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過労死発生の36協定届で企業名スミ塗り 「労働条件が劣悪という認識を生じさせる」理由に

情報提供
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過労死発生企業の36協定届の開示請求書。回りくどい文面になっている理由は、本文で解説する。
 都内で過労死が発生した企業名の開示を求め、労災申請の処理経過をまとめた「処理経過簿」を東京労働局に開示請求したところ、企業名は「企業の不利益になる」等の理由でスミ塗りされた。一方、就職人気企業225社の36協定届の開示請求では企業名が開示され、6割以上の企業で過労死基準を超える協定を締結していたことが分かった。では「過労死が発生した企業の36協定届」で開示請求したらどうなるのか?処理経過簿と36協定届を組み合わせて請求し、日本独自の「KARO-SHI」発生原因とも言える国家ぐるみの企業利益優先主義(=人命軽視)と、役人による恣意的な情報隠しの実態に迫った。(開示文書はPDFダウンロード可)

 2009年1月のことだが、東京都内で過労死が発生した企業名の開示を求め、労災申請の処理経過をまとめた「処理経過簿」を東京労働局に開示請求したことがあった。いつ、どの企業で、どのような人が、何を発症し、どうなったか、労災申請の結果はどうだったか、といったことがズラズラと並んでいる文書だ。企業名は、「個人が特定されるおそれ」「企業の不利益になるおそれ」という理由でスミ塗りされた。このときの経緯は09年4月にマイニュースジャパンで報告した。→過労死発生の企業名を非開示 厚労省「出すと会社の不利益になるから」

 昨年の秋は、就職人気企業225社の本社の「時間外労働・休日労働に関する協定届」(通称「36協定届」)を開示請求し、6割以上の企業が過労死基準を超える労使協定を締結していたことが明らかになった。業務内容や社員数はスミ塗りされていたが、企業名は開示された。この結果も今年3月、マイニュースジャパンで報告した。→就職人気企業の6割が過労死基準超え 225社の36協定で判明 トップは大日本印刷の時間外1920時間

 処理経過簿の企業名がスミ塗りされた理由について東京労働局に話を聞いた際、担当職員は、「目的に関わらず、同じ文書を請求されたら同じ結果になる」「誰がどのような目的で開示請求しても同じ箇所が不開示になる」と説明していた。36協定届では企業名が開示されたのだから、「過労死が発生した企業の36協定届」という開示請求をしたら、どうなるだろうか。処理経過簿と36協定届を組み合わせて試してみた。

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東京労働局が開示した処理経過簿の一部。企業名がスミ塗りされている。

◇処理経過簿を開示請求 企業名スミ塗りは予定通り
 まず開示請求したのは、2009(平成21)年度の「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の処理経過簿」。これには、東京労働局管内で同年度に労災認定された死亡(過労死)12件が含まれている。もう1つは同年度の「精神障害等の処理経過簿」で、労災認定された自殺死亡(過労自殺)6件が含まれている。12件、6件というのは、厚労省の報道発表資料「平成21年度における脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況について」(2010年6月14日付け)の都道府県別件数を元にした。

 処理経過簿では企業名が開示されないことは、09年4月にマイニュースジャパンで報告している。スミ塗りされた理由は、(1)特定の個人を識別できる情報が記載されていること(2)法人の利益を害する情報が記載されていることーーの2つ。不開示理由は次のように説明されていた。→情報公開法

 開示する行政文書には、「氏名」、「生年月日」、「性別」などが記載されており、これらは特定の個人を識別できる情報であり、法第5条第1条に該当し、かつ、同号ただし書イからハまでのいずれにも該当しないため、これらの情報が記載されている部分を不開示とした。
 また、当該文書には、「事業場名」など、公にすることにより、法人等の権利、競争上の地位その他正当な利益を害する情報が記載されており、法第5条第2号イに定める不開示情報に該当するため、これらの情報が記載されている部分を不開示とした。

 企業名は不開示だが、労災申請の1件ごとに振られている番号は開示された。処理経過簿の左列の「No.」という欄がそれだ。ここまでは予定通り。今度は、その番号を指定して、「No.27の会社の36協定届」という開示請求をした。このような請求の書き方であっても、行政側が文書を特定できれば問題ない。

 ここから先は単純に36協定届の開示請求だから、死亡者の個人情報は一切記載されていないし、就職人気企業の36協定届と同じように、企業名が開示されるのではないかという期待があった。

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東京労働局が開示した過労死発生企業の36協定届。企業名がスミ塗りされている。

◇過労死企業の36協定届を開示請求 こちらも企業名スミ塗り
 処理経過簿に記載されている過労死企業の開示請求は、現在、大阪地裁で裁判になっている。以前、関係者に聞いたところでは、企業名が開示されると個人の特定につながるおそれがあることが、争点になっているという。従業員1万人の大企業であったとしても、処理経過簿では、○○労働局の○○署の管内にある○○支店、という扱いになってしまうから、従業員数が限られ個人の特定に繋がる、というのが国の主張らしい。

 そこで今回は、個人情報との関わりを回避するため、過労死が発生した企業の都内にある事業場、という広い括りで開示請求を出した

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東京労働局が開示した就職人気企業の36協定届。企業名(NTTドコモ)はオープンになっている。

3種類の開示決定通知書。開示請求の内容は上から、処理経過簿、就職人気企業の36協定届、過労死発生企業の36協定届。

過労死が発生した企業名の開示を求めた審査請求に対して、情報公開・個人情報保護審査会が出した答申の一部。

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jiangmin-alt2011/08/16 01:23

難しいミステリみたい。

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orangestar2011/08/10 11:38

なにをいっているのかわからない

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mmuuishikawa2011/08/10 10:08

まるで労働環境が劣悪ではないかのような言い訳

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mkusunok2011/08/10 09:14

入ってから知るんじゃ遅いのだから、こういう情報はちゃんと開示すべき

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読者コメント

一経営者2011/08/11 00:20
2011/08/10 14:52
HY2011/08/10 08:26
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