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半年病休の選管委員に公金140万プレゼント、杉並区監査委員もお墨つき 区民は返還訴訟へ

情報提供
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病気で半年休んだ区議OBの選管委員に140万円が払われた問題で、「違法性はない」とお墨つきを与えた監査委員の四居誠(左)と茂木信(右)両氏。区幹部天下りの四居氏の報酬は4年の任期で6000万円超。茂木氏も2008年6月29日の就任で6月分30万3000円の報酬を満額で受け取りながらダンマリを決め込んでいる。
 「5つ星の区役所」を掲げる東京都杉並区(約55万人・田中良区長)。東日本大震災では南相馬市の支援にいち早く乗り出し、義援金の募集にも余念がない。だがこれらの「善行」の裏で、組織ぐるみの税金ネコババが進行中だ。半年も病休していた選挙管理委員に、満額報酬の140万円がプレゼント同然に支給されたのである。本人に返金の意思はなく、頼みの監査委員も「違法ではない」とお墨つきを与える始末。自浄能力を失った組織に巣食う“税金泥棒”を取り押さえるため、筆者は杉並区民の1人として、住民訴訟を起こすことにした。(監査結果等は記事末尾でPDFダウンロード可)
Digest
  • 杉並区ボッタクリの歴史
  • 病休半年で140万円支給が「合法」の不思議
  • 「監査委ボッタクリ報酬」裁判敗訴でも反省知らず?
  • 無能指摘されて逆切れした斉藤監査委員
  • 杉並区監査委・選管委の未解決税金泥リスト
  • 「税金泥棒許すまじ」と訴訟準備進行中

杉並区ボッタクリの歴史

〈杉並区職員措置請求監査結果(元選挙管理委員の報酬に関する住民監査請求)〉
 4月18日、筆者は杉並区役所を訪れて、監査委員事務局職員からこんなタイトルのついた文書(記事末尾でダウンロード可)を受け取った。文書はA4版両面印刷40ページで、作成者は杉並区監査委員。中をめくり、結論部分には次の一文があった。
〈請求人の主張は理由がないものと認め、棄却する〉

2ヶ月前の今年2月10日、筆者は「住民監査請求」という手続きを杉並区監査委員に対して行った。住民監査請求とは地方自治法で定められた国民の権利で、地方自治体の公金の使い方について住民が「おかしい」と思った際、監査を要求することができる制度だ。「監査結果」と題する先の文書は、2月の住民監査請求に対する回答だった。

監査委員として住民監査を実施したのは4人。四居誠・代表監査委員、茂木信・常勤監査委員、斉藤常雄・非常勤監査委員(区議)、小野清人・非常勤監査委員(同)である。

棄却――それが彼らの出した結論だった。すなわち、税金の使途がおかしいという筆者の指摘に対して、「おかしくない」というのだ。 

筆者が「おかしい」と思ったのは、選挙管理委員の本橋文将氏という人物に対するカネの払われ方についてである。本題に入る前に、背景事情について少し触れておく。

本橋氏は自民党の元区議で、引退後の2007年12月27日付で選挙管理委員になった。選管委員の報酬は月額24万2000円。出勤は月にせいぜい数日。それもフルタイムではなく、拘束時間は1時間たらずかせいぜい2時間。これだけでも税金泥棒といいたくなるような高額報酬だが、驚くのははやい。

本橋氏が選管委員に就任したのは07年12月だが、その月の報酬の払い方が巧妙だ。12月27日に就任したのだから、12月の在籍日数は休日込みで5日間。うち平日は2日間。年の瀬で仕事はほとんどなかった。そして報酬だけは12月分として1ヶ月24万2000円が満額で払われたのだ。

一方、2007年12月26日付で退任した前任の選管委員にも12月分が満額支給された。ダブル支給というわけだ。

選挙管理員や監査委員という非常勤行政委員を月末に就任させ、仕事はなくても1ヶ月分を満額で払わせる。このボッタクリの手口は杉並区に古くから伝わる悪習だった。かつて筆者は、同様の手口による別の非常勤監査委員のボッタクリ報酬をめぐって訴訟を起こし、勝訴した。

