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最高裁判事の半数が天下り 法律事務所に30人中10人が再就職、癒着の温床に

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日本最大の法律事務所・西村あさひ法律事務所のホームページ。顔写真は、外交官から最高裁判事を経て、弁護士になった福田博氏。
 今世紀に入ってから退官した最高裁判事30人のその後を調査したところ、半数が弁護士事務所や企業、それに大学などに天下っていることが分かった。大学はよしとして、問題なのは、前職が弁護士でないにもかかわらず弁護士事務所へ天下りした4人を含む、TMI総合法律事務所など特定の弁護士事務所と最高裁との関係で、これでは公正な判決は到底、期待できない。また、下級裁判所の判事や検事などその他の司法官僚の中にも、弁護士事務所に天下りする例が多数みられたほか、逆に弁護士事務所から官庁へ多くの弁護士が出向していることも判明した。司法制度改革で先にやらねばならないのは、法律事務所と裁判所の癒着の温床を一掃する作業であろう。
Digest
  • 判事・外交官から弁護士事務所へ
  • 弁護士職へ復帰
  • 企業への天下り
  • 判事と検事の交流制度
  • 西村あさひ法律事務所
  • 長島・大野・常松法律事務所
  • 森・濱田松本法律事務所
  • アンダーソン・毛利・友常法律事務所
  • 弁護士事務所から省庁へ出向

司法官僚らの弁護士事務所への天下りが公平な裁判の土壌を破壊するのでは?人脈への配慮や個人的な情が、判決を書く裁判官に影響を及ぼしかねないから--このような懸念から、司法官僚らの天下り、あるいは再就職の実態を調査した。

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最高裁判所の大法廷(最高裁のホームページより)

言うまでもなく司法官僚の代表格は、最高裁判事である。

今世紀に入ってから退官した最高裁判事は、ちょうど30名。この30名のその後を調査したところ、定年が70歳ということもあってか、大半は「旭日大綬章」を貰って第一線を退いているが、15名の元判事は「再就職」していることを確認できた。

かつては公証人役場への再就職が多かったといわれるが、現在は少し様相が異なるようだ。

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最高裁元判事に贈られる勲章「旭日大綬章」。

15名の内訳は次の通りである。

1、大学教授:3名

2、弁護士事務所へ天下り(前職は弁護士ではない):4名

3、弁護士に復帰(前職は弁護士):6名

4、民間企業へ天下り:2名

このうち公正な裁判の土壌という観点から考察しなければならないのは、「2」「3」「4」である。

なお、そもそも最高裁判事とは、どのようなキャリアを経て就く職なのか、については、明治大学の西川伸一教授が、『最高裁事務総局の実像に迫る』と題する論文で的確な説明を行っているので、それを引用しておこう。

 最高裁裁判官15人の出身別構成は、裁判官6、弁護士4、検察官2、行政官1,外交官1、大学教授1が慣例化している(ただし、現在は行政官2、外交官0)。すなわち、最高裁裁判官のうち9人は裁判官の経験がなく、さらに3人は司法試験を経ていない。最高裁は法律の運用や解釈に最終判断を行うことから、狭い法律専門家的観点に縛られない識見をそこに反映させるため、というのがその理由である。 各枠に欠員が出れば同じ枠から後任が選ばれる。

判事・外交官から弁護士事務所へ

前職が弁護士ではないにも関わらず、最高裁判事を退官した後、弁護士登録をして弁護士事務所に職を得たのは、次の方々である。括弧内は再就職先。

■今井巧(TMI総合法律事務所)

■泉徳治(TMI総合法律事務所)

■甲斐中辰夫(卓照総合法律事務所)

■福田博(西村あさひ法律事務所)

今井巧氏は最高裁判事になる前は、東京高裁の部総括判事だった。泉徳治氏は東京高裁の長官だった。甲斐中辰夫氏は、東京高等検察庁検事長。また、福田博氏は外交官で、最高裁判事を退官した同じ年、2005年に第一東京弁護士会で弁護士登録をして弁護士に転身し、西村あさひ法律事務所へ入った。

ちなみに西村あさひ法律事務所は、500名近い弁護士が在籍している日本最大の法律事務所である。今井氏と泉氏の再就職先であるTMI総合法律事務所も、弁護士人数が200名(全国で5位)を超える巨大法律事務所である。

繰り返しになるが、元判事の天下りにより、弁護士事務所と裁判所の間に人脈が成立するわけだから、公平な裁判という観点からは明らかに問題がある。法廷内では弁護士と判事が完全に独立していても、両者が年賀状などを交換する間柄であれば、なんらかの感情が判決に影響を与えかねないと考えるのが自然だ。

さらに問題なのは、天下りが慣行化してしまうと、判事の側が、みずからの再就職を意識して、天下りを受け入れる体制がある大規模法律事務所の側に優位な判決を下す可能性が生じる。いずれにしても天下りは、公平な裁判を妨げる大きな要因になる。

弁護士職へ復帰

最高裁判事になる前の職が弁護士で、最高裁判事を退官した後、弁護士に復帰したのは、次の方々である。この中には、大規模な法律事務所へ再就職した者もいる。括弧内は所属先の弁護士事務所と規模ランキングである。

■才口千晴(TMI総合法律事務所、5位)

■濱田邦夫(森・濱田松本法律事務所、3位)

■元原利文(多聞法律事務所)

■遠藤光男(高須・高林・遠藤法律事務所)

■河合伸一(アンダーソン・毛利・友常法律事務所、4位)

これらの人々も、最高裁判事の仕事を通じて裁判官との人脈を構築している。特に大きな法律事務所に元最高裁判事が天下った場合、事務所が請け負っている訴訟の件数も多いわけだから、司法界の信用に大きな負の影響を及ぼすことにもなりかねない。

企業への天下り

最高裁判事が民間企業に天下った例としては、「原発は安全」とする判決を下して東芝を勝訴させた味村治判事が、1994年2月に退官した後、東芝へ天下った例が有名だ。ただ、今回の調査は今世紀に入ってから退官した最高裁判事が対象なので、ここでは取り上げない。

今世紀に入ってから民間企業へ天下ったのは、次の方々である

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丸紅の2007年度の株主・投資家情報には、取締役として、藤井正雄・元最高裁判事と、オウム狙撃事件の国松孝次・元警察庁長官が名前を連ねている。

元最高裁判事の甲斐中辰夫氏は、法廷闘争に巻き込まれたJALや、株主訴訟の危機にあるオリンパスから、引っ張りだこになっている。

森・濱田松本法律事務所の野村修也弁護士の経歴。「公務等」の部分からは、金融庁との親密な関係が読み取れる。この事務所からは、金融庁へ頻繁に弁護士が出向している。

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