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アートネイチャー5 「発毛時代てどんな時代やねん?」

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ついに最終回。正念場が近づいてくる。 ああ、とんずら……したい!
 カウンセリング編・最終話。「発毛時代」に、薬物の実験台にされた丸山さんの過去。「副作用さえなければ私だってやりますよ!」どんどんデカくなる話に耐えきれず、私は取材そのものからとんずらする誘惑にかられはじめる……。

○飲むミノキ?

「血を採るんですよ! リーブは! そして、色々調べてクリアーだったら、同意書をかかせて、リアップという製品の中に入っているミノキシジルを処方するんですよ! それも、飲むミノキシジルです!」

 ミノキシジルタブレット
 毛髪関連薬物に精通する在野の ハゲマスター たちでも二の足を踏む代物。これは、 降圧剤 そのものなのだ。しかも現在は安全性の問題から使われていない。扱いは非常に難しいといえる。

「これ、確かにね、毛は生えます。ただ、副作用がすごい! うちの会社でも実験でやってみました。生えましたよ、すごいレベルで。けど、身体むくんできたり、結局身体が馴れてきちゃうと、また戻っちゃうんですよ! 一番問題なのは、子供をつくった時に奇形児が生まれちゃったりしちゃうんです。僕も実験でやって、確かに生えたんですけど、……会社の方で実験やって、そういう副作用があるので、この分野には手を出さない方がいいって、決まったんですよ!」

 あれ? ミノキシジルには 催奇形性 は認められていない。
 丸山さんが飲んだのは、 抗男性ホルモン薬プロペシア など)ではないのか。自分の 飲んだもの のことを、ちゃんと把握してないとしたら、危険な話である。

あ、危険ついでに、フルーツ酸のことまで思い出した。鬱だ……。

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丸山さんからいただいた「乙葉のしっかり! 育毛キット」の全容。関係ないが、乙葉は口のほくろがなんともいい。

○「発毛時代」はどうなるんですか 

そういえば、飲用のミノキシジルを医者とつるんで処方するサロンが他にもあったはずだ。あれはどこだったろうか? 

「リーブ21はそういう(医者とつるんで薬物を投与する)ことをぎりッぎりの線でやってるんですッ! だけど、それをはじめの段階では絶対言わないし、表沙汰にもしないんですよ!」

 いや、リーブ以前にもあった……。

そうだ「発毛時代」だ。あれをやっていたのは、まさしく、ここ、アートネイチャーじゃないか。

 「発毛時代」は、メディカル発毛研究会という医者の団体とアートネイチャーが共同で立ち上げていたプロジェクトだ。
 アートネイチャーは症状の進んだ客を医者に送り、医者側は 未承認薬物 で治療する一方、客を紹介してくれた見返りに、アートネイチャー製ヘアケア用品を客にすすめるという、どうにもいただけないシステムで運営されていたという。当時は雑誌に内部告発記事が掲載されたり、現在でも、この 不透明な事実関係を追うサイト が存在している。

 つまりリーブのやってることって、まるっきり「発毛時代」と同じじゃないか? 

と、丸山さんの顔をうかがうが、丸ちゃんは我を忘れて喋りまくる。首の痛みをおして参加した今年のマスターズトーナメントをしのぐ気合いのはいりっぷりだ。

「それに! リーブのそれ(薬物治療)は保険効かないんで、べらぼうに高い! こんなもんじゃないですよッ(と、卓上の金額プランを叩く)それに、副作用あったらどうしようもない!」

 それはそうだ。だから、アートネイチャーは手をひいたのだろうか。
 リーブとは違ってかなり表沙汰にやっていたアートネイチャーの「発毛時代」だが、なぜか3年ほど前にぷっつりと終わってしまったのだ。


