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「月額」悪用で年間13ヶ月分 水増し報酬にタカる東京・杉並区監査委員

情報提供
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監査委員報酬を毎年13 ヶ月分支出していた杉並区。人口約54万、年予算約1,427億円(09年度一般会計)
 東京・杉並区(山田宏区長)に財政監視の目的で置かれている監査委員4人のうち、区議選出の非常勤委員2人について、実質12ヶ月間の在任期間に対して13ヶ月分の報酬が恒常的に支払われていたことがわかった。たった2日間の在籍でも1ヵ月分の月額報酬(15万1千円)満額を支給させる手口で、「月額制」を悪用した報酬水増し工作というほかない。水増しされた報酬は、過去15年で少なくとも計480万円以上。「5つボシ」をスローガンとする杉並区でさえ「お手盛り区政」であるならば、この税金泥棒の手口は全国の自治体に広がっている可能性が高い。
Digest
  • 監査委員交替の謎--「問題議員」がなぜ?
  • 政調費で電動自転車買う監査委員区議
  • 在任2日、仕事ゼロでも15万ゲット?
  • 「報酬の額は月額15万1000円とする」
  • これぞ杉並式! 15年間ずっと13ヶ月予算
  • 東京23区のうち「杉並式」は8区
  • 監査委員の区議が監査受けて40万円返還勧告

【Digest】
◇監査委員交替の謎
◇政調費で電動自転車買う監査委員区議・関昌央氏
◇在任2日、仕事ゼロでも15万ゲット?
◇「報酬の額は月額15万1000円とする」
◇これぞ杉並式! 15年間ずっと13ヶ月予算
◇毎年恒例のダブリ支給。予算も13ヶ月で計上
◇東京23区のうち「杉並式」は8区
◇報酬目当てで与党会派持ち回りか
◇監査委員の区議が監査受けて40万円返還勧告



監査委員交替の謎--「問題議員」がなぜ?

 東京・杉並区で、監査委員の報酬が年間13ヶ月分も支払われていた--にわかに信じがたい事実が発覚したのは「政務調査費」がきっかけだった。やや煩雑で恐縮だが以下いきさつを述べる。

 政務調査費とは「政務のため」に区議に支給される経費のようなものだ。杉並区の場合、上限額は一人当たり年192万円。この政務調査費をめぐって、私的流用など不適切な支出が多数あるとして区民有志が住民監査請求を申し立てたのは、ことし4月30日のことだった。

 住民監査請求は、地方自治体の財政に疑義があるばあいに住民が監査を求めることができる手続きだ。請求の申し立てがなされると、区から独立しているとされる「監査委員」が監査を行い、60日以内に結論をだす。その結果に不服があれば裁判所に住民訴訟を起こすことができる。

 区民有志の住民監査請求申し立てから約1ヶ月後の5月29日、この監査委員の顔ぶれに動きがあった。4人いる監査委員のうち、区議選出の2人――松浦芳子氏と井口かづ子氏が突如辞任したのだ。区議選出監査委員の任期は議員の任期による、とされている。つまり、ふたりの任期は次の選挙が予定されている2011年4月30日までで、まだ2年を残していた。

 井口氏らは、ちょうど1年前の昨年5月30日に監査委員になったばかりだった。

 杉並区の場合、条例により4人(常勤1人、非常勤3人)の監査委員を配置している。常勤と非常勤の1人は「識見を有する者」から選び、非常勤のうち2人は区議から選任。任命権は区長にあり、議会が承認する。現在の常勤監査委員は区民生活部長から横滑りで就任した四居誠氏、非常勤の「識見委員」は、公認会計士の茂木信氏が務めている。

 松浦氏と井口氏の突然の辞任に対して、山田宏区長は即座にこれを承認し、翌日の5月30日付で区議2人を新監査委員に任命した。山田区長は同月29日に臨時議会を招集し、議会の議決で人事は承認された。

 新監査委員の顔ぶれを見て驚いたのは、住民監査請求を申し立てた住民たちである。関昌央氏(自民党杉並区議団)と河津利恵子氏(民主党杉並区議団)。2人とも住民監査請求で政務調査費の使い方に疑問が指摘されている区議だ。なかでも関氏は突出して疑問が多い「問題議員」だった。

政調費で電動自転車買う監査委員区議

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(上)区議選出監査委員の交替議案を突如提出し、議会の承認を求める山田宏・杉並区長(2009年5月29日。区議会インターネット画面より)。(下)杉並区のスローガンは「5つ星」。対外的な好印象とは裏腹にその実態には疑問がある。
 住民監査請求で指摘された関氏の問題ぶりとは、▽10万円以上もする電動自転車を買う、▽インターネットの設備工事16万円を計上する――など。また、関氏は銭湯を経営しているのだが、入浴客用の駐車場に使っている庭先の一角を賃貸「駐車場」「駐輪場」にして自分自身に貸し付ける形の契約書をつくり、政調費で一部を支払うという紛らわしいことも行っていた。

 関氏が使った政務調査費のうち、住民監査請求で「不適切だ」と指摘されたのは146万円以上にのぼる。

 いったいどういう経緯で「問題議員」の関氏が監査委員となったのか。事情を聴くため監査委員事務局を訪ねた。

 杉並区本庁舎は地下鉄丸の内線「南阿佐ヶ谷駅」に隣接して建っている。ちかづくと警備員と自転車置場の監視員が視線を向けた。彼らのわきを抜けて玄関を入り、エレベータの前に立つ。わきの柱に空色の看板がかかっている。

 「めざします! 五つ星の区役所…杉並区職員一同」

 「五つ星の区役所」が、杉並区のスローガンらしい。「お預かりした税金は大切に使います」とも書かれている。

 監査委員事務局は3階にあった。室内は熱気でむっとしている。庁舎内の表示によれば冷房は28度に設定しているという。

 要件を伝えると、ふたりの男性職員が現われた。テーブルをはさんで向かい合って座り、わたしは質問をはじめる。

――前任の2人の区議はなぜ監査委員を辞めたのですか。理由は?

 職員 聞いていません。5月29日に区長部局から退任を聞かされました。

 やや疲れた表情で二人は答えた。その日になって突然辞めたというのだから、事務局としても大変だったことだろう。そう思いながら続けて聞く。

――後任の人事については? なぜ区長は(問題議員の)関さんを選んだのか、聞いていますか?

 職員 いえ、特に。区長が決めることですから…

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「月額制」を悪用して1年で13ヶ月分の報酬を払うカラクリ。月なかばに交替することで、前任者と後任者の両方に1ヶ月分の報酬15万1000円が支払われる。杉並区議の議員報酬は年間約1000万円。

杉並区の歴代監査委員。右端に「議選」とあるのが区議委員。ほぼ一貫して約1年で交替しており、その都度交替月の報酬が二重に支払われている。

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よろこびの種まき新聞2009/07/29 00:08
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