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10年後に食える仕事-10 10年後の「日本人の雇用」

情報提供
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働く日本人のエリア別人数比率と就業者数上位(※記事末尾にて、エクセルデータをダウンロード可)
 世界のいわゆる先進国のなかで日本の雇用はドイツと並び超優等生といえるが、無策が続けば、グローバル化が進む10年後には崩壊しているはずだ。最終章では、日本人がどうやって国際社会のなかで生き残っていくべきか、統計データをもとに現状を分析したうえで、どうすれば失業率を上げることなく現状の低失業率を維持し、結果的な格差を無用に拡大させず、かつ厳しいグローバル競争のなかで日本の国土に住む日本人が職を得て生き残っていけるのか、政府・為政者の視点から、あるべき雇用政策を述べる。(※記事末尾にて、各エリア内の職業別就業者数をエクセルダウンロード可)
Digest
  • 7割の人は危機感を持て
  • コモディティー化で拡大する「重力の世界」 
  • 時計回りの雇用
  • ①「無国籍ジャングル人材」の優遇
  • ②経済的規制の撤廃
  • ③“負の雇用貢献税”で雇用を国内化する
  • ④単純労働者はギリギリまで受け入れない
  • ⑤「負の所得税」による再配分
  • 政治のリーダーシップで雇用を守る

中東のいわゆるジャスミン革命、先進各国で長期化する「We Are 99%,Occupy WallStreet」デモと、2011年はデモの年だった。そして、あらゆるデモの発生と相関が見られるのは「若年失業率」だ。

アラブ諸国の情報統制をテーマに現地と往来しつつ研究を続ける山本達也准教授(名古屋商科大学)に話を聞く機会があったのだが、「革命当時、エジプトの若年失業率は、およそ半分(5割)ほどにも上っていて、大学を卒業したエリート層でもまともな職に就けず、不満が溜まっていた」とのことだった。

エジプトでは、石油など資源による収入も頭打ちで未来の不透明感が増していたところに、『iPhone』や『ブラックベリー』が1~2年のうちに急速に普及し、『ツイッター』や『フェイスブック』が利用されるようになり、民主革命につながっていったという。

25歳未満の失業率は、先進各国とも高い。スペイン46.2%、ギリシャ42.9%、イタリア27.6%、フランス23.5%、英国20.9%、米国17.7%である(EU統計局調べ、2011年8月、ギリシャ・英国は6月)。力が有り余っている若者が、仕事もなく暇をもてあまし、将来の見通しも立たないとなったら、デモに走るのも至極当然である。

現状、日本は7.9%(2011年8月、総務省調べ)と先進各国で最低水準にとどまっており、したがって、世界中に展開されたはずの反格差デモ(Occupy WallStreet)も、日本ではほとんど起きなかった。若年失業率は、社会の安定にとってきわめて重要な指標であることが分かる。

経済のグローバル化が進むなかで、人間だけは国境を簡単に越えないことから、仕事と人材のミスマッチは必然的に起こる。「世界デモ年」だった2011年が教えてくれたのは、「雇用をいかに国民全般にあまねく提供していけるか」が為政者にとって最優先ともいえるテーマになった、ということだ。

7割の人は危機感を持て

日本国内の雇用の現状はどうなっているのか。全体の失業率は4.3%(2011年8月)で、ほぼ完全雇用と言ってよい。職に就いている人の職業について、国勢調査では、全ての職業を、232個の職業に分類して番号を振り、統計をとっている。たとえば私は調査を受けたことはないが、53番の「著述家」か、54番の「記者,編集者」のどちらかだ。ちなみにその前後でいうと、52番「宗教家」、55番「彫刻家,画家,工芸美術家」となっている。

これら1つ1つを、本書で提示したフレームに基づき、4つの事象に、やや強引ながら分類していく作業を行った。232番「分類不能の職業」(160万6500人=全体の2.8%)を除く231個、計5668万8700人についての結果が、以下の図である。(2010年国勢調査、抽出速報集計より)

予想どおり、「重力の世界」が72.7%(4237万6800人)を占め、圧倒的多数を占めた。なかでも一番人数が多いのは「販売店員」(356万600人)であった。ショップで、待ちの接客をする店員である。たとえば普通のブランドショップ店員ならば、客はブランド品を目当てに買いに来るので、店員は最低限の訓練を受けていれば、国籍を問わず誰でもよい。実際、都内のコンビニの店員でも中国人が明らかに増えている。

もちろん実際には、いわゆるカリスマ店員のように日本人の好みを深く解しコミュニケーション力に長け、固定客もついている「ジャパンプレミアム」な人もいるが、これは簡易的な分類のために、数字が実態よりも大きめに出てしまっている。ただ、概要としては間違っていないだろう。それぞれ上位3位までは表に示したとおりである(詳細は記事末尾の全職業分エクセルデータ参照)。

この分析結果から分かることは、グローバル化が進む一方で何も手を打たなければ、7割の人は職を失って外国人にとって代わられるか、今の日本の最低賃金よりもさらに低い「グローバルの最低賃金」に張り付いて海外に出稼ぎに行くしかなくなる、ということだ。日本政府に7割の失業者を生活保護する財政余力はもちろんない。しかもグローバル化は年々進む

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雇用が創られる流れとブラックホール化

「重力の世界」の内訳と就業者数上位

日本政府の外国人受け入れ方針

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応援会員X2012/08/04 14:46会員
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