「私だってね、副作用なかったら、やりますよ! でもね、世の中ね、世の中!(と、壁の段階的増毛ポスターの段階1の写真、つまりかつての自分の頭を指し)こんなになった人がね、あんなに(増毛完了の写真を指し)生えるのはありえないんですよ! ……まあ、なったとしたら、 円形脱毛 の人です。あるいは、リーブ風に薬を使うか、あとタマ取ったりすれば、なりますよ。タマ!」

実はタマを取っても髪は生えないのだが、少なくともリーブの件はこれでおおよそ理解できた。

発毛率96.8%(この数値も意味がわからないが)とは、陰で医者に未承認薬物を使用させることでカバーしている数字であるかもしれないということ。

 これがはらむ問題としては、それならはじめからその手の医者に行けばいい話で、何も大金を払って育毛サロンに通う必要はないということだ。
 また、未承認薬物を医師が処方する事自体は違法でもなんでもないが、サロン側がそれらの成果を、まるで自分の施術の効果のように宣伝するのはいかがなものだろう。危険な副作用がある薬物を使用しているという事実は消費者に隠されたままではないか。
 実際、法的にはなんの問題もないのだろうか?
 ここらへんの真相は、リーブの潜入取材を待つばかりだ。

って、私がするんですか……。 

○日本毛髪業協会VS日本発毛促進協会

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業界の自主規制を徹底するために作られた日本毛髪業協議会のパンフレット。 ちなみに今は改組して日本毛髪業「協会」になっている。何故、丸山さんは、古いのをくれたのかは不明。
 「……えー、それでアートネイチャーとアデランスで、 日本毛髪業協会 というのを作ったんですが、リーブ21だけ入ってこないんですよ。なんでかっていうと、規制を決められちゃうと、あそこはねぇ、いろいろできなくなっちゃいますから」

 ただ、リーブ側の気持ちもわからんでもない。
 「なに言うとんねん、おのれも『発毛時代』『発毛時代』ってさんざ言うとったやろ! いったいどんな時代やねん」というつっこみが大阪から聞こえてくるようだ。(注:リーブは大阪の企業です)

社長たちを呼びつけて、ガキの喧嘩じゃねえんだからおまえらやめろと言いたい。和田アキ子に言わせてもいい。(注:和田アキ子はリーブ21のイメージキャラクターです)

 ちなみにリーブ21は、自ら発起人となり、 日本発毛促進協会 という名称の中間法人を設立している。

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日本毛髪業協議会パンフレットの中身。 「ご購入になった商品・サービスについてのご相談は下記へお寄せください」とある。 相談事ならたくさんある。あとでいっぱい電話してみよう。

この協会の参加企業を見てみると、リーブ21を筆頭に、エステサロンを経営している会社などが名を連ねており、また、これらの参加企業は、提携クリニックとして、赤坂CSクリニック、HT新宿クリニックなど、多数の美容外科・形成外科とつながっている。

発毛促進協会所属のサロンに行くと、いずれこれらのクリニックにひきわたされることになるのだろうか? 後日の潜入取材を待つばかりだ。

 って、これも私がするんですか……。

あの、僕の気のせいですか、単にサロン回ろうと思っただけなんですが、話が大きくなりすぎてませんか……。

○エステ業界と特定役務商法

「昔、エステで、エステ・デ・ミロードってあったでしょ、あそこがばんばんCMやってたんですけど、いきなりバーンってつぶれたんですよ。あそこはすごいやり方してましたよ。取れるお客さんからはたくさん取って、100万とか200万とかエステ(サービス)を売るわけですよ、何十回も契約とって。でも(金銭的に)厳しいお客さんには安くやるんですよ。その噂が広まっちゃって、キャンセル、キャンセル。バーンてつぶれちゃった」

--そうですね、今ネットなんかありますからね。すぐ広まっちゃいますよね。誰か、ぽろっと書いちゃったりしてね。

「これで、エステ業界てのは、厚労省から規制が入っちゃったんで、いろいろ決められちゃってるんです。価格も回数も決められちゃって、もう規則のなかでやらされちゃってるんです」

