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安斉昭・東電杉並区議、昨春選挙で「2007年まで東電社員」と大手4紙の誤報誘導 経歴詐称の疑い

情報提供
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統一地方選の立候補者を掲載した2011年4月18日付各紙朝刊。杉並区議会議員選挙候補者・安斉昭氏の経歴は、4紙が誤って報じた。上から産経・東京・毎日・読売。朝日だけが正しく報道した。
 東電OBと思われていながら実は現職の東電社員として東電からも給料を貰っていることが発覚した民主党の安斉昭杉並区議(区監査委員兼任)が、東日本大震災後の昨年4月の統一選の際、新聞社の候補者調査に対して「2007年4月まで東電社員」などと、東電を退職したと理解するほかない回答を行い、結果として大手4紙が「元社員」と誤報を流していたことがわかった。誤報を流したのは産経・読売・毎日・東京の4紙。票への悪影響を恐れた安斉氏が、「東電隠し」を狙って、あえてうやむやな説明をしたためと思われ、巧妙な経歴詐称の疑いが強い。福島第一原発事故直後のどさくさに紛れて姑息な手段で有権者を欺いた安斉氏は、現在ホームページを閉じたまま取材にも応じず、雲隠れ中である。
Digest
  •  5紙中4紙が「元社員」と誤報
  •  産経新聞が代表して経歴調査、その結果は・・・
  •  「2007年まで東電社員」と安斉氏“虚偽”説明か
  •  安斉昭区議への手紙
  • 安斉議員を必死で守る和久井・事務局次長
  •  「私アルツハイマー入ってますから」と次長暴言

 5紙中4紙が「元社員」と誤報

 昨年4月17日に告示された統一地方選挙に、東電現職社員で杉並区議の安斉昭氏は2期目の出馬をした。その際、18日付朝刊の東京新聞は、安斉氏の経歴を「(元)東電社員」と誤って報じた。「“反脱原発”民主千葉県議も現職の東電社員 給料フタマタ疑惑に『僕の判断では言えません』」でも触れたとおりである。

では東京新聞以外の記者クラブメディアはどうだったのか。引き続き大手新聞4紙を調べたところ次のとおりの結果となった。

◆毎日新聞 「(元)東電社員」

◆読売新聞 「(元)連合地区役員、電力会社員」

◆産経新聞 「(元)電力会社員」 

◆朝日新聞 「東電社員」

(各紙の2011年4月18日付東京本社版朝刊に掲載された立候補者一覧より)

毎日と産経も、東京新聞同様に間違っていることがわかった。読売新聞の「電力会社員」という表記は、現職社員なのか、元社員の意味なのかはっきりとしなかったので、東京本社読者センターに候補者一覧の読み方を問い合わせた。応答した男性社員は次のように説明した。

「“二段柱”といって経歴を2つ載せるケースですね。この場合、原則として新しいものから載せています。最初の経歴に『元』とあれば、続く経歴も『元』の意味です。ですからこの場合、『元電力会社員』ということです」

読売新聞の「電力会社員」は、「元電力会社員」と解釈することが、これでわかった。

つまり、杉並区議選立候補者・安斉昭氏の経歴を正しく「東電社員」と書いたのは、5大新聞のなかで朝日新聞だけだったということになる。5紙中4紙までもが間違って報じたわけだ。

安斉氏の選挙公報に「東電」の文字はない。したがって朝日新聞の読者か、もともと事情を知っている者以外は、自分でよほど念入りに調べでもしない限り、安斉氏が現職東電社員である事実を知りようがなかったことになる。

いうまでもなく昨年4月という時期は、福島第一原発の事故が拡大中で混乱のさなかにあった。計画停電や節電、自粛の呼びかけも盛んになされた。東電に対する批判も高まっていた。そうした状況下での選挙である。候補者の肩書きが「東電社員」と報じられるか、「元東電社員」と報じられるかによって、有権者の受ける印象はぜんぜん異なっただろう。

4月24日の投票で安斉氏は2522票を獲得して当選した。48議席中34位。当落ラインは2100票あまり。もし現職の東電社員という正しい肩書きが報じられていれば、間違いなく票が減っただろうし、場合によれば落選したかもしれない。

安斉氏は東電の元社員だ、または電力会社の元社員だ――てっきりそう思い込まされて、杉並区の多くの有権者は投票を行った。すっかり騙されたわけだ。

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安斉氏の候補者情報は、産経新聞が5紙を代表して、2010年11月に調べたという。同紙がつくった調査票の「代表的職業」欄には当初「杉並区議会議員」とあり、同紙の追加調査で「1988年4月~2007年4月まで東京電力社員」との情報が書き加えられた。これが誤報の原因とみられる(写真は、政務調査費で作成した安斉氏のパンフレットより)。

