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「プルトニウムは飲んでも平気」大橋弘忠東大教授の“黒い兼業簿”

情報提供
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画像1:「プルトニウムは飲んでも平気」と発言した東大教授の大橋弘忠
 「プルトニウムは飲んでも平気」「水蒸気爆発は起こるわけない」と発言していた東京大学教授・大橋弘忠氏の“原発マネー”を東大に情報公開請求したところ、過去5年間に、産官学の“原発ムラ”から、計54もの兼業依頼を引き受けていることが判明した。兼業先での業務実態を議事録などから改めてチェックすると、内閣府の原子力委員会では、原発推進のための「やらせ」を示唆する発言をしたり、原発の安全性を重視するドイツのことは「勝手にやっていろ」と述べ、さらに原発事故の後でさえ全く反省の色を見せていないのだった。(兼業先が記された公開文書=全4ページは、記事末尾からPDFダウンロード可)
Digest
  • 大橋弘忠・兼業リスト
  • やらせを示唆…「プロレスで」
  • 兼業先独法の評価委員になりA評価連発
  • 福島第一原発事故後も無反省
  • 大橋「無回答」

福島第一原発から約45㎞離れた福島県飯舘村などからプルトニウムが検出されたことを政府が公表した(9月30日)。今後はエリアを拡大して分布状況を調査するという。どこまで飛んでいたのか計り知れない状況である。

あらためてプルトニウムについて述べるならば、『世界で一番美しい元素図鑑』(著: セオドア・グレイ、監修:若林文高、訳:武井摩利=創元社刊)によれば、「最高の猛毒元素」であり、「最も規制と管理が厳しい元素」である。そのため、「人体内許容基準は(略)ほかのあらゆる毒物よりも低く設定されている」(『日本大百科全書』=小学館刊)。

人体への影響は、「同位体の多くがアルファ線を放出し、著しい内部被曝を与える。微粒子を吸入した場合には、肺の深部に局所的に大きな被曝を与え、一般人の年接収限度は1億分の5gでしかないし、100万分の1gの吸入で1件の肺がん死を生じさせる」(『imidas』=集英社刊)。

要するに、地球上で最も飛んではいけない危険な物質が、国土に飛散したといえそうである。

 このプルトニウムについて、「飲んでも平気」と放言した学者がいる。東京大学大学院工学系研究科教授の、大橋弘忠氏(現職)だ。大橋氏は2005年12月25日の佐賀県「プルサーマル公開討論会」で、「格納容器が壊れるなんて思えない」「水蒸気爆発が起こるわけがない」「プルトニウムはなんにも怖いことはありません(略)仮に体内に水として飲んで入ってもすぐに排出されてしまいます」などと発言して物議を醸した。その発言は 議事録にしっかり残っている。以下の動画でも確認できる。

youtube →ニコ動

このような発言をする大橋氏は“原発マネー”とつながっているのではないか。そう考えて調べることにした。調査方法は2005年度~2010年度の、大橋氏に対する原発企業、団体からの資金提供(奨学寄付金、受託研究費、共同研究費)を示す文書と、兼業文書(東大教授以外で得た報酬)を、東大に情報公開請求したのである。