というより、こちら消費者側としてはカツラ・育毛サロン業界も規則の中でやってくれたほうが安全でありがたいのだが。

「それで、たとえばかつらとかもね、やっぱ値段があいまいなところがあったんです。昔は。アートネイチャーとアデランスはちゃんとやってたんですが、小さいところがね、いろいろそういうふうにやってきちゃって、厚生労働省から、声がかかっちゃったんですよ」

--はぁ、小さいところがねえ……。

(『声かかっちゃった』件の真相については、第三話 三章「アートネイチャーは調査改善勧告を受けたのか」を参照されたし)

「まあ、ウチでは、頭皮だけは100%良くなる。いや、わたし、結構勉強しましたからね。自分がこうなったから……」

○受けるか、受けざるべきか……?

--やっぱり、育毛やってたんですよね?

 「そりゃ、やりこみましたよ! でも、昔はヘアチェックなんてなかったですからね。(声のトーンが落ち、少し悲しげな目に)ウーロン茶で頭洗ったり、アロエやったり……本でニンニクがいいっていえばニンニク頭にこすりつけて痒かったりね(と哀しく笑う)。

……双田さんもね、えー、まあ、将来的に、ま、そうなっても仕方がない、構わない、っていうんなら、ウチのやる必要ないんですけどね。……で、体験、どうします?」

 正念場だ。丸山さんはじっと私を見ている。

フルーツ酸はおいといて、まじめな話……安易な気持ちでこの取材を始めてしまった私は、ここで本気で迷ったことを白状する。ここでやめておけば……そんな考えが頭をよぎった。

 この一回目のカウンセリングを受けただけで、必要と思われる取材対象の範囲は、当初予想していたものよりはるかに拡大してしまった。
 これはとうてい片手間でできる仕事ではない。
 単にサロンをまわるだけでなく、皮膚科にもあたらねばならなくなるし、消費者問題にも切り込んでいかねばならなくなるだろう。

良いサロンやクリニックがある一方、中にはひどい施術を行うところもあるかもしれない。なんらかのトラブルが起こるのは覚悟しなければならないだろう。

 ……だが、やる価値はある。「髪」から見えるものを調べ尽くすのだ。そして、知り得たことを知らしめるのだ。

私は腹を決めた。サロン体験を受けよう。

 私は、後日電話で予約すると丸山さんに告げた。

ちょっとしたテストだ。今ここで予約しろとごねてくるかと思ったが、そんなことはなかった。丸山さんは名刺を取り出した。

「僕に電話をかけてもらえますか。あるいは(名刺の裏に番号を書き込む)このフリーダイヤルにかけて、そうしたら折り返し私がそちらに電話します」

彼を通さないと予約が取れない。やはり、ノルマ制になっているらしい。帰りに丸山さんは、「乙葉のしっかり! 育毛キット」なるものをくれた。育毛剤のサンプルと、ヘアケアのガイドブックがついている。これを使ってみてくれとのことだった。

 さて、こうして初回のカウンセリングはとりあえず無事に終了した。

翌日、私はさっそくアートネイチャーに電話をかけた。折り返し電話をくれた丸山さんに、サロン体験日は10日後にお願いします、と告げる。 

実は、その10日の間に、すでに他のサロンのカウンセリング予約を入れてあるのだ。

 そう、リーディングカンパニー、アデランス。
 さて、どんなカウンセラーがどんな施術を行うのか、乞うご期待といったところである。

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読者コメント

2019/02/03 02:51
アートを恨む者2008/02/01 02:50
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記者からの追加情報

<予告> ああ、丸山さん、今から思えば、やはりあなたは紳士だった。 仏頂面のカウンセラー・木村の言動にいちいち切れかける私。オレは45を前に早くも完全サムライ頭になるのか? 戦闘態勢に入る客とカウンセラー! 次回アデランス第一話「木村さん登場」
企画「はげたくない!!」トップ頁
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