 産経新聞が代表して経歴調査、その結果は・・・

念のため安斉氏がはじめて杉並区議会議員選挙に立候補した2007年4月当時の新聞も調べてみた。するとやはり間違いが見つかった。4月16日付読売新聞が「元電力会社員」と報じている。なお、このときは、ほかに東電なり電力会社の肩書きを伝えた新聞はなかった。

2007年以来2度の選挙を通じて、安斉氏の肩書きを新聞が「東電社員」と正しく報じたのは、昨年4月の朝日新聞の記事、ただ一度。一方、「元東電社員」という誤報は4紙が五度にわたって流したことになる。

それにしても――と筆者は不思議な思いに駆られた。大新聞ともあろうものが、なぜ、候補者が「現職社員」か「元社員」かという基本的なことを誤ったのか。かつて『山陽新聞』(本社・岡山市)で新聞記者をした経験からいうと、新聞社にとって選挙報道はもっとも神経を使う分野である。氏名・所属政党・年齢・経歴――これらの事実を絶対に間違ってはならない、と徹底的に教育される。選挙報道のミスは重大で、ときには出世に響きかねない。緊張感があった。

筆者が新聞社を辞めたのは10年前だが、こうした姿勢はいまも変わっていないだろう。それが1紙ならともかく4紙がそろって間違っている。

いったい何があったのか。事情を確かめるため、誤報を流した毎日・読売・東京・産経――の各新聞社に質問をファクスで送った。

 〈…昨年4月1日の紙面で、杉並区議会議員選挙立候補社一覧中、「安斉昭」氏の経歴が「元東京電力社員」「元電力会社員」となっております。東京電力によれば、安斉氏は東京電力の現職社員だということです。なぜ元社員という誤った報道になったのか、いきさつと理由をお聞かせください〉

毎日、東京、産経は2月2日付、読売新聞は2月6日付で送った。

反応がもっとも早かったのは東京新聞だった。ものの2時間もしないうちに電話があった。読者応答室という部署のスズキ氏という男性だ。ちなみに東京新聞は、マイニュースジャパンの記事を後追いする形で、安斉区議が現職東電社員であることを報じた唯一の新聞である

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安斉昭・杉並区議が東電の現役社員であることは、表向き知られていなかった。だが、自民党の議員のなかには「知っていたよ」とささやく者もおり、知らぬは有権者ばかりの公然の秘密になっていた可能性がある。写真は安斉氏の不在を示す杉並区議会の電光掲示板(2012年2月6日)。東電荻窪支社に出勤中かどうかは不明。

安斉昭氏にあてた質問状。選挙報道に関する誤報の件、2008年の原子力施設視察に関する件を尋ねた。視察は東電の主催で、当時から疑問視されていたが、安斉氏は東電との関係をおくびにも出さず、パクリのことも隠したまま、純粋な議員視察であることを強調していた。

安斉氏の議員事務所(上)。家賃8万5000円の半額は杉並区の税金である政務調査費で落としている。何度か訪ねたが不在だった。東京電力荻窪支社が安斉氏の普段の勤務先だという(下)。区議会事務局に出したのと同じ質問状を職場にもことづけた(2012年2月6日)。

安斉氏あてに手紙をことずけようとしたところ、頑なに拒んだ杉並区議会事務局の和久井義久次長。理由を尋ねるうちに、一応受け取ったものの「(渡せるのは)3年後か5年後かわからない。忘れるかもしれない。アルツハイマー入っているから」などと暴言を述べた。議員からなんらかの働きかけがあった可能性は否定できない。(2012年2月6日)

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cloudliner_tweets2012/03/05 07:42

「2007年4月まで東電社員」などと、東電を退職したと理解するほかない回答を行い、結果として大手4紙が「元社員」と誤報を流していた

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abcb22012/02/09 23:44

わーい。

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Yoshitada2012/02/08 17:04

何で直接「給与」として金を貰うことにこだわったんだかなぁ。案外、東電から「政治家」として見てもらえてなかったってことなのか?<それも変な話だが。

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三宅勝久2017/06/28 13:02
界田 信雄2012/04/09 18:00会員
hk73912012/02/08 21:00
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記者からの追加情報

 東京電力荻窪支店に安斉昭氏あての質問状を預けた件について、2012年2月7日、東電東京本店広報部から、「(質問の)手紙は7日までに確かに安斉に手渡しました」との連絡があった。
 また、9日付で毎日新聞東京本社社会部統括副部長・清水忠彦氏から、安斉昭氏の経歴に関する誤報について「2011年東京都区議会議員選挙立候補者の経歴は、在京5紙N共通調査表に基づいて作成し、本人または陣営事務所の確認を得たうえで掲載しました」とする回答があった。
 なお、写真説明中一部「2012年」のところを「2011年」と誤っていました。お詫びの上訂正いたします。(三宅勝久)
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