 この裁判は、2009年5月30日付で監査委員に就任して5月分15万1000円を満額で受けとった関昌央区議(自民)と河津理恵子区議(民主)に対して、区長に返還させるよう求めたものだ。裁判に先立って住民監査請求を申し立てたところ、四居誠・茂木信両監査委員は「条例どおり払ったから問題なし」と棄却した。仕方なく東京地裁での裁判に移行したのである。

裁判のなかで区側は「合法だ」と言い続けたが、2010年9月30日の判決はこれを受け入れず、「違法」だとした。筆者の勝訴、区側の完全敗訴だった。勤務実態がほとんどないのに満額支給を可能にした条例は違法だというごく常識的な判決だった。(判決文は記事末尾でダウンロード可)

だが、司法の場で裁きを受けてもなお、杉並区がボッタクリ文化を反省している様子は乏しい。ほとんど働いていないのに2007年12月分としてもらった24万2000円を、本橋氏がいまも返還していないことをみてもわかる。そして後述するとおり、同様のボッタクリ報酬に口をぬぐっている選管委員や監査委員は本橋氏だけではない。

病休半年で140万円支給が「合法」の不思議

本橋氏の報酬をめぐるさらなる問題が浮上したのは、前述のような無反省な税金泥棒事情を憂いていたさなかのことだった。

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選管委員を病気で半年休みながら満額報酬140万円を受け取っていた区議OBの本橋文将氏。自主返金の意思はないという。、

端緒は選管委員だった本橋氏の突然の辞任にあった。任期途中の2010年10月25日付で、「一身上の都合」で辞めたのだ。その理由を調べているうちに、ひとつの事実が発覚する。じつは同年5月はじめに脳梗塞で倒れていたという。入院して手術をするほどの大病だった。

5月に倒れてから10月にやめるまで6ヶ月間。選管委員としての勤務はゼロだった。当然のことだろう。だが問題はカネの払われかたにあった。月額24万2000円の報酬が払われ続けたのだ。6ヶ月分145万2000円がいったん払われた後、10月分については日割り計算がされて5日分を返金する手続きがとられた。結果、支給総額は差し引き合計約140万5162円にのぼった。

むろん、病気になったことは気の毒である。だがそのことと税金をどう使うかは別の問題である。半年病休で140万円。やらずぶったくりである。こんなことがまかりとおっていいのか、と筆者は選管事務局に問い合わせた。

――違法性はないんですか。返還させることはできないんですか?

事務局は答えた。

「条例どおり払っていますから…」

本橋氏の自宅にも電話をかけた

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「5つ星の区役所」をうたう杉並区だが、監査委員や選挙管理委員の報酬をめぐっては23区でも類のないデタラメな金の払われ方がなされている。

外部監査を求める理由に監査委員の能力不足を挙げたところ、その理由が理解できずに逆ギレし、監査委員としての無能さをあらわにした斉藤常雄氏

「病休半年で140万の報酬」に、監査委員としてお墨付きを与えたひとり、小野清人区議

杉並区役所に設置された義援金用の箱。区民に寄付を募る一方で、監査委員や選管委員の税金泥棒は放置されたままだ。

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sidfph222011/04/24 17:38

公金の不適切な支出の一例。杉並区の例は氷山の一角でしょう。/半年病休の選管委員に公金140万プレゼント、杉並区監査委員もお墨つき 区民は返還訴訟へ:MyNewsJapan

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三宅2015/11/28 20:19
編集部2011/05/07 01:42会員
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記者からの追加情報

半年病休した選挙管理委員に140万円の報酬を満額支給し、監査委員がこれを合法とした問題で、筆者は本日(2011年5月6日)、杉並区長を相手どって住民訴訟を東京地裁に起こした(訴状は記事末尾よりPDFダウンロード可)。原告は筆者のほか区民有志6人。事件番号は平成23年(行ウ)292号、担当部は民事3部と決まった。費用は予納切手6000円分(あまれば返還される)で、印紙代は後日金額が確定してから払うことになった。通常は1万3000円となることが多い。(2011/5/7追記)


文中、議員の肩書きは4月17日の杉並区議選告示前時点である。
本文:全約7400字のうち約5200字が
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