の裁量行政が改めて浮き彫りとなった。例えば「5年で2回以上違反があった場合、企業名を自動的に公表」といった法制度にしない限り、役所のご都合主義によるアンフェアな行政は変わらない。(開示文書はPDFダウンロード可)

 厚生労働省は労働分野において、企業名をどこまで情報公開するのか。これまで、(1)労働基準監督署の監督指導に従い不払いだった残業代を払った企業(2)過労死・過労自殺が労災認定された企業(3)新卒内定を取り消した企業について、情報公開したことがあった。結果はともに、企業名は全面的に不開示だった。

 過労死企業が不開示とされたのは「個人が識別されるおそれがあるから」という理由からだが、残り2つはともに「企業の不利益になるおそれ」が理由とされた。労基署の監督指導に従った結果であったとしても残業代を払ったことはプラスに評価されるべきだと思うが、厚労省労働基準局監督課は企業を代弁するように、「企業としても表に出したくないことですから、社名を公表するとなると、今度は隠すようになりますよね」という説明をしていた。

 その一方で、企業が労働基準法違反などで書類送検された場合、労働局が企業名を明らかにして事案の概要を公表することがある。情報公開法を使った上記の経験からすれば、送検された企業であっても「不利益になるおそれ」という理由で不開示になるはずだ。この違いはどこからくるのか、何らかの判断基準があるのではないか。

 行政機関が送検する場合は、事前に検察と裏で話し合い、起訴→有罪に持ち込める見通しがある、つまり悪質性が高い、と判断したということだ。送検された企業名なら、情報公開法によって出てくるのか。

 そこで、実際に労働基準法32条(長時間労働)違反、同37条(残業代不払い)違反、労働安全衛生法100条(労災隠し等)違反の3つについて、2007年から09年の3年間に「書類送検された企業名」を開示請求した。条文を指定したのは、厚労省監督課への事前の問い合わせで、「検索するためには条文を指定する必要がある」と聞かされていたからだ。合わせて、国が企業名を公表する場合の判断基準となる文書も開示請求した。

 その結果、送検された企業名は、労基法32条で49%、同37条で28%、安衛法100条で75%が開示された。監督課のホソガイさんの説明よると、今回、開示された企業名は一度、労働局が(記者クラブ向けのリリースで)公表している。すでに公表したことだから情報公開した、という考えだ。

 しかし、同じ送検された企業のなかで、労働局の裁量で開示するものと非開示のものがあるというのは、いったいどういうことなのか。開示された(=労働局がそれ以前に裁量で公表した)中身を分析すると、奇妙な偏りがあることが分かった

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実際に開示された文書の一部。上:労基法32条違反、中:同37条違反、下:安衛法100条違反。全体は記事末尾からダウンロードできる。

公表の判断基準となる厚労省の文書。「同種犯罪の防止を図るという公益性を確保する目的」でなければ公表してはいけないとの考えを示している。全文は記事末尾からダウンロードできる。

送検結果の推移。送検されても略式の罰金で済んでしまうことが分かる。

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