29ヶ月欠勤の非常勤選管委員に満額報酬530万円支給 杉並区のあきれた税金泥棒ぶり
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半年病欠した杉並区選管委員に対して140万円の報酬を払ったことの是非を問う訴訟のなかで、区側が昨年10月に提出した乙5号証「選管委員欠席状況」。磯部潤一氏の欠勤は9ヶ月間、昭和58(1983)年~61(86)年の欠勤はないと記載されている。だが、じつは磯部氏の欠勤は85年から始まり、29ヶ月に及んでいた。 |
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- 「29ヶ月欠勤」を「9ヶ月欠勤」と偽った杉並区
- 杉並区選管委員「おサボり自由」の伝統
- 選管会議録総点検でウソ発覚
- 会議録をみれば一目瞭然の「29ヶ月病欠」
- 議会での追及にシラをきる事務局長
- 決算書が物語る29ヶ月欠勤でも満額支給のボッタクリ
- のらりくらり意味不明の局長
- 「税金盗用型ヤミ老齢年金」としての選管委員報酬
「29ヶ月欠勤」を「9ヶ月欠勤」と偽った杉並区
杉並区代理人 「乙5号証の件ですが…見落としていたものと思われます…」
裁判長 「その点も含めて次回までに反論・釈明してください」
杉並区代理人 「わかりました…」
12日午前、MNJでも報告した「半年病休の選管委員に公金140万プレゼント、杉並区監査委員もお墨つき 区民は返還訴訟へ」裁判=平成23年(行ウ)292号=の第4回口頭弁論が、東京地裁522号法廷であった。原告は筆者をはじめとする杉並区民有志、被告は杉並区長である。冒頭はそこでの被告・杉並区代理人と八木一洋裁判長とのやり取りだ。
6ヶ月休んでカネをもらった件の是非をめぐる裁判のなかで、29ヶ月間も休みながら月額報酬を支給された選挙管理委員がいたことが発覚した。払われたカネは約530万円。唖然とするような事実が明るみになった――。当事者以外にはわかりにくいのだが、上の会話は、そういう衝撃的な事実発覚を前提としたものだ。
裁判については後述するが、法廷でのやり取りの意味について、簡単に説明しておこう。
「乙5号証」とは、過去の選管委員の欠勤状況をまとめた区選管作成の文書である。昨年9月に区が証拠提出た。その文書には、磯部潤一という選管委員が9ヶ月欠勤した旨記載されていた。ところが、筆者ら原告が独自に検証した結果、欠勤期間は9ヶ月どころではなく、29ヶ月に及ぶことが判明した。
29ヶ月も欠勤しているものがなぜ「9ヶ月」などとなったのか。常識ではあり得ない。被告側は意図的に誤った説明をしてきたのではないか――この日、原告側は、提出した準備書面を通じて、被告を追及した。
「見落としていたものと思われます…」という被告代理人の言葉は、この追及に対するとりあえずの言い訳である。八木裁判長は、ちゃんと文書で反論・釈明するよう促し、「わかりました」と被告代理人が答えた。そういうやり取りである。
「見落としていた・・・」と話す被告代理人の表情は、心なしか引きつって見えた。
次回期日は5月23日午後1時45分、東京地裁522号法廷である。この日までに杉並区は「29ヶ月問題」について、なんらかの公式な回答をしてこなければならない。何を言ってくるのか楽しみである。
◇「条例に基づいて支払った。違法ではない」
さて、以下、裁判の経緯を追いながら「29ヶ月問題」についてもう少し詳しく説明しよう。
まずは「半年病休の選管委員に140万円」裁判の概要である。すでに報じたとおり、杉並区の選管委員だった本橋文将氏(区議OB)が2010年5月に重病となり入院した。同年10月に辞めるまで選管の仕事をすべて欠勤したのだが、区は月額24万2000円の報酬を払い続けた。しめて140万円にのぼる。
選管委員というのは非常勤で、かつ月3~4回の会議しかない暇な仕事だ。そこに何十万円もの月額報酬を払うことについては日本各地で批判が高まっている。日額に見直す動きもある。本橋氏の場合、その月数回の仕事すら果たすことができなかった。気の毒だが、カネは払わないというのが民間の常識だろう。ところが杉並区はしっかりと払った。
勤務実態のない委員に月額報酬を支給するのはおかしい――。
疑問を持った筆者ら区民有志は、まず住民監査請求を申し立てた
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選管委員の過去の欠勤状況について、その理由を述べた被告・杉並区の書面。「なお。欠席理由については不明である」と書かれている。理由なしで勝手に「サボれる」状況にあったことが伺える。2011年10月26日付被告準備書面より。
磯部潤一委員の欠勤は9ヶ月という杉並区選管委員事務局長作成の証拠が誤りで、本当は29ヶ月だったことを裏付ける選管会議録。これyほど多くの欠勤をなぜ証拠に記載しなかったのか。単純な見落としと考えるには無理がある。
杉並区議会予算特別委員会で、「29ヶ月問題」を追及され、答弁に立つ根本信司・区選挙管理委員会事務局長。報酬を払ったのか、という奥山妙子議員の質問に対して、「その当時のことは私はわかりません」と述べた(2012年3月9日)。
磯部潤一氏が選管の仕事を29ヶ月間欠勤していたころの杉並区決算書。上から85年度、86年度、87年度。磯部氏を含む委員4人に対して満額の報酬が払われた事実を裏付けている。だが根本選管事務局長は取材に対し、「私自身がそれ(決算書)をみても払ったかどうかわからない」などと支出を決して認めようとはしなかった。
半年間病気で入院し、選管の仕事を欠勤した本橋文将氏について、杉並区は裁判のなかで「自己研鑽」「自己啓発」に励んだ、などとして選管の職責をまったくはたさなかったわけでない、などと述べた。だが、カルテによれば本橋氏の病状や後遺症はきわめて深刻で、自己研鑽どころではないことは明白だった(選管委員の報酬をもらいながら本橋氏が入院していた杉並区内の病院)。
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いくらでも金は転がってるもんだな・・・
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