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東京電力、“ゆで蛙”たちの「最後の楽園」

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B 不良企業予備軍
(仕事2.0、生活3.3、対価3.2)
 「そんなん知ってたら行くかよ、と思いました」。東京電力に、事務系枠で入社した中堅社員がそう回想する。入社以来、検針業務が3年近くにも及んでいたからだ。研修の一環として短期間ならまだしも、とても有名私大卒の自分がそのような単純業務を3年もやるとは予想だにしていなかった。「入社後、最初に配属先を言われたときは、まあ1年だったら、と思っていましたが、3年は長かった。でもそれがこの会社では普通のことで、今でも5年間やる人だっているんです」
Digest
  • 大卒でも「検針3年当り前」の世界
  • 技術系部署には社内ランクがある
  • 「理屈ではない世界」の配電
  • 下積み5年は人間関係が大変
  • 「ほかから買わないでください」という営業
  • 配電を避けて一生東電がオススメ
  • 院卒社員、死を覚悟した1日のスケジュール
  • 殴る、蹴るが横行する研修
  • 労基署の指導で残業代300万貰った社員も
  • 「あのままいっても1千万円貰えちゃう」
  • 福利厚生施設が書き込まれた“電話帳”
  • 子会社、外注先に天下る

大卒でも「検針3年当り前」の世界

2008年4月、東京電力に入社したのは800人弱。うち大卒以上が約270人で、事務系98人、技術系176人だった(会社発表)。例年、7対3か6対4で技術系が多い。

ほとんどの新入社員は、支社に配属となる。「支社」というのは、「営業センター」と並ぶ顧客対応の末端現場組織で、埼玉県なら10支社、神奈川県なら8支社ある。各県に1つある「支店」の下の組織だ。つまり、東京・内幸町にある本店-各県の支店-支社の3階層となっている。

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東京電力の末端組織

支社は200~300人の組織で、さらにグループ分けされている。「総務」、「料金」、「技術サービス」、「営業」(窓口)、「法人営業」、「お客様サービス」、そして配電系×4(配電保守、配電設計、工事管理、制御)といったところで、それぞれにグループマネージャーがいる。

大卒事務系は、通常、「料金」グループの検針・集金担当か、「営業」グループの事業者向け担当、「技術サービス」グループの訪問サービス員としてキャリアをスタートさせることが多い。

通常の個人宅を回るような検針業務は、一般的にはアルバイトの人などがやっていると思われがちだが、実は準社員扱いで、ボーナスも数十万円出るなど、それなりの処遇を得ている。正社員が担当するのは、それよりも少し難度が高い検針、そして集金だ。

すなわち、高層ビルの屋上で検針場所が危険だったり、暴力団系のお客さんでそれなりにイレギュラーな事態が予想されたり、といった場合である。また、自家発電をしていて計算が複雑な顧客に対しても、正社員が行く。

「営業」グループのほうに配属される人は何をするかというと、営業をかけるわけではなく、要するに窓口対応だ。一般消費者対応ではなく、電気屋が工事の申込みなどにやってくる際に対応するなど、事業者向けに窓口で事務処理を行う。

「技術サービス」グループの訪問サービス員は、個人宅向けに、停電時に訪問して復旧作業を行ったり、電気契約容量(アンペア数)の増減相談対応、IHクッキングヒーターの取付け工事等もおこなう。要するに、作業着を着て(女性も同じ格好だ)、顧客の家を訪問し、ブレーカーの取替え(30→40アンペア)など簡単な電気関係の作業を行う。

これらの業務で身につくスキルはキャリア市場では役に立たないが、社内ではこのキャリアパスが昔からの慣習だ。「でも2年前から配属を多少、変えたんです。けっこう辞めてるからだと思いますよ」(同)。2006年の配属から、キャリア志向の新人もいることから、さすがにごく一部で、花形といわれる法人営業にいきなり配属させるケースも出てきたという。

だが、いまだに大筋では、現場の検針・集金・訪問サービス・窓口業務を3年ほど経験するというのが、同社事務系キャリアの定番であることに変わりはない。

技術系部署には社内ランクがある

「事務系なら3年我慢すれば、本店か支店にいける可能性がある。でも技術系は、最低5年はかかるんです」。院卒の技術系で入社し、今は別業界に転職した元社員(30代前半)が、技術系のキャリアを解説する。

大卒技術系は、ある年は約140人で、その大半を占める6~7割が、「配電・変電」に配属された。次に多い発電(火力、水力、原子力)への配属が2割ほどで、残り1割強が、その他の部門(土木、電子通信など)に散らばった。

技術系は、最初の配属で背番号がつき、一生、つきまとうという。「特に背番号がつくのは、火力発電、水力発電、原子力発電、変電、配電、電子通信、土木、建築です」(元社員)

社内では部門のランクが明確にあって、一番高いのは「系統運用」。これは中央指令室で指令を出すところだから、人間でいえば頭脳にあたる。次が「変電」。これは変電所などデカい設備を扱うため、優秀な人が多くないと困る事情もある。

「逆に、もっとも低いのが『配電』なんです。末端ですから」(同)。配電とは、文字通り電力を配給する現場の保守作業を行う部門だ。新人は、ここに配属される率がもっとも高い。技術系配属の6~7割が「配電・変電」で、そのうち7割が配電。つまり、約半数は配電からキャリアをスタートさせることになる。

具体的には、入社後、新人研修2週間→支店研修(4月下旬まで)→配属が決まって部門導入研修(支店)1週間→GW明けから配電部門の研修が5ヶ月(9月まで)という流れだ。

「理屈ではない世界」の配電

この5ヶ月間の研修は、旧東電学園(2007年3月閉校)敷地内にある全寮制の東電総合研修センター(東京都日野市)で実施。大卒、工業高校卒、高専卒と、みな一緒だ。「自衛隊みたいなところで、馬を鹿と言え、という世界です」。東京電力における東電学園というのは、トヨタにおけるトヨタ工業高等学園に似ており、

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東京電力のキャリアパスと報酬

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tkaburag12011/03/20 22:52

楽しすぎるな!次はNHKの番だな!“@syouda: 安定を求める人の超人気企業だったのに。RT @masa_mynews: 僕が東電内定してたら速攻で辞退だな。損害賠償請求→債務超過→資本注入→10年間ボーナスほぼゼロ。ゆで蛙のツケ。

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hsksyusk2008/06/02 11:28

東電はこういうこと続けられる体力があるんだったらもっとグリーン電力の買取量を増やせよ。

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