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築地→上海、鮮魚輸出計画の難航「国同士の問題大きい」(東市)

情報提供
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新市場「上海東方国際水産中心」に移転するはずだったが、計画どおりには行かないのが中国(日本の築地→豊洲移転も同様に進んでいないが…)
 前回の記事(「利益出てる店は1割だけ」上海の日本人和食店経営、厳しい現実)では、和食レストラン料理人の視点から、上海の飲食店経営の実態について報告した。今回は、東市築地水産貿易(上海)有限公司のトップ「董事総経理」(=マネージングディレクター)を務める丸山雄一氏(58歳)へのインタビューをお送りする。丸山氏は、築地市場内に本社を構える大卸の1社、築地魚市場株式会社(略称・東市=東証二部上場)の監査役まで務めた、この道35年のベテラン。日中双方の魚市場について、それぞれの現場で経営に関与し、実態を熟知している。
Digest
  • 月100万元どまりの売上
  • 「生きて泳いでる魚ほど鮮度がいい」中国
  • 血が回ってる刺し身
  • 中間層以上に、どう浸透させるか
  • 「国と国の問題」が大きい
  • 東京都が長崎県並みに支援すれば…

月100万元どまりの売上

上海の魚市場は、古くからある「銅川路水産市場」(浦東新区)が2007年末で完全に閉鎖し、「上海東方国際水産中心」(楊浦区軍工路)という新しい魚市場に移転することが決まっていました。

そこで我々は、2008年1月、上海に「東市築地水産貿易(上海)有限公司」を設立して、新市場のほうに店を構えたんです。日本からは、『長崎鮮魚』のブランドで展開している長崎魚市株式会社さんとうちの2社が進出しています。ところが2011年の今になっても、旧市場はそのまま賑わっており、市場の中心は、まだ銅川路のほうなんです。

どうやら、税収等をめぐっての、行政区同士の対立があるらしい。旧市場がある浦東新区としては、魚市場を、楊浦区のほうに取られたくない、と。

中国ではこういうことがあるのだということは、十分、進出する前に調べないといけなかった。甘かったんです。

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東市築地水産貿易(上海)有限公司の事務所

そもそも我々は「大卸」(=小売店とは直接取引しない)なので、築地でやっているように、市場内に店を構える仲卸店に対して販売するつもりで進出しました。築地から仕入れたものを、移転してきた市場内の仲卸店に売れれば、一番ラクだった。

ところが、市場自体が移転してこなかったから、旧市場内で営業していたほとんどの店も、移ってきていない。こちらはまだ、閑散としています。

そこで2008年から3年余り、自力で小売店も含めた販売先の開拓を進めてきました。日本に留学経験のあるLIUさんなど総勢4人体制で、レストランに飛び込みで入って、メニューを見て、食事をして、オーナーを呼んで名刺交換して、というところから始めたんです。

でも、うちは大卸だから、小売店への営業は、あまりやったことすらなかった。現在、月最低100万元(=1200万円)の売上をメドにやっていますが、ほとんど利益は出ていない状態ですね。売上の数パーセントとか…。

「生きて泳いでる魚ほど鮮度がいい」中国

3年やってわかったことは、第一に、中国では、貝・カニ・エビ類はありますが、鮮度のよいアジやイワシなど海の生魚は、現地では入手しにくいこと。これは、なかなか追いつかないでしょう。

日本からの輸入ではなく、こちらで同じ品質の海魚を入手するには、まず漁師に、魚の捕り方・扱い方を教えるところから始めないといけない。船の上での処理の仕方で品質に大きな差が出るからです。

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新市場の中はこんなかんじ。閑散としていた。倉庫街というイメージ。「銅川路水産市場」は水槽だらけだったが、こちらは水槽も少ない。

たとえば日本のブランドモノのサバは、「神経ジメ」をする。これは、出刃でシメるだけでもいいのですが、シメて麻痺させて脳死状態とすることで鮮度が保たれます。実は「シメてすばらしい魚」というのは、鮮度が悪いわけです

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メニュー表1枚で営業している店も多い。

こちらは長崎魚市の事務所。少し立派。

貿易が自由化されている香港では、とんかつ屋の銀座『梅林』でも刺し身のメニューが充実。日本と変わらない品質だった。養殖マグロ赤身3切れ=約1千円と若干高めか。ほぼ同じメニューが上海の『梅林』でも提供されており、価格は香港より2割増しくらい。

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jiangmin-alt2011/11/24 23:13

"そもそも築地の仲卸は、800あるうちの200くらいしか健全経営の店がない"

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