そして数カ月後、東大が文書を開示した。大橋氏は、やはり以下のように、“原発ムラ”の要職を兼業して稼ぎまくっていた。

大橋弘忠・兼業リスト

兼業依頼主 大橋氏の兼業職名 兼業期間
内閣総理大臣 原子力委員会専門委員 08/7/15~10/7/14、10/9/1~12/8/31
(独)原子力安全基盤機構理事長 技術情報調整委員会委員 05/12/19~07/12/18
経産省大臣官房政策評価広報課長 総合資源エネルギー調査会臨時委員 06/3/23~12/4/20
経産省 原子力安全・保安院長 原子力施設安全情報申告調査委員 06/4/1~07/3/31
資源エネ庁電力・ガス事業部 原子力政策課長 高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCT)プロジェクト評価委員会委員 10/11/24~11/3/31
資源エネ庁電力・ガス事業部 原子力政策課長 次世代軽水炉開発事業採択委員 08/4/11~08/6/30
文科省 研究開発局長 原子力損害賠償制度の在り方に関する検討委員会 09/1/15~10/1/14
文科省 研究開発局長 高速増殖炉サイクル実用化研究開発(FaCT)プロジェクトに係る評価委員会委員 10/11/24~11/3/31
日本原燃㈱ 代表取締役社長 「再利処理検討委員会」委員 06/5/16~08/3/31
日本原燃㈱ 代表取締役社長 「再利処理検討委員会」主査 08/5/1~11/3/31
三菱FPRシステムズ㈱ ■■■■■(墨塗り) 07/11/15~11/10/31
(財)エネルギー総合工学研究所 理事長 軽水炉等技術開発推進事業成果評価委員会委員等 06/10/2~07/3/30、09/2/12~10/9/30、11/2/18~13/2/17
(独)科学技術振興機構理事長 原子力研究開発領域主管 06/4/1~ー11/3/31
(独)科学技術振興機構理事長 科学研究費委員会専門委員 06/2/1~06/12/31
(独)日本原子力研究開発機構理事長 JMTR運営・利用委員会委 08/5/1~09/3/31
(独)日本原子力研究開発機構理事長 JMTR運営・利用委員会委員長 10/5/14~11/3/31
(独)日本原子力研究開発機構理事長 中核企業選定委員会委員 07/2/2~08/2/1
(独)日本原子力研究開発機構理事長 役員選考委員会委員 09/11/16~10/11/15
(社)日本電力協会原子力規格委員会委員長 原子力規格委員会運転・保守分科会委員 05/4/1~07/3/31
日本計算学会会長 評議員 2004/6/1 2006/5/31

報酬額はいずれも個人情報をたてに墨塗りになっているが、兼業の中身を上から見てみよう。

やらせを示唆…「プロレスで」

まず、内閣府の原子力委員会。大橋氏は同委員会の「新大綱政策会議」のメンバーだった。同委員会事務局によると、法律に基づき、この会議で原子力政策の大綱を決めて、エネルギー基本計画の原子力分野に反映されることになっているという。ある意味、政治家より決定権を持つ重職といっていい。

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画像2:原発をプロレスのように推進、と訴える

この会議で大橋氏は放言を重ねていた。例えば一回目の会議が行われた2010年12月21日(金)午前。そこで大橋氏は、冒頭から、「私もきまじめに一枚資料を昨日用意してまいりました(略)3点、全般的というよりも、思いついたことを書いてきました」といい、原発についての見解を説明し始めた。

驚いたのは、3点目の「ステークホルダー間の関係」と称して、利害関係者の電力会社や国、安全規制の機関、地元住民、国民の関係性について触れた時の発言だ。大橋氏は資料の末尾の「プロレス的なパラダイムを目指すべき」という珍妙な一文を示し、こう発言したのである。

「一昨日、京都で泊まっていたんですけれども、夜プロレスをやっていまして、プロレスというのは敵と味方がありまして、レフリーがいて、それを放送するアナウンサーがいて、観衆がいるんですけれども、余り深くは言いませんけれども、一致団結して前へ進めていくようなところがありまして、そういう何かガチンコな緊張関係じゃなくて、こういうプロレス的なパラダイムでこういう原子力にしても、何か物を進めるような議論を進めていくといいと思って、余計な一言を書きました」。

原発の安全性についての国民的議論を、真剣勝負ではなくショービジネスのプロレスのように進めるべきという趣旨の発言

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画像3:ドイツとスウェーデンをこきおろす

画像4:大橋の兼業簿(全4枚は記事末尾からダウンロード可)。コメ印がくだんの兼業先

画像5:自身がかかわる組織について、のっけからA評価を下す。その後もAを連発

画像6:福島第一原発事故後も全く反省の色がない

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sarutoru2011/10/19 18:51

>大橋氏に対する原発企業、団体からの資金提供(奨学寄付金、受託研究費、共同研究費)を示す文書と、兼業文書(東大教授以外で得た報酬)を、東大に情報公開請求

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JULY2011/10/19 12:32

「プルトニウムは飲んでも平気」は「どのくらいの量を、どんな風に」というのが抜けてるし、「水蒸気爆発は起こるわけない」に関しては、少なくとも今のところ起きてない。起きたのは「水素爆発」。

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sayoli2011/10/19 07:59

大橋さんは何を研究してたんだろう?

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