「私のパーティ券なら税金で買ってOK」 参院選出馬の山田宏杉並区長に反省なし
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松下政経塾出身者らでつくる政治団体「日本志民会議」の政治資金パーティ会場で来場者と握手する山田氏。取材に対し区長任期をまっとうすると明言していたが一転、参院選出馬を表明。税金で自分のパーティ券が買われていた問題には法廷で「合法だ」との主張を繰り返す。(2010年4月3日、高松市)。 |
- Digest
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- 「後援会関連経費」禁止も区長パー券はスルー?
- 「講演」と銘打てば誰に税金払っても問題なし?
- 杉並区パーティー券問題の歴史
- 山田宏氏の後援会に税金流入16万9330円也
- 提訴2日後に返金、裁判は終わったかに見えたが…
- 「自主返還」話し合ったハズが返していなかった河野議員
◇ 「税金でパー券購入は合法」と類まれな主張
杉並区長・山田宏氏を相手どり、東京地裁に筆者が行政訴訟を起こしたのは昨年10月26日のことだった。約9ヶ月前の2008年12月8日、山田氏の後援会「杉並No・1の会」(東京都選挙管理委員会届出、根本郁芳代表)が「桜井よしこ・山田宏講演会」と銘打つ政治資金パーティを区内で開催。その際に、公明党の区議3人(青木さちえ・大槻城一・島田敏光)が2000円の参加費を「政務調査費」という税金から支出した。これに対して「政治資金パーティの参加費を税金で支出したのは違法である。区長は返還させなさい」と訴えた裁判である。
裁判がはじまると、山田区長はまず答弁書でこう反論してきた。
〈原告は、本件講演会が政治資金規正法上の「政治資金パーティ」であることをもって、使途基準外である旨主張しているようであるが、本件条例、本件規則及び本件規程(注)では、「政治資金パーティ」に該当することをもって直ちに使途基準外であるとは規程していないことからも分かるように、「政治資金パーティ」であるか否かは主催者の会計上の処理の問題であり、そのことと議員の調査研究に資するか否かはまったく別次元の事柄である〉
税金の支出先が政治資金パーティであろうが関係ないという。全面的に争う強硬姿勢である。
なお、「本件条例」とは「杉並区議会の会派及び議員に対する政務調査費の交付に関する条例」、「本件規則」は「同交付に関する条例施行規則」、また「本件規程」は「同交付に関する規程」のことを指す。
税金でパーティ券は問題ないという主張だが、「本件規程」の第2条を普通にみれば、「問題がある」と考えざるを得ない。つまりこういうことである。
「杉並No・1の会」は山田氏の後援会として活動する政治団体である。政治団体というのは、寄付や会費、政治資金パーティで資金を集め、事務所費や人件費、選挙運動などに使う。問題の「桜井よしこ・山田宏講演会」も、この政治団体たる山田後援会の一大イベントとして行われた。No・1の会が都選管に出した政治資金収支報告書によれば、このときのパーティで51万6190円の収益を挙げている。政治資金集めをあわせた明らかな政治的な後援会活動である。
そして「本件規程」である。そこの第2条には「後援会活動に関する経費」は政務調査費で支出できない、と明記されているのだ。
【杉並区議会の会派及び議員に対する
政務調査費の交付に関する条例】
第2条 次に掲げる経費は、区政に関する調査研究に資するために必要とする経費に該当しないものとする。
① 選挙活動に関する経費
② 政党活動に関する経費
③ 後援会活動に関する経費
2条の③(3号)のところで「後援会活動に関する経費は、区政に関する調査研究に資するために必要とする経費に該当しない」とはっきり書いてある。「杉並No・1の会」主催による政治資金パーティの参加費というのはまさにこれにあたるのではないか、 どういう理屈で考えれば「問題ない」となるのか。筆者はわけがわからくなってきた。
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山田区長の辞任・参院選出馬表明直後の杉並区役所。大幅な職員数カットや民営化を進める一方で、パーティ券問題など自分のことには甘い山田区政に対して、多くの区民が疑問を抱いている。![]() |
「後援会関連経費」禁止も区長パー券はスルー?
「後援会活動に関する経費」は政調費から出せない旨、杉並区の規程に書いてあるじゃないか。そのように主張したところ、山田区長からは引き続いてこんな反論が出てきた。被告区長側準備書面から引用する。〈…本件規程2条3号で「後援会活動に関する経費」を政務調査費の使途基準外としているのは、議員の後援会に係る人件費、後援会事務所の賃料及び運営費、後援会のための飲食費等は、「議員の調査研究に資する」(本件条例1条)ものでないことによるものであるが、本件における政務調査費の支出は、本件講演会の会費であり、上述のような議員の後援会の経費を負担するものではない〉
ややこしい日本語である。一読しただけでは文意を理解できない。政務調査費に該当しないのは後援会団体の事務所費や人件費といった費用だけ、政治団体が主催した政治資金パーティへに参加するための会費などは問題ない、そういうことらしいが、具体的に考えていくと、やはりよくわからない。
たとえば「杉並No・1の会」の事務所費や人件費を政務調査費で払うなどという場合が、いったいあり得るのだろうか。同会は政治団体だから事務所費も人件費も自己完結していなければおかしい。寄付や政治資金パーティで集めた資金から計上するのである。政治資金規正法によってそう定められている。その事務所費をある議員が政調費で払っていたとすれば、事務所費の肩代わりである。政治資金規正法違反に問われる事件となってしまう。
理解に苦しんでいると、さらに別の準備書面でこんな主張も登場してきた。
〈…他の後援会(政調費を使う区議自身の後援会ではないという意味=筆者注)において研修会や講演会などの催しを開催した場合、その参加費用は、参加者からすれば、あくまで研修費、講演会費と捉えるのが一般的であって、「使途」が問題になっている以上、「使う」側から捉えるべきであり「使われる」側の視点から捉えてその会計処理如何を問題 することには無理がある〉
これもおおむね意味を把握するまで一定の時間を必要とした。「使う側」とか「使われる側」とか、禅問答さながらの難解な理屈である。
「講演」と銘打てば誰に税金払っても問題なし?
筆者は考えた。要は政治資金パーティであろうがなかろうが、主催団体が政治団体であろうが政党であろうが宗教団体であろうが関係ない。参加した議員が「研修」「講演」と解釈すればいいのだ、ということだろうか。内容が「講演」でありさえすれば税金で政治資金パーティ券を買っても問題ないと、そういうことが言いたいのか。ならば、その講演会とはどんなものだったのか。
講演会といっても選挙応援や選挙活動に近いものだってある。筆者は法廷で釈明を求めた
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政治団体「日本志民会議」の政治資金パーティで演説する山田宏・杉並区長。参院選への出馬を匂わせる発言もあった。「税金でパーティ券購入は合法」とする区長の理屈でいけば、こうした催しの参加費も税金で出してよいということになるのだが・・・
昨年10月の富本議長の提案で、山田区長のパーティ券代に支出した政務調査費はすべて返還するよう話し合いがもたれたとされるが、実際には河野庄次郎議員のように返還しなかった議員もいた。山田宏氏の後援会「杉並No・1の会」から河野氏にあてたパーティ券の領収書(2010年2月撮影)。
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