満席568席で券売りまくり947枚!杉並区長「講演会」のカラ席商法
山田宏・東京都杉並区長(上)と、山田氏の後援会「杉並No・1の会」が主催して開かれた政治資金パーティ「講演会 2009年日本の危機とゆくえ」のチケット(下) |
- Digest
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- 山田宏後援会「収入184万円」の内訳
- 「会場が空くと格好悪いから」幽霊席販売
- 人はなぜパーティ券を買うのか
- 「政調費でパー券」認めたトンデモ監査
- 代表監査委員四居氏は区幹部の天下り
- 「パー券代返させなさい」と山田区長を提訴
- 「説明する必要なし」とプリプリの富本議長
山田宏後援会「収入184万円」の内訳
山田宏・杉並区長後援会「杉並No・1の会」は東京都選挙管理委員会に届出をしている政治団体だ。この団体の2008年1年間のカネの出入りが公開されたのは去る9月17日、平成20年分政治資金収支報告書の公開によってである。都選管のインターネットでも閲覧できる「No・1の会」の08年分収支報告書には、2008年1年間のカネの出入りについて次のように記載されている。
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筆者が注目したのは②の記載である。「機関紙の発行その他事業による収入」189万4000円。いったいどんな事業をやったのだろう。
報告書をめくっていくと「事業」の内容がわかってきた。「2009年日本の危機とゆくえ」と題する講演会で、日時は2008年12月8日、杉並区の区営施設「セシオン杉並」で開かれたらしい。
会場に使われたセシオン杉並に問い合わせることにした。管理するのは杉並区社会教育センターという区の部署だという。No・1の会の申し込み書類が残っているというので情報公開請求をして入手した。
そうやって得た情報によると、講師は山田宏区長とジャーナリストの櫻井よしこ氏で、会場費は7万円あまり。政治資金規正法で定める「政治資金パーティ」として開催され、チケットは一枚2000円で売られている。
2000円というのはずいぶん安い。政治資金パーティの一番の目的はカネ集めだ。チケットを安売りして儲けがなければ意味がない。No・1の会はチケットを何枚くらい売ったのか、気になった。
単価2000円のチケットで収入が189万4000円。チケットの販売数を知るには単純な割り算をすればよい。
1,894,000÷2,000=947枚である。
前述の杉並区立社会教育センターにホールの座席数を尋ねた。直接中を見せてほしかったが、あいにく使用中でできないという。それでも席数はすぐに教えてくれた。568席だという。立ち見を入れればもう少し入るのですね、と聞いたところセンターの職員は、
「立ち見は認めていません」
と即座に否定した。
「防災上の理由から立ち見はいっさい認めていません。通路幅120センチは確保しないと避難時に危険ですから」
満席で568席。それ以上は車椅子席などの特別席を除いていっさい入場できないのだと、職員はきっぱりと言った。満席568席に対してチケットの売り上げは947枚もある。どういうことなのだろう。
189万4000円で947枚――もっとも、これはあくまで収入のすべてがチケット代だと仮定した上での計算だ。チケット収入以外の売り上げ、たとえば本の販売などの収益が入っている可能性がないだろうか。
収支報告書をもう一度読み直してみた。だがそれらしい記載は見つからない。こうなったら直接No・1の会に聞くしかない。
「会場が空くと格好悪いから」幽霊席販売
案内チラシにあった「杉並No・1の会」の番号に電話をかけると男性が出て、次に会計責任者のS氏にかわった。人のよさそうな年配の男性だろうと、声の感じから察した。――講演会の売り上げが189万4000円となっていますが、何枚売ったのですか?
S氏 一枚2000円ですから、計算していただければ…
――947枚ということですね。
S氏 そうですね。
満席数よりはるかに多い947枚ものチケットを売った事実をS氏はあっさりと認めた。やはりすべてチケット収入だったのだ。それにしても、これではまるで飛行機チケットの「オーバーブッキング」ではないか、と少々驚いた。
オーバーブッキングとは実席数以上の数を売る強引な営業方法で、チケットを持って空港にいっても搭乗できないなどのトラブルを引き起こす。講演会でも、定員以上のチケットを売れば会場で混乱しそうなものだ。
――なぜそんなに売ったんですか。
S氏 会場が空くと格好が悪いですから。
――つまりチケットを買っても来ない人がいるということですか。
S氏 ええ。講演会というのはだいたいどこでもそんなものでしょう
――そうですか?
S氏 ええ。
S氏は苦笑するように答えた。だいたいどこでもそんなものでしょう――といわれて今度はこちらが戸惑う番である。講演会チケットの「オーバーブッキング」など聞いたことがない。カラ席、架空席、幽霊席――とでもいうのだろうか。
念のため後日、大手プレイガイド会社に尋ねた。
「ウチでは聞いたことがありませんねえ」
電話口の女性職員は困惑気味に言った。イベントのプロが知らないと言うのだから、すくなくともよくあることではないらしい。しかも、たとえば飛行機のオーバーブッキングなら、払い戻しをしたり別便に振り替えたりということになるだろうが、「No・1の会」の講演会の場合、返金をした形跡はなかった。チケットを持って会場に行っても中に入れない379人分の売り上げ75万8000円は、しっかりと収入に計上されている。
対価なき収入、つまり浮利ではないか――。
「杉並No・1の会」の2008年分政治資金収支報告書。政治資金パーティとして開催された講演会の収支が記載されいている。売り上げ189万4000円はチケット947枚分に相当する。 |
予定人数の2倍以上も売ってトラブルにはならなかったのだろうか。カネを払っているのに会場に入れないなら普通なら客が怒り出す。当日の様子を想像しながらS氏への質問を続ける。
――当日はどのくらいのお客さんが来たんですか?
S氏 だいたい8割くらいですか。
――入れなかった人はいたんですか?
S氏 あ、それはありませんでした。
意外だった。現場は混乱するどころか、S氏によれば8割しか席は埋まらなかったという。568人の8割は約450人である。947人分も売って450人しか来なかった。すなわち購入者の2人に1人強が会場に行かなかった計算だ。
カネを出して券を買っていかないとはどういうことなのか。つきあいでナントカ音楽会のチケットを買って、当日面倒くさくていかない、という経験は筆者にもある。そういうやつなのだろうか。思案を続けた。
この講演会でNo・1の会がどれくらい儲けたのかが知りたくなった。政治資金パーティの開催経費は、政治資金収支報告書をみればよい。それによると、講演会の売り上げ189万4000円に対して、かかった経費は櫻井よしこ氏の講師料31万5000円や
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“幽霊席”券約380枚を含む947枚ものチケットが売られた山田宏区長後援会主催の講演会会場「セシオン杉並」。使用された大ホールは満席数が568席で立ち見は認めていないという。
政務調査費による政治資金パーティのチケット購入を全面的に容認した杉並区監査委員の監査結果。代表監査委員は区民生活部長から天下った四居誠氏。4年間の任期で約6000万円もの報酬を得るという。
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読者コメント
これはどんどん追求していって欲しいですね。
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「杉並区パー券代に使った政調費返せ裁判」の第1回口頭弁論が、12月16日午前11時から、東京地方裁判所522号法廷で開かれます。
.またこれに先立って、「年間13ヶ月分ってなによ? 杉並区監査委員ボッタクリ報酬を返せ裁判」の第1回口頭弁論が、12月4日午前11時から同522号法廷で開かれます。「『月額』」悪用で年間13ヶ月分 水増し報酬にタカる東京・杉並区監査委員」参照。