過労死企業名「開示せよ」 大阪地裁で国が全面敗訴 主張1つも認められず
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過労死企業名は開示できるか。大阪地裁の判断のまとめ。 |
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◇「公共放送業」記者、労災認定されても企業名はスミ塗り
過労死を出した企業名の開示を求める裁判で、大阪地裁の田中健治裁判長は今月10日、企業名の開示を命じる判決を下した。原告は、「全国過労死を考える家族の会」代表の寺西笑子さん。原告側弁護団は「全面勝訴」と判決を評価している。
争われたのは「処理経過簿」と呼ばれる文書に記載された企業名の部分。処理経過簿には、どの企業の、どのような職業の人が、どのような疾患を発症し、労災申請の結果はどうだったか、どこの労働基準監督署がいつ決定を出したのか--など、労災処理に関する経過が記されている。
一部が開示された処理経過簿からは、たとえば、公共放送業の記者・編集者が長期加重により脳内出血を発症、大阪中央労基署が09年1月5日に労災認定していることが分かる。生死の別は開示されておらず不明。企業名もスミ塗りされているが、業種が「公共放送業」となっていることから、NHKと思われる。
大学教員がくも膜下出血を発症したが、08年7月29日、茨木労基署により不認定となったことも分かる。やはり生死の別は不開示、所属していた大学名も明らかにされていない。
寺西さんは09年3月、大阪労働局が作成した処理経過簿のうち、「脳血管疾患および虚血性心疾患」を発症し労災認定されたケースに限定して企業名の開示を求めたが、労働局は、個人が特定されることを理由に企業名などの不開示とした。寺西さんは、この決定の取消しを求めて09年11月、大阪地裁に提訴していた。
脳血管疾患あるいは虚血性心疾患を発症して死亡した場合は過労死になるが、請求では生死の別は区別しなかった。
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判決の主文、請求、結論(原告弁護団提供)![]() |
裁判では大きな争点が3つあった。企業名が開示されると、(1)個人が特定されるおそれがあるかどうか(2)企業の利益を害するおそれがあるかどうか(3)行政の適正な事務遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうか、だ。
国が裁判で主張したのは、企業名が開示されると、(1)その他の情報と合わせて個人を特定できる可能性が生じる(2)企業の信頼を低下させ、取引で不利になる可能性が生じる(3)企業が労基署の調査に非協力的になる可能性が生じる、といった理由だった。
◇当初、不開示理由は1つだけ
裁判以前の段階で国側の主張は、企業名が開示されるとその他の情報と合わせて個人を特定できる可能性が生じるという1点だけだった。行政文書開示決定通知書から、請求内容と不開示理由を見ておきたい
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争点1「企業名は個人情報に該当するか」の各要素について、原告被告の主張と裁判所の判断のまとめ。
争点2「開示は企業の不利益になるか」の各要素について、原告被告の主張と裁判所の判断のまとめ。
争点3「行政の事務遂行に支障が出るか」の各要素について、原告被告の主張と裁判所の判断のまとめ。
判断に至らなかった争点の各要素について、原告被告の主張のまとめ。
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>判決文をもとに争点を整理して分かったことは、出したくない情報は無茶な理由をつけてでも出さない、という国の姿勢だった。
従業員を過労死させといて「(2)企業の信頼を低下させ、取引で不利になる可能性が生じる」 ってのは凄まじい論理だな
過労死企業名「開示せよ」 大阪地裁で国が全面敗訴 主張1つも認められず。判決文をもとに争点を整理して分かったことは、出したくない情報は無茶な理由をつけてでも出さない、という国の姿勢だった。
すごいな、まさか完全勝訴とは…これで労働者を食いつぶすような企業の汚名はずっとネットに残ることになる…
イェーイ!ブラック企業さんたち見てる?
なんかこういう裁判って勝てる訳がないと思ってたけどそうでもないのか
>争われたのは「処理経過簿」と呼ばれる文書に記載された企業名の部分
労働条件市場の活性化のためにはこうした情報開示が当然。
そもそも過労死させたとされる企業の名前って開示されていなかったのか。
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読者コメント
岡部喜代子裁判長は日本をより良くしようという意識が無いとしか言い様がない。その罪、悪影響はあまりに重い。
大阪労働局への情報公開請求で、従業員が過労死した企業名を開示しなかったのは不当として、「全国過労死を考える家族の会」の寺西笑子代表が国に不開示処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は2013年10月1日の決定で、原告側の上告を棄却。開示を認めなかった2審判決が確定した。
原告敗訴の模様。
今日午後に高裁判決と聞いています。まだ速報は出ていない模様。
今現在、この控訴審はどうなっているの?
次の判決は?
常に注目していたい。
和民の過労死問題
和民の過労死問題、ほとんどニュースにならなかったようですが、何か理由がありますか。
あれだけnhkなどに出て
いかにこ、世の中の為の企業
といったイメージをもっていました。
厚労省補償課「24日付で控訴した」とのこと。先ほど電話で聞いた。過労死企業名の情報公開訴訟。
官僚側につくのか、生活者側につくのか。死ぬまで働かせたいブラック企業側につくのか、人間らしく働きたい労働者側につくのか。戦後日本の経済成長至上主義の是非を問う裁判。この判決のまま確定させれば、民主党政権交代の意味はあったと言える。小宮山洋子大臣の政治生命がかかっている。
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